自分で歌えるバンドをやりたいなって
初登場ですので、吉崎さんが音楽に興味を持ったきっかけを教えて下さい。
初めて“自分から買いたい”と思ったCDは、『ドラゴンクエスト5』のサントラでした。その後ミスチルがきっかけでJポップを聴くようになり、中学生の頃に出会ったエアロスミスがきっかけで洋楽にハマっていきました。
ギターを始めたのはいつですか? 影響を受けたギタリストやボーカリスト、バンドを教えて下さい。
中学2年の頃、エアロスミスのジョー・ペリーに憧れて始めました。プレイの内容というよりも、佇まいのカッコ良さにシビれていましたね。ライブ・アルバム『A Little South Of Sanity』が大好きで、ああいうスタジアム感をイメージしながら曲を書くことが今でもよくあります。
初めてバンドを組んだのは?
中学2年の終わり頃、友達とGLAYのコピーバンドを組んだのが最初です。
GOODWARPを結成した経緯を教えて下さい。吉崎さんと萩原さんが以前結成したバンドが解散したのがきっかけだそうですね?
以前組んでいたバンドではギターと作曲を担当していたのですが、解散をキッカケに自分で歌うバンドがやりたいと思い、当時から一緒にやっていたベースのチャー(萩原“チャー”尚史)に相談したら、二つ返事でやろう!と言ってくれました。そこから、ライブハウスに張り紙したり、メンバー募集サイトに記事を投稿したりしていたら、割とすぐギターの朋生(藤田朋生)に出会って、ドラムの有安(有安祐二)に出会いました。朋生のメールアドレスが僕の好きなエアロスミスの曲名だったので、すぐ仲良くなりました(笑)。
GOODWARPには、マルーン5を彷彿とさせる様なダンサブルでポップな要素がありますが、結成当初からこういった方向性は意識していましたか?
ディスコサウンドやブラックミュージックの要素を取り入れたポップスをやりたい、という意識は当初からありました。マルーン5も好きですが、当初はジャミロクワイがもっとポップになったことをしようと考えていた気がします。
GOODWARPの作曲は吉崎さんが手掛けていますが、普段どのように作曲するのですか? EP『STAR SIGNAL』はEDM的なダンサブルさがありますし、「レイニー白書」にはキャッチーなリフがあり、かなりサウンドの幅が広い印象があります。
作曲する時は、だいたい鼻歌でメロディをつくるところから始めます。それが歌のメロディになることもありますし、ギターリフになることもあります。自分で信じられる旋律ができるまでは、楽器はあまり触らないことが多いです。バック・アレンジは、毎回なにかしら新しいトライをしたいと思っていて、意識的に幅をもたせています。
吉崎さん、萩原さん、有安さん、藤田さんという4ピース編成でありながら、非常にサウンドがタイトで、アンサンブルの色彩も豊かだと思います。普段、曲のアレンジはどのようにして完成させますか? 作曲やアレンジで特に拘っていることは?
同期でシンセを鳴らしているのですが、5人目のメンバーがいなくても成り立つ“ギリギリのところ”をいつも狙っています。今回、制作部屋としてギターの朋生の親戚の家を貸してもらえたのですが、4人で24時間体制で篭りながら、アレンジを進めていました。4人中2人が寝たらひとまず作業中断、というルールを設けて、昼夜問わずにキューベースを立ち上げたパソコンを囲んでいました。
素の時もすんなり聴けるダンサブルなアルバム
ミニアルバム『FOCUS』についてお訊かせ下さい。本作はGOODWARPらしいダンサブルさが、よりキャッチーに磨き上げられています。制作する際に”収録曲それぞれが「とある日常」を顕微鏡で覗いたようなテーマ性のあるアルバム“にすることを掲げたそうですね。曲作りや音作りを含めて、それはどんなイメージでしょうか?
通学の電車とかバイト帰りとか、素の時でもすんなり聴けるダンサブルなアルバムを作りたいな、と思って作曲しました。トボトボ歩いていたのが気付いたら歩幅が大きくなるような、自然と体が動く感じや心躍る感じをアレンジでも目指しました。
今回、シンセサイザーのアレンジャーとして本間将人さんと飯塚啓介さんも関わっているそうですが、彼らにどんな要素をもたらしてくれることを期待しましたか?
本間さんには、主にコードや鍵盤のアレンジをご相談しようと思いお願いしました。演奏者としてもアレンジャーとしても本当に素晴らしい方で、あらゆる面で勉強になりました。微妙なピッチのズレにすぐ気がつくし、コードの知識もとにかく深淵なので、一緒に制作させてもらいながらメンバーみんな驚愕しっぱなしでした。しかも、本業はサックスプレイヤー! 本当に恐ろしい才能の音楽人です。飯塚さんには、打ち込みのシンセ・サウンドをもっと表現豊かにするために、音色作りやフレーズについて相談をしました。あくまで、バンドが“主体”というバランスを理解してくださった上で、効果的な演出をたくさん教えてもらいました。“5人目がいなくても成り立つ感じ”とか、“トランスではなくエレクトロ”とか、僕らが表現したい微妙なニュアンスをすぐに汲み取って理解して頂いたので、やりとりしながらどこかで見られているんじゃないかと思いましたね(笑)。
作曲やアレンジ方法で、本作新たに挑戦したことはありますか?
まずアルバムコンセプトを決めて、そこから曲を作り貯めるということは今までしていなかったんです。苦労もしましたが、とても新鮮でした。アレンジに関しては、これまでは僕のラフデモを元に4人で一緒に考えることが多かったのですが、今作では例えば「アノラック」はギターの朋生、「All the freaks Around Me!」はベースのチャー、というように、楽曲ごとにメンバー内で旗振り役を決めました。
ポップなサビのメロディが印象的な「僕とどうぞ」は、GOODWARPらしさが満載のナンバーですが、この曲はどういうイメージで書いたのでしょうか?
ダンスが苦手な恋人に贈るダンスナンバーです。この曲はある映画のワンシーンから着想を得ました。結婚パーティー中に土砂降りが降って、新郎も新婦も、参加者みんながずぶ濡れになって大笑いしながら避難するシーンなのですが、シチュエーションと登場人物の表情とのギャップがロマンチックで、こういうギャップを曲で表現したい、と思ったのがキッカケでした。“ダンス”という言葉を、一種の肉食の象徴みたいに捉えて書いています。
「FOCUS」や「All the freaks around me!」の様に、小気味良いギター・カッティングはGOODWARPの武器のひとつだなと。こういったツインギター・パートの兼ね合いはどのようにして作っていくのでしょうか?
主に僕とギターの朋生とで、キューベースを囲みながら考えました。ギター2本ともカッティングをする曲の場合は、それぞれの構成音やサウンドの帯域にはすごく拘っています。ちなみに『FOCUS』は、Daft Punkの「Random Access Memories」のナイル・ロジャースをイメージして、唯一アンプを使わずにラインで録音しました。
「アノラック」のキャッチーでありながら、ちょっぴり切ないサビがとても印象的ですが、この曲はどういったイメージで完成させた曲ですか?
学生の頃、当時よく着ていたアノラックパーカーをかぶって、友達と夜景を眺めていた想い出を歌にしました。朋生の考えたギターリフが、僕の元々持っていた夜っぽいイメージにぴったりだったので、そこから歌詞も捗りました。
エッジの効いたマイナー・キーのナンバー「OK Sir」の歌詞はシニカルなメッセージが込められているなと、この曲にはどんなメッセージが込められているのでしょうか?
ミュージシャンもリスナーも、みんな1人ひとり違っているのに、大衆受け、という言葉に囚われて、統計学みたいに音楽を扱う、リスナーを信じていない「大人」が多いように感じるので、それをそのまま歌にしました。
吉崎さんにとって、このミニアルバム『FOCUS』はどんな作品になったと思いますか?
“ダンスポップってこういうことでしょう!”という、自分たちの想いをふんだんに表現したアルバムになりました。ほとんどが書き下ろしの曲ばかりなので、最新の自分たちが詰め込めたと思っています。
ボーカリストとしてギタリストとして、本作のどんな部分を聴いてほしいですか?
歌入れのギリギリまで歌詞を練っていた曲なんかもあって、そのときはほとんどぶっつけ本番で完成形を歌ったので、苦戦の跡が残っているかも…。ぜひ探してみてほしいです(笑)。
本作でメンバーが使った機材を教えて下さい。
ギターはギブソンES-335、フェンダー・ストラトキャスター、ヒストリーのTLモデル。ギターアンプはマッチレスDC-30、フェンダー・デラックス・リバーブとベースマンです。エフェクターは、フリーダム・カスタム・ギター・リサーチにモディファイしてもらったボスのBD2、ストライモンのディレイ、プロビデンスのフェイザー、クロン・ケンタウロス、アイバニーズTS9、ヴォックスのワウJH-1、あとファズも使いました。ベースはムーンのJB4-CLASSIC、ヤマハBB2025。それにエーデザインオーディオのチューブ・ダイレクトボックス、テック21サンズアンプPSA-1です。ドラムはパールのヴィンテージのセットに、スネアはラディックのLM402のヴィンテージを使いました。ベッタベタにミュートして、デッドな録り音を目指しました。シンバルは曲によって使い分けたのですが、ハイハットに関しては、タイコのデッドな録り音に合わせて12インチの小口径のもので統一しました。ペダルはヤマハのものを。スティックも曲によって使い分けました。
『FOCUS』はGOODWARPらしさがたっぷり詰まった“名刺代わりになる魅力的な作品”だと思いますが、今後皆さんはどんなバンドになっていきたいですか?
元気だから踊るのもいいけど、“踊るから元気になる”というのも凄くあると思うんです。来てくれた人たちが僕らのライブの翌朝“よし、やるか!”って活力が沸いてくれたら、嬉しいですよね。あと、僕らをきっかけに色んな音楽を聴いてもらえるようなバンドになりたいです。ダンサブルでドリーミーなJポップの“ニュースタンダード”を目指して頑張ります!
Interview by TAKAHIRO HOSOE
Live Photo by SOTARO GOTO
グッドワープ
フォーカス
スタジオヨアソビ CD VPCC-81867
3月16日発売 1,500円(税抜)