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こだわりの1本に迫る新企画、第1回はオワリカラのタカハシヒョウリ!

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 Player7月号では新コーナー「Open The TREASURE BOX」がスタート! 毎回そのミュージシャンにとって特別なこの1本という楽器をクローズアップするとともに、その楽器に出会うまでのストーリー、こだわりの部分を撮りおろし写真とともにレポートする。記念すべき初回を飾るのはグルーヴィかつ独創的なプレイで魅了するレフティギタリスト、オワリカラのタカハシヒョウリ。本誌では様々なカスタマイズを施したストラトキャスター“タクト・スペシャル”に関して存分に語ってもらったが、Player Blogでは2年振りとなる新作にしてメジャー・デビュー作『ついに秘密はあばかれた』に関するインタビューを掲載。更に昨年よりサブギターとして使用しているアイバニーズのロードコア・シリーズのカスタムモデルも紹介。本誌と併せてお楽しみ頂きたい。



 約2年3ヶ月のリリース・スパンはオワリカラとして最長ですよね。

 そうですね。とは言え、収録されている曲の中には前作『サイハテソングス』のリリースから半年後には完成しているものもあって、1年半前からレコーディングは始めていたんですよ。だから僕らの感覚としては、ようやく世に送り出すことができたっていう。

 通算5枚目のアルバムであると同時に、メジャー1stアルバムであるということは意識しましたか?

 今回のアルバムはアナログ・レコードで言うA面とB面のような構成になっていて、前半6曲が今年に入ってからのレコーディング、後半6曲が先ほど話した1年半前からのレコーディングなんです。前半の6曲はメジャー1stとしてのリリースが決まってからの制作だったのでオワリカラらしさと、初めてオワリカラに触れる人への開かれたモードになってるかと思います。特に2曲目の「今夜のまもの」なんかは、収録されている各楽曲の要素を集約させたことでオワリカラらしい、改めましての名刺変わりとなる曲ですね。アレンジにはかなり時間を掛けました。1曲目の「へんげの時間」は最近のライブでもオープニング・ナンバーとして定着しつつあるので、ライブのままのアレンジでレコーディングしたんですけど。

 2コーラス目からはギターもかなりカオティックですが(笑)。

 でも、本当はこの3倍近くギターもキーボードも入れていたんですよ。とにかく足せるだけ足して、そこから余分なものを削いでいく形を取りました。A面は過不足のない、理想的なバランスにまとまったと思います。後半の6曲が比較的スキだらけのアンサンブルが肝になっているので、前半の6曲は音数的にちょっとゴージャスになるよう意識しました。アルバムを聴き進めていくほど、ソリッドかつディープになる流れも面白いと思いましたし。

 1曲目から感じたのは全体のサウンドが前4作と変わったことです。

 今回からベースとドラムはアナログ・テープを回して録ったんです。ただ、それだけで完結してしまうと「古くてすごいだろ!」みたいなつまらない単なる懐古主義なサウンドになってしまうので、Pro Toolsに流し込んでから縦横無尽にエディットしています。アナログとデジタルの良さが上手く調和できたので聴いてみてほしいですね。アナログ・レコーディングのエンジニアさんはGO-GO KING RECORDERSの加納尚樹さん、デジタル・レコーディングの方は神聖かまってちゃんのサポートも務めている萩谷真紀夫くんです。アナログでレコーディングしたテイクを真紀夫くんのスタジオでPro Toolsに流し込み、エディットしたものを更に自宅へ持ち帰って僕が更に編集するという流れです。ミックスもこれまではエンジニアさんにお任せしていたんですが、可能な限り僕も立ち会うようにしました。

 「世界灯(ワールドライト)」は冒頭で右から聴こえるクリーン・トーンの刻みが素晴らしいです。

 あ!あれね!あれは自分でもかなり満足の音が録れました。ああいうブリッジ・ミュートのサウンドに昔からグッと来るんですよね。自分の嗜好としてはクリーンでありながらも、しっかりとドライブ感のあるトーンが大好きで。

 アコギも鳴らしていますよね?

 今回は全編を通して飾り程度ではあるんですけど「世界灯(ワールドライト)」「ホモサピエンスは踊る」「ペヨーテ」、あとは「new music from big pink」でも使用していますね。レコーディングで使用しているのはK.YAIRIに特別に製作して頂いたモデルです。レギュラーのラインナップにはレフティ仕様のモデルが無いんですよね。すべての弦が均等に鳴ってくれて、すべての音域がバランス良く録れるのでレコーディングでは本当に重宝しています。一応、エレアコ仕様ですがマイク録りですね。

 「世界灯(ワールドライト)」はベースラインが超絶的で(笑)

 こういったタイプの楽曲にも関わらず、ベースが異様に攻めまくるというのもオワリカラらしさなんですよね(笑)。今回はそこをセーブせずに、曲が少し壊れても良いから、むしろどんどんやってもらった。この曲は弾き語りで歌詞、メロディもできた段階でバンドに持ち込みました。8ビートや4つ打ち、アレンジに関しては試行錯誤を重ねて、ギリギリのタイミングで“これだな”と思える形に仕上りました。

 「すごいコンサート」はベースリフが主役ですね。

 とにかく全曲振り切ったものにしたかったので、この曲では仰るようにツダフミヒコのファンキーなベースが最大のポイントですね。僕はとにかく“すごいコンサート”というフレーズを連呼したかっただけという(笑)。それに合うすごい感じのオケをバンドで作った。歌詞に関しては深く考えてもらう必要は無いので、ボーカルにもかなりエフェクトを掛けて楽器の一部のような感覚です。ボーカル・マイクは3種類を使い分けていて、メインで使用しているのは艶が出る、ローミッドが溜まる感じのマイクです。「ペヨーテ」のようにブレスや息遣いまで出したい曲はハイが明るく抜けてくるモデルを、反してローファイなサウンドを目指した「new music from big pink」ではかなりハイ落ちしたような、言い方を変えれば少しデモテープのようなニュアンスが出るマイクを使用しました。

 「どうくつぐらしのススメ」は往年のHR的なサウンド。

 これ、ギターに関しては相当苦戦しましたねー。何度も録り直したんですが、スタジオで決着を付けることができずに家に持ち帰ってフェンダーのベースマンで録りました。イメージ的にはAC/DCやDOORSのHR調の曲で鳴っているようなギターサウンドを目指しましたね。

 いわゆるA面のラストを飾るのはかなりストレンジな「ホモサピエンスは踊る」ですが…。

 実はこの曲は弾き語りで原型を作りました。幼児退行じゃないですけど、童謡や「みんなのうた」のような曲を半分悪ふざけで狙って。アレンジに関してはノープランでバンドに持ち込んだんですが、まさかこんなダンスチューンに仕上がるとは自分でも予想外でしたね(笑)。個人的にはハンバート・ハンバートのようにフォーキーな方向に進めるしかないと思っていたので。

 タカハシさんとカメダさんのソロ回しも面白い。

 漠然としたイメージとしては50年代のキャバレーで演奏している箱バン、更には『スター・ウォーズ』に登場するカンティーナ・バンドが浮かんだんです。そこでソロ前には“人類代表、タカハシヒョウリ”という名乗りが入って、どこかSF感みたいなものも感じさせる曲になりましたね。




 「ペヨーテ」も弾き語りですか?

 そうですね。この曲のファズ・トーンは凄く気に入っていて。使っているエフェクターはエンジニアさんに作って頂いたハンドメイドです。アビーターのファズ・フェイスが音色的には大好きなんですが、あまり音が大きくならないのが個人的にウィークポイントに感じていたので、そこを解消したようなエフェクターにしてもらいました。ソロに関しては敢えて上手く弾かないことを心掛けましたね。往年のファズの掛かったギターソロって途切れ途切れのものが多いですけど、だからこそのカッコ良さがあるので。

 最も新鮮に感じたのは「装備解除 in BED」です。

 ある意味、自分たちの趣味全開なんですよね(笑)。それこそ80年代のディスコ・サウンド、あるいはデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」、最近で言えばナイル・ロジャースとダフト・パンクが示したようなものを、オワリカラでチャレンジしたかったんです。「sign! sign! sign! sign!」もそうですが、8年間やってきた中で段々と年齢的にもアダルトなバンドになってきたので、しっかりとミドル・テンポでヒリヒリとしたものを伝えられるようにしたいなと。

 ラストは先行シングルとしてもリリースされた「new music from big pink」。

 この曲ができた瞬間は売れる、売れない、他人の評価も一切関係無く、自分が求めている音楽ができたという手応えがありました。そのときからアルバムのコアになるような予感はありましたね。最近のライブでもラストに演奏することが多いんですけど、ステージでもバンドの魂の入り方に「凄み」を感じます。今回のアルバムは段々とソリッド、ディープになっていって最後に「new music from big pink」へ到着する…ライブでもこのままの曲順が最高なんじゃないかと思いますね。

 6月4日(月)からはリリース・ツアーもスタートしますね。

 6月から7月の公演は対バン形式で、久しぶりに共演できるバンドも多いので楽しみです。9月の大阪、名古屋、東京はワンマン公演になりますけど、どちらでもアルバムの世界を更にハイパーな形で見せたいと思います。




オワリカラ
ついに秘密はあばかれた
徳間ジャパン 発売中
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生産限定盤(CD+DVD) TKCA-74355 3,400円(税抜)

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通常盤(CD) TKCA-74359 2,900円(税抜)



オワリカラ Major 1st Album『ついに秘密はあばかれた』リリースツアー>
■6/06(月)広島4.14
■6/23(木)千葉LOOK
■6/28(火)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
■7/03(日)岡山 PEPPER LAND
■7/04(月)福岡 Queblick
■7/08(金)札幌 COLONY
■7/11(月)仙台LIVE HOUSE enn 2nd

• 各公演対バンあり。詳しくはOfficial Site(http://www.owarikara.com/)まで。

「ついに秘密はあばかれた」レコ発ワンマン〜世界灯(ワールドライト)に照らされて〜
• 9/16(金)梅田Shangri-La
• 9/23(金)名古屋ell.SIZE
• 9/25(日)渋谷WWW



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IBANEZ ROADCORE RC330T-WH CUSTOM

  タカハシがサブで使用しているギターは、アイバニーズが2014年に発表したロードコア・シリーズのカスタムモデル。ボーカル、またはコーラスを兼任するギタリストに照準を定めて開発されており、ヘッド落ちのしない重量バランスやアルダー・ボディには抱え易いコンター処理などが施されている。現在、日本国内ではシングルコイルを2基搭載したRC1720S(メイプル・ネック/ローズウッド指板)、ハムバッカーを2基搭載したRC1720M(メイプル・ネック/メイプル指板)、ローズウッド指板上のポジション・インレイやロータリー・スイッチを搭載した上位機種RC2720がラインナップされているが、本機は日本では販売されていない海外モデルRC330T(シングルコイル3基&トレモロ搭載)をベースに製作。アイバニーズ・スタッフ曰くコンセプトは“メインで使用しているストラトの代わりではなく、ストラトでは出せないやや甘く太いフロント・サウンドと、リアとミックスしたときの音のおもしろさを感じてもらえれば”とのこと。木材構成はバスウッド・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板。ピックアップはフロントにRC1720Sと同様にソープバー・ピックアップSuper9をマウント。リアには2016年から海外モデルのタルマンにマウントされているカスタム・ヴィンテージ。コントロールは1ボリューム、2トーン、3ウェイのレバースイッチ。メインのストラト同様、タカハシはリバースで使用する為、ストロークする左腕が当たり易いトーン・ノブは取り外されている。今回のレコーディングでは主にダビングで活躍した。

Interview & Text by KENTA TOGAWA
Photo by KAZUTAKA KITAMURA