L to R: Robert DeLeo(b), Debbi Blackwell-Cook(vo), Forrest Robinson(ds), Phil Collen(g)
まもなく新作とジャパンツアーが控えているデフ・レパードで、長年ギタリストとしてキャリアを重ねているフィル・コリンは、ロックギタリストとして知られているが、同時にブルースやソウルミュージックへの造詣も深い。そんな彼が新たに結成したプロジェクトがデルタ・ディープだが、その1stアルバム『デルタ・ディープ』が完成。フィルを中心に集まったメンバーは、女性シンガーのデビ・ブラックウェル、ベースはストーン・テンプル・パイロッツのロバート・デレオ、ドラムはフォレスト・ロビンソンというミュージシャンズ・ミュージシャン達だ。そのコンビネーションはまさにバンドといえるものだが、さらにゲストとしてホワイトスネイクのデイヴィッド・カヴァデール、デフ・レパードのジョー・エリオット、ex.セックス・ピストルズのポール・クック+ex.ガールのサイモン・ラフィーなどが参加している。アルバムに鳴り響いているのはブルースやソウルを持ったロックだが、まさにディープな感触が気持ちいい。
こちらがアルバムサンプラー。ソウル、ブルース、ロックなどの魅力を携えたエナジーが詰まっている。
そしてデルタ・ディープについてフィルが答えてくれた。
今までにデルタ・ディープとしての本格的なライブをやっていますか? その評判はどうでしょう?
ライブは既にやっている。みんなすごく盛り上がって最高だった。いい曲が出来た手応えはかなりあったんだけど、観客の前でやってみないと実際のところは解らないからね。大成功だったと思うよ。
あなたは今までにサイドプロジェクトをいくつかやっています。あなたにとってサイドプロジェクトの意味は?
デフ・レパードがその独特なサウンドで成功を収めている中で、たまに“デフ・レパード風”とはまったく違う音を追求したくなる時があるんだ。アーティストとして常に何かを作り出しているんだけど、デフ・レパードとは違うアイデアを作り出してしまうこともあるんだよ。
あなたはLAに長く住んでいますが、ブルースやソウルなどアメリカの音楽をどう思いますか?
ブルースやソウルに興味を持ったのはアメリカに移るずっと前、だからギターもまだ弾いてなかった頃なんだ。
あなたはこのバンドでどういうことをやりたかったのでしょう?
ブルースっていうスタイルは、一般的には少し誤解されていると思う。かつてブルースは、プランテーションで働いていた奴隷たちがどうする事もできない状況に置かれている自分達の苦しみや、心の悲鳴を表現した音楽だと思うんだよ。デビは母親であり、かつ孫もいる。そんな彼女が最近、銃の事件で息子を失ってしまったんだ。もちろん今ではその痛みを表現出来るほどに立ち直っているよ。だからブルースは心の痛みを表現する音楽だと思っている。僕はブルース色が強いギタープレイヤーであるジミー・ペイジ、ジミ・ヘンドリックス、リッチー・ブラックモアなどからかなり感化を受けているけど、さらにゴスペルシンガーのアレサ・フランクリンの大ファンでもあるんだ。だからギターだけにとどまらず、様々な音楽ジャンルからの影響があるんだ。
でも、何と言ってもシンガーからの影響は特別なものがある。ティナ・ターナーやチャカ・カーンのような、第2〜第3世代目のシンガーからも未だに痛みが伝わってくるよ。表現するという事は、誰かから習うものではなくて感じとるものなんだ。この今回のプロジェクトの真髄はそこにあるんだよ。何の問題もない恵まれた環境に育った白人で、若い時分はギターに没頭するばかりで苦労の経験すらない自分にでさえ痛みは伝わってくる。そんな人生の苦悩を表現出来るバンドの一員でいられる事を光栄に思っているよ。僕は既に自分でやりたかったことをやっている。音楽を通して自分を表現する、それはこれまでもずっとやってきた事だ。しかしデルタ・ディープでは目的も欲も何も持たずに、ただやりたいことをやっていきたい。
デルタ・ディープ デルタ・ディープ MAILBOAT RECORDS AMAZONで輸入盤販売中 iTunesで配信中
2015年11月号(10/2発売)でインタビュー掲載