ドリーム・シアターの最新作『ジ・アストニッシング』が完成した。前作『ドリーム・シアター』から2年4カ月という順調なスパンで完成したこのアルバムは、デヴィッド・キャンベルをプロデューサーに迎えてオーケストラを起用したダブルコンセプトアルバムとなり、プログレとメタルの境界をさらに押し広げている。新作ではアコースティック・ギターもより多くプレイしたというジョン・ペトルーシの録り下ろしインタビューを中心に『ジ・アストニッシング』特集を掲載!
2015年10月、未来の冒険の旅が始まった。ドリーム・シアターのメーリングリストで送られてきたメッセージは“間もなく道は分かれる。賢く選択するがいい”というもので、我々は大北アメリカ帝国とレイヴンスキル反乱軍のどちらかを選択することが出来た。
そして彼らの公式ウェブサイトに、不思議なストーリーが綴られ始めた。それは西暦2285年の未来世界を舞台にした物語で、NOMAC(ノイズマシンの略)の出す機械音楽のみが許された社会において、音楽を歌い奏でる才能を持った“選ばれし者”ガブリエルが民衆の支持を得ていくさまを描いていた。人々は彼を“ジ・アストニッシング=驚異なる者”と呼んだ。救世主の噂を聞きつけたナファリアス皇帝は、その真偽を確かめるべく、ガブリエルの住むレイヴンスキルに向かう。それに同行したフェイス王女はガブリエルの歌声を聴いて、恋に落ちるのだった。
これが新作『ジ・アストニッシング』のオフィシャル・トレイラー。大仰で映画のようなナレーションがドリーム・シアターらしい!
そしてこちらは先行リーダーとラックとなった「ザ・ギフト・オブ・ミュージック」のトレイラー。絶妙なアレンジの楽曲、そしてメンバー全員の演奏テクニックが高いのは言うまでもない。
ドリーム・シアターは多くのコンセプトアルバムを出してきましたが、新作は1999年の『メトロポリス・パート2:シーズン・フロム・ア・メモリー』 以来のロックオペラ作品ですね。かなり野心的な試みです。
この作品でいちばん大変だったのはどれだけ音楽を入れるかってことだった。なにしろ俺たちはアルバム2枚分の音楽を書いていたからね。だから物語を書くことからすべての音楽を書いてすべての歌詞を書くことまで、もちろんすべてをレコーディングしてミキシングするまで、何もかもがいつもの2倍長くかかった。ほんとに、ほんとにやることがいっぱいあったよ。全アルバムをオーケストラと合唱団のためにアレンジしたんだ。実にたくさんの音楽とたくさんのスコアさ。34曲もあるから、書くべき歌詞もいっぱいあるし、歌うべきこともいっぱいあるわけで。
そのプロセスにどのようにアプローチしたんですか?
すべてのことをストーリーボードに描くような実にきちんとしたやり方で、それを何度も何度もやり直し、書き直しながら進めていったんだ。だから最初のうちは、慣れるようになるまでしばらく頭を掻きむしっていたよ。
新作ではギターにどのようにアプローチしましたか? サウンドでたくさん実験的なことをしたんでしょうか?
オリジナルのSFファンタジー小説に基づいているし、アルバム2枚分の長さだから、このアルバムではたくさんの危険を犯しているんだ。新しい音楽満載だし、本物のオーケストラや本物の合唱団も入っているしね。実に多くの冒険をしていて、いろんなことがドリーム・シアターの規範から外れているからこそ、ドラムやギターといったバンドのコアなサウンドは、それでもドリーム・シアターっぽく聴こえるようにするためにしっかり基礎を固める必要があると思ったんだ。だから俺に心掛けたことがあるとすれば「ギターはヘヴィでバリバリいうようにしておこう。俺のソロの音は自分が心地よく思えて慣れたもの、俺のシグネチャーっぽいものにしておこう」って感じだね。
多くの素晴らしいギターソロが聴けますが、ソロで心掛けていることは?
いつも「音楽にとってそのときいちばん大切なこと」を考えている。それはつながりなんだ。自分の身の回りで起こっていることに音楽的つながりを持つことなんだよ。君がリードプレイヤーだったとしたら、そこにピタリとはまりたいと思うし、リスナーに苦労の跡が感じられないような音を聴かせたいと思うはずだ。そうしてこそ、真の音楽体験になるはずだから。
ドリーム・シアター ジ・アストニッシング ワーナーミュージック・ジャパン 2CD WPCR-17071〜2 3,314円(税抜)
2016年4月号(3/2発売)でカバーストーリー掲載