2008年05月01日

岩崎 愛INTERVIEW“聴いてる人に情景が見えるように歌いたい”

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 3月3日(月)渋谷オーイーストで行なわれたライヴで初めて岩崎 愛(崎は旧字体)のライヴを観た。見慣れないタイプの謎のアコギを手に(今回のインタビューで判明しました。ま、それは後ほど)、非常にくっきりとしたアルペジオ・フレーズを爪弾きだしていたのがまず印象的で、“いったいどんな風に弾いているんだろう?”とよく観たら、なんとサムピックを付けてプレイしていたのである。若手の女性シンガーソングライターは数多くいるが、サムピックでギターの弾き語りをしているミュージシャンは最近では珍しいと思った。ライヴ・パフォーマンスはパワフルで、繊細さと激しさが同居しており様々な表情を魅せてくれる。滑らかかつソウルフルな歌声で、ひとつひとつの言葉を丁寧に紡ぎだしていくスタイルも胸に残るのだ。

 そんな彼女が2年振りに放つ2ndアルバムが『太陽になりたいお月さま』であり、4月16日にファーストエイドネットワークよりリリースされている。バンド・サウンドやストリングスとの共演、そして十八番であるアコギの弾き語り…現在進行形の岩崎 愛がたっぷり詰まった一枚と言っていい。未聴のひとは岩崎愛マイスペース☆ブログで試聴もできるので、ぜひ一度チェックしていただきたい。みずみずしさと同時にシンガーソングライターとしての深みを感じさせる『太陽になりたいお月様』について、彼女にたっぷりとお話を伺った。また、モバイル・サイト「PlayerギターLOVE」の「Move On!」では、岩崎 愛のライヴ動画の1シーンを公開中。ぜひこの機会に彼女の音世界に触れてみて欲しい。

世界に1つしかない自分だけのギターで、
名前も「マリリン」ってつけちゃった。


 愛さんがそもそも楽器を弾き始めたきっかけは?
 楽器を始めたきっかけは、やっぱり純粋に唄が歌いたかったんです。歌うにしても演奏がないと歌えないし…、“何か楽器をしなければ始まらない!”と思い、家に転がってたギターを手にして練習しだしました。やりだしたのは中学校3年生くらいかなぁ? それから何回も挫折しましたけどね(笑)。
 サムピックを用いたギター・スタイルにびっくりしたんですよ!
 もともと私は指弾きだったんですよ。でも指で弾くとストロークの時の迫力が欠けてるのがずっと気になってて、“これはピックを使えるようにならなければ…”と思って、普通のピックを使えるように練習したんですが、どうも上手く使えなくて。で、色々試してたらピッタリなサムピックに出会った訳です。
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 なかなかサムピックで弾くのは難しいと思うんですよ(笑)。演奏中にずれたりして困ったりすることはありませんか?
 あぁ、サムピックの中でも今使ってるやつしかしっくりこなくて。他のは使えないんですよね(笑)。アルペジオとストロークを曲中にどちらもできるし、指弾きのニュアンスに近かったんですぐに慣れましたね。もちろん、ストロークの迫力もバッチリだし。
 それと愛さんというと、ちょっと他じゃ見慣れないアコギを弾かれているのが気になっていたんです。
 自分で言うのもなんですけれど、あのギターはまさに一聴き惚れしたギターで凄い良い音なんですよ(笑)! 実はギター製作家の西野春平さんにオーダーメイドで作っていただいたギターなんです。ヘッドのロゴマークやポジションマーク、あのギターのデザインを全部自分で描いて、1から作ってもらったんですよ。ネックの太さなどに関しても自分のサイズに合わせてもらっているんでフィットして弾きやすいですね。だから世界に1つしかない自分だけのギターで、名前も「マリリン」ってつけちゃった。今回のレコーディングはもちろん全部マリリンで挑みましたし、「マリリン」っていう曲まで入っていますからね(笑)。
 ちょっとした親バカですね(笑)。
 (笑)。オーダーメイドなんで値段はそこそこしますが、弾いてるうちにドンドン深みが増していくし、自分の弾き方の癖なんかもそのまま音に出るので最高ですよ。そう思えば安い買い物だと思います。
 そもそも愛さんがソングライティングをはじめたのはいつ頃から?
 曲を作り始めたのは、それこそまだギターをまともに弾けてない頃…中3くらいからですね。「歌いたい」という気持ちから自然に「曲を作ろう」という感じで作り始めました。実は初めて作った曲が今回のアルバムにも入ってる「想い思う」という曲なんです。
 「絵日記」など女性的な視点で書かれている歌詞もありますが、基本的に一人称は「僕」「ぼく」だったり中性的なニュアンスが印象的ですね。
 自分は生まれも育ちも大阪の南の方の者なんで、自分のことをあまり「私」って言わないんですよね。恥ずかしながら「うちなぁ」とか言ったりする大阪の女丸出しなんですけど(笑)。性格もザックバランの男っぽい感じなんで、どうも曲を作り始めた時から「私」には抵抗があって。「僕」の方が何故かしっくりきたんですよね。
 「絵日記」はカントリー・テイストのリズム・アレンジが心地良かったり、「マリリン」などにも70年代シンガーソングライターの音楽に通じる要素も感じました。
 影響を受けたアーティストはそうですね、まさにその感じです。特にキャロル・キングが大好きで、中学生からよく聴いてましたね。あとはジョニ・ミッチェル、ジャニス・ジョップリン、トム・ウェイツとかも好きです。ただ聴く音楽のジャンルは死ぬほどバラバラで、それこそロック大好きですし、ケルトとかも大好きで聴きますね。あ、メタルは苦手かも(笑)。
 日本語による歌詞、響きにこだわりがあるんですか?
 日本語しか基本わからないんで、歌詞は日本語ですねぇ。けど、微妙なニュアンスが出せたりする日本語は凄い素晴らしいと思いますよ。「好きだ」っていうの伝えるのにも日本語は色んな表現ができますからね。でも英語を使うのも全然好きですよ。ただ知識がないだけで(笑)。
 弾き語りによる「決断の時」は凄く聴き応えを感じました。
 「決断の時」は“自分が本気で音楽で飯を食っていくのか?”っていう道を決めるときにできた曲なんです。今改めて聴くと「若いな…」なんて思ったりもしますが、やっぱり想い入れのある曲ですね。
 「決断の時」のみ一発録りによるアナログ録音を試みたそうですね。
 一発録りでしか出せない空気感、弾き語りの呼吸でしか出せない空気感やライヴ感を出したかったんです。そのためには“やはりアナログ録りだな”と。
 プレイする際には物凄く集中力を要する曲なんじゃないですか?
 集中力はもちろんいりますが、ライヴではその集中力でいつも演ってますからね。
 『太陽になりたいお月様』は弾き語りものとともに、バンド・アレンジものも織りまぜられていますね。
 今回のアルバムは、「新しい岩崎 愛」っていう感じがほしかったんですよ。前回のアルバム『雨があがったら』が2年前で結構ブランクがあったし、イメージをガラっと変えたくて。でも弾き語りは自分のルーツだし、その「変わらない岩崎 愛」の部分と「変わった岩崎 愛」を聴いてほしくてバンドアレンジの曲、弾き語りの曲、初めて書いた頃の曲、変わり始めた頃の曲を織りまぜました。
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岩崎 愛の愛器“マリリン”はギター製作家・西野春平さんが制作したカスタム・メイド・モデル。月の満ち欠けをイメージしたポジション・マークが非常にユニーク!

 レコーディングはどういったパターンで行なわれたのでしょうか? 聴いた感じだとドンカマ/クリックに左右されていないような…。
どうしてもライヴ感が欲しかったんです。他の方の演奏も入ったりするんで、クリックを聴きながらした曲ももちろんありますけどね。「アイライクユー」なんかはtoeの柏倉隆史さん(ds)とクラムボンのMITOさん(b)との3人で、完全にクリックなしの1発録りでしたね。
 へぇ〜っ!! 「アイライクユー」はMITOさんのプロデュースですが、先駆的な現在型アレンジが聴き応えありますよ。
 あえてアレンジも細かくは決めなかったんです。そのテイクの中でのグルーヴをかなり重視して、“音の流れに3人が合わせてテンション上げていった”みたいな、かなり斬新なサウンドになってると思います(笑)。そうそう、「アイライクユー」を録った場所が山梨県の山奥で、その時ちょうど運良く大雪が降ったんですよ。
 運良く(笑)???
 雪が積もると、その雪が音を吸収してすごく音が締まるんですって(笑)。レコーディング場所がちゃんとしたスタジオじゃなくて、ロッジみたいな普通の小屋(普段クラムボンがレコーディングしている小淵沢のホーム・スタジオ)だったんで、そういう気候がもたらしたラッキーなサウンドも入ってます。
 「アイライクユー」のアコギのストロークも愛さん自身のプレイですが、ギターは相当重ねられていますね。
 アコギ、重ねてるように聴こえますかね?
 重ねてない?
 多分重ねてないと思うんですが、アコギは確かに大きめには出してると思います。それと大雪効果で音が詰まって聴こえるのでしょうね。良いことだ(笑)。
 「夕暮れの帰り道」「想い想う」などのストリング系の重ねはどのようにアレンジしていったんですか?
 ストリングス・アレンジに関してはだいたいお任せして、チョロチョロっと“ここはこうしてほしい”みたいなことだけ言いました。やっぱりせっかく一緒に演るんだからその演奏者のカラーが欲しいんで、あまり私はアレンジに関して細かくは言わないんです。初めてだったんで生のストリングスの音圧には圧倒されましたけどね。いやー、凄かった(笑)。
 柔らかでソウルフル、そしてファルセットを重視したヴォーカル・スタイルが魅力的ですよね。
 唄がどうやって確立していったとかは…うーん、あんまりわからないんですが。歌詞に沿ってそれを本当に思い描きながら歌うことによって柔らかく歌う部分があったり、強く伝えたい部分があったり…全身で歌うことで自然にそんな歌い方になっていきましたね。ライヴでの歌う時の顔とかもよくみんなに指摘されます。「良い顔で歌うねー」とか(笑)。自分じゃわからんけども。ただ歌うとき、“聴いてる人に情景が見えるように歌いたい”とは常々思ってますね。
 『太陽になりたいお月様』のレコ発記念ライヴも決まっているようですね。
 そう、『太陽になりたいお月様』のリリース記念ライヴがあるんです。6月7日(土)に大阪十三ファンダンゴでやるんですけど、ゲストで野孤禅が出て、あともう1組出るんですけどそれは内緒(笑)。岩崎愛はバンド演奏でプレイするので、アルバムを是非とも聴き込んでいただいて、ライヴにも足を運んでもらえると嬉しいです!
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岩崎 愛『太陽になりたいお月様』
ファーストエイドネットワーク FADS-5005
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