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植村花菜 3年振りのオリジナル・ミニアルバム『愛のかたち』完成!

 シンガーソングライター、植村花菜3年振りのオリジナル・ミニアルバム『愛のかたち』が完成した! 結婚、出産を経て、1人の母親になった彼女の歌は、今までと変わらずに自身の表現を追求し、リアルでありながら多くの人が共感できるポジティブなメッセージが溢れている。人と人の様々な“愛のかたち”をテーマにした本作は、日々の生活に根ざした人への愛と想いが現れており、どの曲も自然でありながらも実に味わい深い…そんな充実作を完成させた植村が、新作『愛のかたち』についてたっぷりと語ってくれた!

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ママになった今だからできた曲
 
 前作『Steps』以来、3年振りの4thミニアルバム『愛のかたち』が完成しました。凄く自然体でありながら、曲、歌、歌詞、全てに植村さんの魅力が詰まった魅力的な内容だなと。

 まだ完成したばかりですが、今回も自分らしいアルバムになったなと…15年に息子が生まれて母親になるという出来事を経て完成させた第1作目ですが、無事に完成してとても感慨深いですね。

 日々の生活に根ざした曲作りをされていますが、子供中心の生活になって変わったことはありますか?

 ええ、息子が生まれる前と後とでは全く変わりました。それまでは自分に時間が沢山あったので、作曲したい時にやりたいだけ時間を費やせた。でも子供が生まれると、中々作曲だけに全てを集中するわけにもいかないし、日中の時間が限られますから。基本的に彼が寝た後に作曲を開始するんですが、時間を費やしたから曲が書けるというわけでもなくて…だから、今回は結構ギリギリまで曲が書き上げられなかったんです。でも、子供や家族がいて、ママになった“今だからできた曲”があるので、無事に完成して良かったです!

 ご自身の経験から生まれる感情を、飾らず歌にできるのが植村さんの魅力だなと。13年1月にご結婚され、15年1月に息子さんが誕生しましたが、そういった生活の変化は作曲にどんな影響を与えましたか? 

 今おっしゃったように、私は日々の生活に根ざした気持ちを曲にするので、とても影響を受けました。東京で1人暮らしだった時と、結婚して子供が生まれて、3人になってからでは全然違う…作曲のペースも変わったし。でもね、学んだ事も沢山あったんです。

 それはどんなことですか?

 6曲目の「愛のかたち」は、締め切りまでに満足するものができず、自分の中に焦りがあった時期に完成した曲なんです。“どうしよう、どうしよう”とテンパりました(笑)。今年2月ですが、そんな時に普段は全くグズらない息子が急にダダをこねるようになって。普段は凄く素直なんですが、「イヤ、イヤ!」とご飯を食べなくなっちゃって…気になってネットで検索したら“イヤイヤ期”という時期があることを知ったんです。

 イヤイヤ期になるの結構早かったですね。

 そうなんです。気になったから色々な人に相談したけど、最終的に子供の自我が目覚める時期ということなので、特に気にする必要もないらしいんですけどね。でも自分の子供だから、やはり気になるじゃないですか。それから1週間位考えた時に、“あっ、私曲のことばっかり考えて、以前のように息子と心を通わせられていないんじゃないか?”と気付いたんです。子供は凄く繊細だから、そういう雰囲気を察するんですよね。彼に対して、自分が上の空だったのが見抜かれているんだなって…で、ある決意をしたんです。“よし、今は曲書くの止めよう!”って…。

 本当ですか!?

 ええ。この時期は曲の期限が迫っていたし、アルバム発売日も決まっていたんですけどね(笑)。私この仕事大好きだけど、不器用なので2つを一度にできないので、曲作りを一旦止めたんですよ。それから、よりしっかり息子と向き合ったんですが、そしたら一切グズらなくなったんです。もしかすると、彼の自我が芽生えた時期に私がちゃんと注目していなかったのかもしれない…ご飯を食べたくないのに食べさせようとしたのかもしれないし、単にご飯より私のお箸や茶碗に興味があっただけなのかもしれないけど、より向き合うことで欲求やメッセージに気付けるようになった。そういう息子との向き合い方を見つめ直して書いたのが「愛のかたち」の歌詞です。

 なるほど

 でも、この歌詞は親子の関係だけでなく、私と主人みたいに一緒に暮らしていて、これまで違う経験をしてきた人にも当てハマるんです。お互いにズレが生じた時って、しっかりと互いを見つめ合って話をして共有することが大事だから。人それぞれに個性やペースはあるけれど、互いを見つめ合って変化していく“愛のかたち”。それはひとつじゃないし、そこには色々な形とペースがあり、それを歌にしようと思って書いた曲です。

 変化する人との関係の中で育まれる愛のかたちをテーマにした歌詞だったんですね。

 ええ、今思えば本当に結果オーライでしたが(笑)。ちゃんと曲を書けたからこう話せるけど、完成できなければ「植村、曲どうなってるんだ!」と言われるので(笑)。でも、あの時はこの選択が正しいんだって。「愛のかたち」だけでなく、このアルバムにはそういう日々の生活の中で“今の私が感じたこと”をテーマにしているので、曲のことだけを考えていてはダメだったんだなと思います。「輝く時間の中で」は、結婚してから最初に作った曲。上京して10年位1人で生活してきましたが、シンガーソングライターって自分を掘り下げて曲を書くので、孤独な作業が多いんですよ。悩みがあっても、これまではずっと一人で解決してきたところがあって…でも結婚して、主人もミュージシャンなので、私の気持ちを理解してくれた。こういうことは初めてで、これまで付き合った人や自分の家族にも、そういうことを話すことなかったので…彼に話を聞いてもらうことで気付かされる事や、良いアイデアが浮かぶ瞬間があって。そういうのって、ホンマに素敵だなと実感したんです。そういう経験を経て「輝く時間のなかで」が完成したんです。

 そうだったんですね。

 私は日々の生活をテーマにするので、特別な出来事を題材にするわけではないんです。でも、そういう日々の生活が少しずつだけど、大きく変化していったというか…結婚しようが、子供が生まれようが、曲作りやレコーディングに関しては変化していないですが、家族の中の出来事が色々なことを教えてくれたので、今回はそういう気持ちが沢山詰まっています。


愛をテーマにすることは自然な流れでした

 テーマに様々な“愛”がありますが、家族という絆だけでなく、人と人との絆を通じた愛が見事に描かれていますね。

 ありがとうございます!

 ベストアルバム『The Best Songs』をリリースした際に「19歳でギターと作詞作曲を始め13年後の今に至るまで、希望という1つのテーマで曲作りをしてきた」と語っていました。本作は愛をテーマにしていますが、そこには“希望”や明日への“ポジティブさ”があります。なぜ今回愛をテーマにしようと?

 とても自然な流れでした。「ママ」は妊娠中に書いた曲で、元々は音源化するつもりもなかったんです。産休前のライブで、今の自分が書いた曲をファンの皆さんに聴いて欲しいと思い作ったので…その時、ファンの方から「心に響く良い曲なので、ぜひ音源にして下さい」という声を沢山頂いたんです。「なんてことない日々」は、息子が生まれて復帰ライブの時に歌った曲。その時、その時で、お客さんには“今の自分にしか書けない曲”を届けたいのですが、こちらもライブで良い反応を頂いたので、この2曲と「輝く時間の中で」はアルバムに入れたいなと。そう思った時、この3曲に共通するのは、どの曲も異なっているけど“人に対する愛のかたち”でした。「なんてことない日々」は母から子供への、「輝く時間の中で」は奥さんから旦那さんへの、「ママ」は娘から母への愛のかたち。そう気付いたので、このアルバムでは色々な角度から沢山の“愛のかたち”を表現したいなと。

 凄く歌声に凛とした芯があるのですが、今回はそこに優しさというか、柔らかさみたいなものを感じたんです。

 うーん、自分では意識していないんですけどね…息子が生まれ、母親になったことは影響があったのかもしれません。

 「なんてことのない日々」のボーカルとか特にそうで…。

 そうかもしれません。自分では「変わりましたよ!」とも言えないけど(笑)、そういうコメントに“気付かされるもの”ってありますから。育児って、食事でもお昼寝でもそうだけど、子供は母親の思い通りにはなかなかいかない。グズって泣くこともあるし、部屋を散らかすこともあるし、自分の子供でなければイラッとすることもあるわけですよ(笑)。そういう時も自分の息子なら我慢できたし、この気持ちが芽生えは、今の生活で気付いたこと。物事の許容範囲が広がっていくというか…受け入れて、理解していくという感情。もしかしたら、そういう日々の変化が図らずしも歌に現れているのかも。声と歌って、その人“そのもの”だから。今コメント頂いたものが今の歌に出ていると感じて頂いてのことでしたなら、それはとても嬉しいです!

 前作『Steps』は初のセルフ・プロデュース作品となりましたが、今回はどのように?

 今回も基本的にセルフ・プロデュースで、アレンジに関しては自分のイメージしたものに近づくよう、アレンジャーさんと一緒に作業しました。

 アレンジにはでこぼこバンド、伊藤隆博さん、時乗浩一郎さんが参加していますが、どういったイメージで彼らを起用しようと?

 曲が完成した時に“この人にお願いしたいな!”というイメージがあって。でこぼこバンドは、13年位に私を含めた4人のカルテットで、ツアーも一緒だった間柄。前作もこのバンドで作りましたし、彼らの音は自分の頭にイメージがあるんです。「なんてことない日々」はツアーの時に4人でやっていたし、この4人でレコーディングしたかった。「愛のかたち」も、このバンドの音をイメージしていたので一緒にアレンジしました。 

 なるほど、伊藤さんのオーケストレーション、時乗さんの都会的なセンスなど、そういったアレンジャーの個性を曲に反映させていったのですね。

 そうです。

 曲作りはこれまでと同じく基本ギターで?

 ええ、弾き語りで完成させた曲から、イメージを膨らませてアレンジしました。曲作りは歌詞から書く“詞先”なんですが、作文みたいに自分が思うことをバーッと書いていって、そこから“伝えたい気持ち”だけを残して形にしていくんです。その時に歌詞と睨めっこすると、頭の中で歌詞が勝手に歌ってくれるので、そのメロディをまとめていく…だから、ギターやピアノを弾きながら曲作りすることは滅多にないんです。歌詞が頭のなかで歌ってくれた時に、この曲はギター、この曲はピアノみたいな直感があるので、それに従っていく感じ。今回、ピアノで書いたのは「輝く時間の中で」だけです。

 14年のセルフカバー作の『The cover’s 60’s to 70’s』と、15年のベストアルバム『The Best Songs』を経て、凄く音が研ぎ澄まされたというか、より自分の歌に合ったアンサンブルのアレンジが見えてきているのかなと。『Steps』よりも歌がしっかりと聴こえるので。

 年々シンプルになったというか、必要なものがわかってきていますね。アレンジでは、歌を邪魔するものは極力なくしていくんです。だからアレンジは重要で、年々最終的な曲まとまりはシンプルになっていく傾向があります。やはり、自分の歌が1番に聴こえて欲しいし、届いて欲しい。そうすると、余計な音はどんどん省いていくことになる。アレンジの擦り合わせをする時も「うん、そこは無いほうが良いですね」と、思い切って音を抜いたし…でも、歌以外の楽器もしっかり聴こえて欲しいんですよね。歌はセンターにあって、そこに対になるというか…。

 そのやりとりは自然にまとまりましたか?

 うん、苦労はなかったですね。私自身、意見をはっきり言うタイプなので(笑)。

 レコーディングを開始したのは3月中旬でしたよね?

 そうです。映画『海すずめ』のタイアップが決まっていた「ただいま。」だけは1月にレコーディングしましたが、あとは3月頭から始まって昨日(4月11日)にマスタリングが終わりました。

 バンド・アンサンブルがとても温かみのあるサウンドになっているなと。“アットホーム”とでも言いますか…ブログを拝見すると、息子さんもスタジオに遊びに来ていたみたいですし、そういう雰囲気が出ていて“人間味のある音”になっているのかなと。 

 自分の求める明確な音があって、レコーディング・マイクのそれに合わせて試しました。でも1番大きいのは、エンジニアさんが私の音のイメージを共有できていたこと。とても信頼している方なので、もう今更細かく意見をお伝えする必要もないんです。だから、もし温かみがある音だと感じて下さったのなら、それは本作に携わってくれた“皆の心”が宿っているからなのだと思います。

 「なんてことない日々」は、今の等身大の植村さんの気持ちを歌に込められているなと。

 弾き語りで完成させた曲だけど、その時からバンド・サウンドをイメージしていたんです。でこぼこバンドで長年一緒にやってきたから、それぞれの音がしっかりイメージできますし、自然にこういうアレンジに向かっていきました。

 歌先で書き上げるからかもしれませんが、曲が実に味わい深いですね。今のシーンって凄くスピードが早いですし、流行りものの曲は3分代のコンパクトな尺にまとまることが多いのですが、植村さんの曲は1曲に込める想いがしっかりあり、昔自分が好きで聴いていた、シンガーソングライターらしい表現があるなと…。

 ありがたいことに、デビューした時からマイペースでやらせてもらったので、それは皆さんに感謝しかないです。さっき言ったみたいに“できなかったら、一旦ストップ!”と、その時に1番大切なものに注ぎ込むこともありますし (笑)。でも私はこういう性格だし、時代ごとに人が求める流行曲って違うわけじゃないですか? たとえ話ですが、キラキラしたアイドルグループを好きな人が、皆私の曲を同じように好きになるわけではない。どちらが良い悪いじゃなく、それぞれの魅力があると思うんです。

 ええ。

 だから、実は“良い曲を作ろう!”と曲を書いたことは1度もないんですよ。1番大切なのは“自分らしくある曲”なので。もう、ただそれだけで、“植村花菜にしか作れない曲”を書けるかだけです。自分の曲が、より多くの人に届いて欲しいという想いはありますよ。でも、そのために流行りのワードを入れると、やはり自分らしくはなくなってしまう…昔は、私にもそういうものを求められていたのかもしれませんけど(笑)、今はそういうタイプではないことを周りが理解してくれているので。自分らしい部分を貫き通させてもらっていますね。

 ストリングスのアレンジが入った「ただいま。」は、爽やかな感じでカーペンターズを彷彿とさせるナンバーですね。アメリカンな牧歌的というか…。

 去年の夏、映画『海すずめ』のタイアップの話を頂いて、その台本を読んで歌詞を書き上げました。話を要約すると、小説家を目指している女の子が1冊本を出すんです。でも、東京で暮らしながら作家を続ける中はその1冊しか書き上げられなくて、挫折感の中に田舎へと戻るんです。その中で、2冊目を書こうとしながらも上手くいかず、色々と悩みながら次の夢に向かっていく…その主人公と私の“共通点”ってどこやろ?と台本を何度も読み返しながら考えました。

 なるほど。

 私も上京して10年位暮らしたし、最初の5年はなかなかヒットが出なくて。それから「トイレの神様」で、ようやく色々な方々に名前を知って頂けて、それ以降も色々なことがあり、楽しいことも苦しいことも経験して…旦那さんと結婚し、子供が生まれるなどを経験して、今は地元の関西に住んでいる。そう考えると色々なリンクがあり、上京して地元に戻ると初めてわかる“ホームタウンの温かみ”ってあるわけです。そういう想いが重なりあって、イメージがまとまっていった…曲を書く時は“今の自分が1番書きたいことってなんだろう?”って常に考えます。そうすると、地元で自分の両親にも助けられながら子育てをして、そういう愛や“戻る場所”があるありがたさに気付いた。そこで合点がいって、歌詞を書き上げていきました。でも、できた時は自分の中では映画のイメージに完璧にハマるようには書けていないんじゃないかと不安もあったんです。

 この映画のCMを観て、改めて歌を聴き返すと凄くマッチしていたので、そういう経緯があったとは知りませんでした! 

 フフッ(笑)、映画の制作サイドからも「ここまで内容に合わせなくてもOKですよ。東京というワード入れなくても結構ですし、植村さんの想うように書いて下さい」と言われました(笑)。他の曲と同じように、自分の想いを込めて作ったものなので、マッチしてると言って頂けて良かったです。

マーティンは思い入れたっぷりのギター

 「マウナケアの流れ星」はイントロのアコギの音色が美しいですし、テンションの効いたコードの響きが綺麗ですね。

 とても仲の良い男友達がいて、彼が今の奥さんにプロポーズしたのが、マウナケア山なんですよ。マウナケア山ってご存知ですか?

 いいえ、どこにあるんでしたっけ?

 ハワイ島の山のことで、空気が澄んだ綺麗な場所なんです。彼とは不思議な縁で、その奥さんと付き合う切掛けも私の曲だったんです。そんな彼が、マウナケアの山頂でプロポーズしたと聞いて、その後「僕の結婚式の曲を花菜ちゃんが書いてくれへん?」って頼まれたんです。で「うんいいよ、作ろう!」と返事をして、「でも歌詞はあなたが書いた方が良いよ」と伝えたんです。でも、気持ちを歌詞にするのは大変らしく、結婚式が迫って来ても中々書き上げられなくて、「じゃあ、彼女への想いを手紙に書くようにメッセージにして、私に頂戴」と伝えて、彼から長文の手紙をもらったんです。その手紙から歌詞になるように整えてメロディを付けて、完成した曲を結婚式でサプライズに彼が歌うという…私はギターとコーラスのみで参加しました(笑)。

 (笑)。

 この曲は完成した時に手応えを感じていて、いつか誰かに歌って欲しいと思っていたんです。男性目線の歌詞だし、それでいて音域はとても広いので、相当実力のあるシンガーじゃないと歌えないなと…でしばらくして、この曲にクリス・ハートさんからオファーを頂いたんです。でも「歌詞がマウナケアだと限定的過ぎるから“二人だけ”に変えても良いでしょうか?」という話があって、完成したのが彼の『Song for You』の「二人だけの流れ星」なんです。

 そうだったんですね。

 ええ、実は私もマウナケア山に行ったことないですし、彼の話を聞くと、マウナケアって凄く流れ星が綺麗なんです。降ってきそうな流れ星の先に朝日が昇る時に、彼はプロポーズしたんですよ。そういう話を聞いていたし、多くの人は“マウナケアってどこにあるの?”と思うだろうし、このアルバムではマウナケアとして曲にしたかった。これも、結婚というひとつの“愛のかたち”ですしね。ぜひ“マウナケア 流れ星”で検索してみて欲しいです。本当に綺麗なんですよ! 曲のアレンジは、ギターの指弾きアルペジオがイメージにあって、時乗さんと肉付けしていきました。ストリングスを入れてドラマティックな感じになりました。

 「Contigo」はエンディングに相応しい希望に溢れるナンバーで、シンフォニックなアレンジがアクセントになっています。

 とても個人的な曲ですね(笑)。ある時、私達夫婦の中で色々な話をして、旦那さんの中である決断があって…それを目指すと3人の生活も結構大変になけど“あなたが決めた道なら、これからどんなことが起ころうと私はただ側で支えるから!”という、メッセージを込めた曲なので…切掛けは私達夫婦のことですが、人生には何が起こるかわからないことが沢山ある。でも決断を出すのは自分だし、そういう決意で進む道ならどんなことがあっても楽しい…そう思った方が幸せじゃないですか。そういう希望を込めた曲。contigoは、英語のwith you(あなたと一緒)という意味のスペイン語。タイトルを決める時、イメージが日本語でも英語でもない気がして、色々な国の言葉を調べたらスペイン語のこの言葉がしっくり来たんです。

 今回は、全曲に本当に様々な愛が込められていますね。

 「なんてことない日々」からアルバムが始まって、最後の「Contigo」も愛の決意が込められていますからね。この曲でアルバムを終われたのはとても素敵だと思います。

 今回使われたギターはマーティンですか?

 全部マーティンOOO-28です。デビューして2年目位に購入した、今も変わらぬメインギターです。もう思い入れたっぷり。このギターを買うまでは国産ギターだったんですが、やはりマーティンに憧れがあって。交流のあったTHE ALFEEの坂崎幸之助さんに「マーティンを買いたいんです」と相談したんです。そしたら、坂崎さんが「じゃあ、今度休みに一緒にギター屋に付いていくよ!」と言ってくれて。大変お忙しいのに、わざわざ休みの日に付き合ってくれたんですよ。

 そうなんですね。

 ええ、一緒に新大久保のギター屋に行き、その時はアコギが全然わからなかったので“坂崎さんに色々と相談乗ってもらおう!”と思っていました。でも、フロアに到着すると「じゃあ、ここからは別行動にしよう!」と言われて…坂崎さんギターが大好きですから。イソイソとお店の奥に消えていっちゃった(笑)。“今日は色々なアドバイス頂きたかったのに〜”と思いながら、気になったギター手に取り「坂崎さん、このギターどうでしょうか?」と訊いたら、「うん、花菜ちゃんがいいなら良いんじゃない?」って言うんです。もう“えーっ、思ってたのと違う!”って(笑)。

 (爆笑)!

 その前に、坂崎さんから「予算はいくら位あるの?」と聞かれて、その時出せるかもしれないと思ったギリギリの値段を答えたら、「それなら相当良いギター買えるね」と太鼓判を頂いて…でも、その後に引越しをしたので、あの時答えた値段を払ったらもう生活できなくなっちゃう(笑)。でお店で色々と弾いいているうちに、凄く気に入ったギターがあって値札を見たら、最初に言った予算よりさらにすごく高くて。ああ、これじゃ手も足も出ないと思ったけど、店員さんに予算よりちょっと高いくらいのお値段を提示してくれたんですが、でもまだ払えないわけです。それを聞いた坂崎さんが「予算を超えちゃってるからね〜」と店員さんに伝えて下さって、そしたら店員さんが奥でヒソヒソ話をして、私の最初の予算まで下げてくださったんです! 坂崎さんも「よかったね、花菜ちゃん。ばっちり買えるじゃん!」と言われて、本当は引っ越ししてしまったこともあり、最初の予算だと払うのは大変なんだけど、そこまでして頂いたので、「やった、買います!」と言って買ったギターなんです。話が長くなりましたが(笑)、それからはこのマーティンをライブとレコーディングずっとメインです。他にも、ギブソンB-25、ギルドF-30などを持っていますが、自分の声のレンジや質感にとてもハマるので、マーティンOOO-28は今も私のメインギターです。

 今ギターを弾く女性が増えていて、プロ、アマを問わずにそういう人達に話を聞くと、植村さんに影響を受けた方って多いんですよ。最後の質問ですが、どんな部分に着目すれば植村さんのような独自のスタイルが確立できるのでしょう?

 それは本当に嬉しいですね! なんでしょうね…私ギターのレッスン受けたことないんですけど、スタイルに捉われずにやりたいことをイメージして、ずっとやり続けることが大事なんじゃないでしょうか。初めて書いた曲なんて、コードネームや押さえ方が一切わからず、なんとなく“ああ、この響き好きやな〜!”と、いうところからスタートしましたから(笑)。今でも響きが好きだけど、コードネームがわからないものって一杯ありますしね。でも、そうやって弾き続けて、そのシェイプを興味本位で半音ズラしても面白い響きになるのがギターの魅力ですし。もう私みたいになるとか抜きに、ギターと音楽って素敵ですし、じっくりゆっくりと好きを追い求めれば良いと思います!

Interview by TAKAHIRO HOSOE


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