LtoR:山田剛(b), 井上典政(g), 片木希依(pf&key), 粉川心(ds)
小学校からの幼馴染みである井上典政(g)、山田剛(b)、粉川心(ds)を中心に06年に結成し、07年にが加入。井上、山田、粉川3人のルーツであるロックの激しい初期衝動を核に、ジャズ、ラテン、映画音楽など様々な要素を内包。山田と粉川の力強いグルーヴ、井上の広がりのある味わい深いギターのアルペジオ、片木の情熱的でスリリングなピアノのメロディによって作り出される“ハードコアジブリ”とも表現される唯一無二のエモーショナルな音楽性は、聴くものの心を捉えて放さない! 昨年リリースされた3rdアルバム『journal』は、多くの人を惹き付ける心地良いダンサブルな楽曲にさらに磨きが掛かり、同郷の京都から人気インスト・バンドNabowaの山本啓(vin)や才能溢れる女性シンガーソングライターYeYeが参加。より大きくスケールアップした“集大成”と呼ぶに相応しい1枚だ。そんな今後のインストシーンを牽引していく重要バンド、jizueの井上と片木が、バンド結成の経緯、アルバムを経た音楽性の進化、音楽に対する拘りについて語ってくれた!
僕のソロがなくてもバンドと曲がカッコ良ければそれでいい
音楽に興味を持ったきっかけは?
井上:父が弾き語りをしていたので、僕も物心付いた頃に自然とアコギを弾いていました。中学の頃は、長渕剛さんや尾崎豊さんを弾き語っていました。僕と山田と粉川は小学校からの幼馴染みなんですが、高校の頃に山田と一緒にバンドを初めてエレキギターを弾き始めたんです。その頃はミクスチャーが流行っていたのでコーン、ザ・マッド・カプセル・マーケッツ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、インキュバスをコピーしていました。
片木:子供の頃に近所の編曲家の先生に出会って習い始めたんですが、そのレッスンが凄く個性的だったんです。譜面のストーリーをイメージし色塗りしたり、絵本を描いたりする宿題が楽しくて、高校、大学でも音楽がやりたいと思ってコンピューター音楽科を専攻しました。
それはどんな学科なんですか?
片木:コンピューター音楽やメディアアートの創作および研究を行なう学科で、アークスモニウム(多次元散立体音響装置)を使い川の音を沢山のスピーカーで鳴らしたり、音源を逆回転して切り貼りしたりといったユニークな授業がありました。
影響を受けた音楽は?
井上:高校時代は、ブラフマンみたいなハードコア/ミクスチャー・バンドが好きでした。リフを弾くのは好きだったんですが、もっと上手くなりたくて22歳の時にジャズ・ギタリストの先生に習い始めるまでは、ソロを弾くという欲求はなかったんです。
井上さんはご自身でエンジニアも担当していて、音楽を俯瞰的に捉える能力に長けているなと。ソロで自身を主張するギタリストは多いですが、曲の情景を通して自分の存在感を雄弁に語れるギタリストは少ないので、そういった音楽性に凄く興味を持ちました。
井上:ソリストとして目立ちたい気持ちは今もあまりないんです。メロディ・ラインを担当するのは、僕と片木ですが、ニコニコしながら凄いプレイをしている片木を見るのが楽しいし、ならば自分は一歩引いてバンド全体をよく見ながらjizueというバンドを自分なりにちゃんと活かせるプレイがしたい。自分のギターを聴いてもらう欲求よりもjizueを聴いてほしいから。僕のソロがなくてもバンドと曲がカッコ良ければそれでいいなって。ジャズに興味を持って、ウェス・モンゴメリーやパット・メセニーといったジャズ・ギタリスト達が好きになってからは、ソロに対する興味を持ち始めたんですけどね。最近、影響を受けているのはパット・メセニーです。プレイヤーとしてはもちろんですが、作曲家として素晴しいので。
片木:クラシックを勉強していた時は、ドビュッシー、カプースチン、ロシアのクラシック音楽家が好きでしたね。高校の頃、日本でもネオソウル・ブームが起こって、ディアンジェロ、ローリン・ヒル、アリシア・キースといったR&Bのシンガーにハマりました。あと、菅野よう子さんや野崎良太さんも好きです。
山田さんと粉川さんは?
片木:粉川はnaiadやenvyといったハードコア系バンドに影響を受けていますね。彼は音楽に対して凄くストイックなので、ジャズやラテンなどにも興味があり、色々なスタイルのドラマーに師事してきました。山田は何が好きなんだっけ?
井上:よくヴィクター・ウッテンの物真似をするし、フュージョン系のベーシストが好きだったと思うよ。
jizueを始められたきっかけは?
井上:僕と山田は大阪の音楽専門学校でエンジニアを専攻していたんですが、jizueの母体となったのは専門学校時代に山田と結成したバンドなんです。それまでコピーバンドしかやったことがなかったけど、曲を作って演奏するのがおもしろくて、しばらくは2人でやっていたんです。でも、やはりドラマーが必要だなと思って、丁度その頃に粉川のバンドが解散したので、彼に加わってもらったんです。最初は、男性ボーカルを入れてインキュバスみたいなミクスチャー/オルタナ系の音楽をしていました。その後、女性ボーカルとキーボードを入れ、エモーショナルな重たいサウンドを目指していました。
最初はボーカル・バンドだったんですね。そこからなぜインスト・バンドになったのですか?
井上:その頃は、僕が作ったリフを基に曲を発展させてメロディを作ることが多かったから、次第にボーカルの必要性を感じなくなったんです。
jizueの曲には常に印象に残る強いメロディがありますが、もともと歌ものバンドとして始まったので曲を作る時に“歌えるメロディ”を常に意識しているのでは?
井上:それはありますね。僕自身、弾き語りから入った人間なので歌が好きなんです。インストって、歌詞がないからメロディが強くないと曲として成立しにくいんですよ。そういう意味で“誰もが歌えるメロディ”は絶対に失くしてはいけないと思っています。
その後、07年の秋に片木さんが参加しjizueとなったわけですが、その経緯を教えてください。片木さんは5代目キーボディストとして前身のバンドに加入したそうですね?
片木:大学時代に友人のベーシストと一緒にスタジオにセッションしに行った時、粉川と知り合ったんです。それから何回か一緒に演奏したんですが、ある時、粉川が「本気でやっているバンドのキーボードが抜けたんで、一回弾きにきてくれない?」と頼まれて、それからjizueに加わったんです。最初は皆で一緒に呑みに行ったんだっけ?
井上:うん。皆で呑みに行って好きな音楽やミュージシャンについて語り合ったのが最初だったね。その時に、互いに音楽性や人間性に近いものを感じて「今度チック・コリアの「スペイン」とか一緒にやってみようよ!」って始まったんじゃなかった?
片木:そうそう。他に「チキン(ジャコ・パストリアスがカバーしたことで有名なジャズ・ファンクのスタンダード)」とかもやったよね! 3人は音楽に対して本当に真面目で、一回一緒に演奏したら、次に会うまでに自分達も問題点をちゃんと修正してくるし、新しいアイデアを100個くらい持ち寄ってきたんです。そういった音楽に対する情熱が凄いなと思いました。
井上:片木はクラシックを真剣に勉強し、ブラック・ミュージックやジャズに興味を持っていたんで、どんなジャンルでも弾けたんです。プレイヤーとして演奏に主張があるのも魅力だったし、彼女が参加してくれればおもしろいことができるなって。
バンド名のjizueにはどういった意味があるんですか?
井上:僕と山田と粉川は、昔一緒にスポーツ少年団でサッカーをやっていてサッカーが好きなので、元フランス代表のジダンのニックネーム“zuizou(ジズー)”からこのバンド名にしました。
普段曲作りはどのようにして?
井上:主に僕と山田が書くことが多いんですが、僕はパソコンで完璧に作り上げた曲のアイデアを皆に持っていき、それを皆で形にしていきます。
ピアノパートのアイデアも井上さんが?
井上:僕が音の並びやリズムをイメージしたものを片木に投げ、彼女のやり易いようにプレイしてもらっています。最初に浮かんだコードやメロディのアイデアはきちんと彼女に提案しますが、コードを弾いているテンションやたまに入る転調コードのリハモとかは彼女に任せています。
片木:よく「jizueのピアノパートは凄く耳に残る」って言われますが、それは井上が普通のピアニストにはない発想を持っているからだと思います。
jizueの曲をスリリングにしているキメの部分や変拍子のパートは?
井上:それも最初にしっかりとアレンジを固め、何回も演奏と意見交換をしながら形にしていったものです。僕らって、スタジオに集まってあるアイデアをモチーフにジャムをして形にする作業はあまりしないんですよ。
キャッチーなメロディの中に、スリリングな変拍子リフが入っているのがjizueの強い個性だと思いますが、結成当初にオリジナルをやり始めた時からそういった要素はあったのですか?
井上:ありました。インキュバスとか好きだったんで自然にそうなった感じかな? でも、そんなに“変拍子リフを作ったるぞ!”っていう感じでもないんですけどね。
心地良いリズムってどんな人にも伝わると思うんです
これまでリリースしたアルバムについてお訊かせください。1stの『Bookshelf』は、皆さんの形容詞である“ハードコアジブリ色”が一番強い作品ですが、変拍子を使った美しいメロディを持つ「Rain Dog」のように、バンドのオリジナリティはすでに確立していますね。
片木:全員で楽しみながら作ったアルバムでしたが、まだ“それぞれのパートにおけるアンサンブルの役割”をまだ把握できず、色々と摸索した時期でしたね。
井上:僕はエンジニアもしているので、音作りの時から色々なことを試したくて、自分がカッコ良いと思うものを詰め込んでいきました。この頃の僕はまだ斜に構えていた時期だったので、リスナーが聴き易いものを作るよりも、自分が満足する音の世界観を詰め込んでそれをリスナーがわかってくれればそれでよかった。けっこう天の邪鬼でしたね(笑)。でも、この頃からすでに変わらない“らしさ”はあるなと。「SAKURA」や「home」は今もライブで演奏するんですが、それを聴いてくれてファンになってくれる方もいますしね。
井上さんはエンジニアとしても活躍されていますが、作品を経て音作りの拘りに変化しはありましたか?
井上:『Bookshelf』では色々なパターンのミキシングを試したんですが、作品を重ねる度に音に“意図しない加工”をしなくなりましたね。一発で録ったピュアな音には、それが多少粗くても色々な良さが詰まっている。それを気付かせてくれたのは粉川だったんです。僕はレコーディングとミキシングで音を作り込むことが多いんですが、彼は「極力ドラムの音色はイジらないで!」と言っていた。そんな粉川のコメントを聴いて、自分の中でも段々と意識が変わっていきました。
「SAKURA」の和を感じさせる音の世界観に強い個性を感じました。
井上:これはボーカルが在籍していた頃に書いた曲のフレーズを使っていて、僕らの故郷である滋賀の“豊かな自然の情景”をイメージしたものです。曲のコード進行を決めてから基のメロディを一から壊して、ピアノのメロディを付けていきました。jizueとして作った最初に書いた曲でもありますね。
2ndアルバム『novel』ですが、「unnecessary pain」や「chaser」のように前作を彷彿とさせるスピーディーでドラマティックに展開される曲もありますが、「sun」や「yubiwa」のようにアコースティック・ギターを使った新しい音の世界観がとても印象的でした。
井上:『novel』に収録されている曲は、ライブをしながら曲作りを平行したものが多く、書いた曲を実際にライブで試しオーディエンスの反応を参考にしてアレンジを練っていきました。アルバム制作のために曲を書き上げたというよりも、バンド活動をする中で曲のストックができ、レコーディングに移行したという感じです。前作で打ち出した音のトゲトゲしさを減らして、より多くの人に届く曲になるよう意識しました。
たしかに「hitorinoua」「kotonoha」「ふる里」といった、優しいメロディと温かみのある音の世界観が本作にはあります。また、アルバムを通して、バンドのアレンジやサウンドがより明確になった印象があります。
片木:『Bookshelf』をレコーディングした時は、純粋に“自分達の出したい音”を形にできたのが嬉しかったけど、それから多くのライブをする中で、自分達の音楽を聴いてくれるオーディエンスの反応をより意識するようになったんです。当時は、自分達の中でハードコア寄りの音楽性を持っているという認識があり、地元京都のハードコア系バンドと一緒にツアーに出て、その中で自分達の個性や目指す方向性が再確認できた時期でした。
「intro」のエレクトロニカ風な同期サウンド、「sun」のレゲエのビートを導入したブレイクバートなど、3rd『journal』に繋がる異なるビートを繋いだアプローチも印象的でした。
井上:心地良いリズムってどんな人にも伝わると思うんです。だから、皆が気持ち良いと思うビートを意識するようになりましたね。
そして、3rdアルバム『journal』に繋がるわけですが、1st『Bookshelf』、2nd『novel』と、これまで書物に関連するタイトルが続いています。これにはどういった意図が?
井上:僕らの曲には短編小説のような物語が存在するので、タイトルを考えた時に本に関係する“本棚”や“短編集”という言葉が浮かんだんです。だったら3枚目も本に関係する言葉にしようと。それまで色んな言葉を探したんですけどね。journalには“日誌”や“議事録”といったこれまでのことを記録する意味があるし、これまでのタイトルに込めた想いを引き継いているのでいいなと。本に関するタイトルは随分と探したので、次回からは全く違うものにするかもしれないですけどね(笑)。
片木:ジャム系のインスト・バンドだと、リフを重ねてそこから曲を作ることも多いと思うんです。でも、私達は表現したいストーリーを曲にするし、曲に自分達の想いやメッセージが詰まっているんです。その想いを、聴いてくれた方がそれぞれの形で受け取ってくれたら嬉しいですね。
ジャズ、ラテン、エレクトロニカなど様々なリズムを巧みに曲に取り入れていますが、12年にフジロックという大型の野外フェス出演したことで、より多くの人が踊れるリズムを意識するようになったのでは?
井上:それはありますね。『novel』でも色々なビートを取り入れたけど、『journal』ではその幅がさらに広がっています。「rosso」や「dance」はラテンのリズムを取り入れたくて、スタジオでセッションしながら作ったものです。「dance」は風営法でダンスを規制する法案が設立して、多くのクラブで深夜踊ることができなくなったことに抗議した曲。普段は物語をイメージして曲にしていくんですが、これは私達なりの意思表示を伝えるための曲です。ライブで演奏者と観客という括りをせずに一緒に楽しみたいと思いがより強くなったので、曲中のソロも増えたし、曲もライブの感覚が強くなっています。
バンド・アンサンブルのサウンドも前回と変わりましたよね。よりそれぞれのパートがしっかり出てくるというか。
井上:メンバーの楽器も変わりましたからね。粉川はドラムセットをグレッチのジャズキットにしたんです。山田はケンスミスの5弦にした。僕は、以前キャンベルのES-335タイプを使っていたんですが、エレキギターとピアノで演奏するとしっかりした太い音じゃないとピアノに負けてしまうので、ES-175にしました。片木は、ライブではRolandのRD-700GX を使っていますが、このレコーディングでは片木の家にあるヤマハ100周年モデルYU3Cを弾きました。
「life feat. YeYe」でYeYeさんが歌で「holiday」でNabowaの山本さんがヴァイオリンで参加していますね。
片木:これらは山田の曲で“対”となるものなんです。彼のお兄さん夫婦に子供が生まれたんですが、その子は先天性の難病を持って生まれてきたので、ご両親は凄く心配していたんです。でも、山田が次に会った時は、彼らはたとえどんな難病を抱えても、その子が生まれてきた運命に感謝して、それを前向きに受け止めるようになっていたんです。山田は、彼らの強い決意に心動かされてこの2曲を書いたんです。
井上:「life feat. YeYe」は2〜3年前にメロディが完成していたんですが、どうしても女性のボーカルを入れたかったんです。そんな時に、YeYeちゃんに出会って、彼女だったら間違いないなと。山田が作ったメロディをベースに、歌詞のイメージを彼女に伝えて彼女に歌詞を書いてもらいました。
片木:「holiday」は、その子供がいつか大人になって、大切な人と一緒に結婚式を挙げた日を祝福している曲。Nabowaとはとても仲が良くて、私と山本君は一緒に色々なところで演奏する機会があり、クラシックの素養があったりでわかり合えるんです。この曲には、絶対にストリングスが必要だったので彼に頼みました。
おもしろい要素は柔軟にどんどん採り入れていきたい
jizueのアルバムは、これまでオープニングにSE的な楽曲を置いてきましたが、これにはどういった意図があるのですか?
井上:1曲目は、本の“目次(物語の導入)”と同じ役割をしていて、これから物語が始まるとゆうイメージを持たせる働きがあるんです。今回は、「intro」から始まって盛り上がって、エンディングの「lamp」で静かに終わり、次のアルバムの世界観に繋がっていくイメージ。エンディングの「lamp」はカフェの雑踏の中で音楽が流れているイメージです。
「eat faker」のエレクトロニカな要素は?
井上:僕の打ち込んだパートですね。作っていく段階で生ピアノがほしかったので入れました。生バンドというイメージがあるけど、こういった意外性でリスナーを驚かせたかったんです。
「clock」は、従来の曲よりもアンサンブルにスペースがあり、歪んだギターのメロディパートなど新しい要素を内包していますね。
井上:むちゃくちゃシンプルにしたかったんです。リフで押すのではなく、メロディは極力シンプルにしサビでしっかりと出す感じ。普段のメロディは片木に任せることが多いんですが、このパートは歪んだギターでメロディを弾きたくなったんです。
アルバム全体のイメージは?
片木:聴いた時にトータルして偏りがないものにしたかったんです。そのために、できあがった曲のイメージをグラフにし、激しい、優しい、強い、温かいなど、六角形でレーダーチャートを付けて、収録曲の並びとバランスを統一しました。これは、Nabowaがアルバムを作る時にやっていたアイデアでマネしたものです(笑)。今回はアルバムに向けて曲作りをしたので、こういった選び方は初めてでしたが、作品としては統一感があるものに仕上がっているなと思います。
エレキギターと生ピアノは、音のレンジやサステインが比較的短いので工夫をしないとぶつかってしまうことが多いですが、お二人のコンビネーションはしっかりと互いを活かし合っていますね。
井上:僕がピアノの鍵盤中央の音域を弾いて、上と下のレンジを片木が弾くようにしています。あと、エフェクターのディレイを使うことで音色を少し変化させています。ディレイが無いとクリーンで弾くとカチカチになるんですよ。
バンド・アンサンブルにおけるリズムの捉え方も変化したなと。『novel』は全体的にジャストなカチっとしたタイム感でしたが、「clock」のようにそれぞれのリズムに委ねて心地良いリズムを生み出しているなと。
井上:一拍をきちんと合わせるのは重要だけど、8や16小節のより長いパルスでリズムを捉えるようになったからでしょうね。そういった部分に人間らしいビートの心地良さがある気がしたんです。
互いのソロをフューチャーした「buzz」は皆さんなりにジャズという音楽に敬意を表した楽曲だと思いました。
井上:不思議な世界観ですよね。従来の曲よりももっとルーズな雰囲気を出したかったんです。
ギターとピアノのレンジも敢えて近くして緊張感のあるハーモニーを作り出していますよね?
片木:この曲だけエレピで演奏したんですが、レンジを敢えて下げてギターのコードがぶつかるようにしました。テンションも13系のエグいのを使っていますね。
『journal』は、フュージョン、ロック、ジャズ、ジャム、どんなスタイルでも形容しきれない皆さん独自の世界観がより凝縮された集大成的な内容だと思います。
片木:私達には、ジャンルに対する強い拘りってないんです。だから、おもしろい要素は柔軟にどんどん採り入れていきたい。ロバート・グラスパーやクリス・デイヴといった黒人のジャズ・ミュージシャン達は、自分達が聴いて育ってきたR&Bやヒップホップの要素をジャズに取り込んでいる。私達もハードコア、クラシックや映画音楽、ジャズ、ラテンといった好きな音楽をしっかりと吸収し、その影響を自分達の色で染め上げた音楽がしたいんですよ。
そうすると、デビュー当時の“ハードコアジブリ”という形容詞ももうjizueの音楽性を明確に表現できるものではないのでは? とすれば今後jizueはどういった音楽性のバンドになっていくのでしょうか? それを体験するのが凄く楽しみです!
井上:うーん、ただのインスト・バンドじゃないですかね? 芯があって心に響くメロディは大事ですが、自分達でもそのカテゴリーはよくわからないです(笑)。
片木:そうすると、やっぱハードコアジブリなのかな?(笑)
井上:もうハードコアさはあまりないけどね(笑)。まぁ、ジャズも昔はワルくて不良なイメージがあったわけですし、そういったトゲは芯に持っていたいですけどね。皆が口ずさめるメロディは絶対に失くしてはいけないけど、それがあればどんなサウンドになってもいいと思うんです。僕ららしいメロディを貫けば、次回作がどんな音楽性になっても、たとえどんな国に行って演奏しても、ちゃんと伝えられると思います。
Interview by TAKAHIRO HOSOE
Live Photo by TAKUMI YAMAMOTO
ジズー
ジャーナル
bud music, inc.
DQC-1074 CD 発売中 2,500円
LIVE SCHEDULE
2014年1月10日(金)大分@the bridge
2014年1月11日(土)福岡@ROOMS
2014年1月13日(月)京都@METRO
2014年2月16日(日)新潟@新潟県十日町城ヶ丘ピュアランド