圧倒的にドラマティックな曲展開で、多くのファンを魅了する”唯一無二の世界観”が魅力のロックバンド、摩天楼オペラ。彼らが2012年10月から13年6月にかけて行なった、全29公演の史上最大のライブツアー“GLORIA TOUR”。その集大成となった、13年6月8日Zepp Tokyoの“GRAND FINALE”公演の模様を収録した、約2年半ぶりとなるライブDVD作品、『GRORIA TOUR-GRAND FINALE- LIVE FILM in Zepp Tokyo』がリリースされた。”美しき合唱”をベースにした、摩天楼オペラらしい壮大なスケールを誇る本作品の魅力をバンドのキーマン、Anziが語ってくれた!
今回ライブDVD『GRORIA TOUR-GRAND FINALE- LIVE FILM in Zepp Tokyo』がリリースされました。まず、一連のテーマである“喝采と激情のグロリア”についてお訊かせください。
前作『JUSTICE』を完成させ、最高の形でリリース・ツアーも終えることができ、バンドのコンディションが最高潮に来ている実感があったんです。このツアーを回っている段階から“次はこういうものを作りたいよね!”と、早くも次に向けた精神が生まれ始めていたんです。そこで漠然と浮かび上がったのが“もっとお客さんと共有できる、一体感の生まれる何か?”を作り出すことだったんです。そこでボーカルでもあり、リーダーの苑が“以前からやりたかったこと”と提案してきたのが、“お客さんと一緒に合唱できる曲を作ること”だったわけです。僕らも納得したんですが、ただこの“壮大な試み”をシングル1枚で終わらせてしまうのは勿体無くて。アルバムとして、もっと言えば、その後のツアーに一貫しこのテーマを掲げたいと。そういったイメージが発端となりましたね。
このテーマをどうやって発展させていったのですか?
まず『喝采と激情のグロリア』で“合唱”をひとつのテーマとして打ち出したんです。このツアーファイナルで、このテーマを終結させようって。このアルバムは、1、2、3章と物語が進行していく青写真もできていて“シネマティックな見せ方”というか、一連のプロジェクトでファンに伝えたかった。それは「GROLIA」に集約されているんです。入り口であり、結論“これが摩天楼オペラなんだ”っていう。それはシングル『GROLIA』で最初に提示したんですが、そこへ行き着くまでの“過程”と“栄光を手にするまでの葛藤”をしっかり表現したいなと。アルバムは“自分達が作り上げた音楽を後世に遺したい”その想いがあって、それが“永遠のグロリア”という栄光になっていったわけです。でも“結局今バンドはどうしたいのか?”という問いは生まれて、それを証明するために、ひたすら“グロリア”に向かって進み続けていった。ツアーファイナルのZEPPセットリストは、まさしくその意志を反映させたものなんです。僕が一度メンバーに提案したんですが、グロリア・ツアーのシーンVは「GROLIA」で始まって、「喝采と激情のグロリア」で終わるという定例化した流れだったんですが、グランド・フィナーレだけは「GROLIA」で始まって、「GROLIA」で終わりたいって提案しましたね。
あのセットリストは“このライブのみのもの”だったんですね?
ええ、“こんなセットリストを組むバンドはきっと稀だろうな”って思っていました。でも、それと同時に自分達にとって“グロリアという行為”がどういう意味を持つのか? それを打ち出したかった。この定義を、メンバー皆が気に入ってくれたんです。ただ、最初と最後は違う“見せ方”がしたかったんで、ラストに合唱団を入れようと。僕らが伝えたかった“喝采と激情のグロリア”というコンセプトは、このDVDを見ると理解してもらえるはずです。
『JUSTICE』から、バンド・アンサンブルが、よりドラマティックに展開していましたが、今回は“その音”が研ぎ澄まされた印象を受けました。
第一前提として、クワイア(合唱団)を入れたかったんです。だから、鍵盤アレンジに関しては“引き算”を強いられる面が多かった。ただ、ギターをはじめ、他の楽器隊は従来とアプローチを変えた意識はなかったですね。
6月8日の「永遠のブルー」「Midnight Fanfare」「喝采と激情のグロリア」のドラマティックな流れは実に印象的でした。
アルバムとライブの曲順では、“正解に違い”があると思うんです。でも、どうしてもアルバムの曲順で聴いてほしいブロックはあって。今回だと、ラスト3曲は崩したくなかった。でも、ライブで、ラスト前にインストを置くのは勇気がいるんですよ。会場のボルテージが最高潮に達したタイミングで“ボーカルが一旦ハケる”というのは凄いチャレンジだった。でも、実際ステージでやってみないと分からない部分もあって。実際にやったら、この流れはファンの胸を打ったらしく、“永遠のブルーからラストの流れに感動した!”って感想も頂いたんです。そこで僕らもやっと安心できて“これが間違いじゃなかったんだ!”って。
3回に分けたツアーの中で、何か変化を感じましたか?
根本的に言えば、僕らは海外のビッグアーティストに心打たれたバンドなんです。だから、そういった影響を受けたアーティスト達のライブを観ると、バンド側が“一緒に歌おうぜ!”と煽らなくても、合唱が自然発生的に起こるわけです。それを観ると、そこにカッコ良さ凄さを感じてきた。でも、それに至る経緯が、僕らの力不足なのか、日本人の国民性なのかもしれないけど“大合唱”を巻き起こせなかった。そこで「グロリア」からの一連の流れで、オーディエンスに“歌ってほしい部分”を込めようって。そしたら、ファンの方が一緒に合唱してくれるようになって。その連鎖反応で、合唱してもらう為に作った曲じゃない歌でも、自然と歌ってくれるお客さんが増えていったんです。
6月のZEPPは本当に感動的なステージでしたが“ステージから見た景色”はいかがでした?
これまで、会場のサイズやオーディエンスの人数で、感動するところはあまりなかったんです。僕個人は、初ワンマンの09年赤坂ブリッツの緊張に凄く似ていたなって。あのライブ以降、たくさんのステージに立ったけど、今回は本当に独特の緊張感が空気がありました。
それはどんな緊張感だったのですか?
なんなんでしょうね(笑)。上手く言葉にできないけど“会場の広さ”や“お客さんの多さ”からくる緊張じゃなかった。赤坂ブリッツも、衣装チェンジがある中、コンセプトがしっかりとあったライブだったわけです。今回も“よりスケールアップした摩天楼オペラがコンセプチュアルなライブに挑む”とい概要はあった。でも、普段とは違う緊張感がありました。“普通の勢いと衝動に任せて盛り上がればOK!”というライブとは、違う部分があるからなのかも。でも、やっぱり“構成美”をしっかりと意識しないといけなかった。“曲と曲の間”や“照明の細かなタイミング”みたいな兼ね合いで、異様に張り詰めた空気が、この日は1日中“ピリピリした空気”が流れていましたね(笑)。
今、グランド・フィナーレが成功して時間が経ちましたが、あの時を振り返ってどういった感想を持ちましたか?
自分達が思い描き、形にしようと“長い時間をかけた芸術”が、本当に“理想的な形”で具現化できたことが嬉しかった。でも、同時にあそこで満足する気は無いし。むしろ、もっとデカい会場で“自分達の音”を鳴らしてみたいって。
アルバム収録曲を軸に、過去の人気曲も盛り込まれていますね。これらは、どういったイメージで?
シーンVとグランド・フィナーレはほとんど変わっていないんです。シーンVを始める前に、どういう流れにすればお客さんが喜んでくれるかが掴めてきたので。昔は、会場毎にセットリストを細かく変えたんですけど、僕らはそういうタイプじゃなって。どうしても構成美が求められるし、セットリストを固定しながら“その精度”を研ぎ澄ましていくことが成功なんじゃないかと。
Anjiさんの中で、あのライブで印象に残っているシーンは?
一番感動したのは、2回目の「GROLIA」ですよね。不安もあったし、お客さんの誰しもが予想していなかった流れだったと思うから。“同じ曲やるなら、違う曲やってよ!”と思う人がいるかもしれないリスクもありましたし。でも、実際に演奏したら違いました。2回目の「GROLIA」で、会場の熱がもう一段階上に行った実感があったし、演奏してた僕らも鳥肌が立ったんです。僕は、1回目と2回目で違うギターソロを弾いたんですよ。
ああ! そうでしたね。これらは、どのようなイメージで弾き分けたのでしょうか?
1回目はCDと同じで、2回目は“感情の赴くまま”にぶつけようと。しかもギターソロの後にBメロがくるんですけど、そこをボーカルとユニゾンしたいなって。ボーカル・メロディとユニゾンで弾いている時は、会場の雰囲気とリンクし過ぎて鳥肌が立ちましたね。これは“相当カッコ良いぞ!”って、自画自賛しながら弾いてました(笑)。
ドラムソロ、ベースソロからの盛り上げで、観客を魅了できるのも“摩天楼オペラの強み”ですよね?
僕らが影響を受けたバンドのライブって、各メンバーの魅せ場がしっかりと設けられているんですよ。それって実際にライブを見ないと味わえないシーンだったりしますし、バンドの良さだと思うんです。CDをそのまま再現する発表会みたいなライブって、ロックバンドとして非常にカッコ悪いから。だから、ロック・ショーとしては、その場、その時に居合わせた人としか“共有できない大事な瞬間”を作りたいと思っているので。今後も続けていきたいですね。
当日使用したギターは?
トラブルの為にサブは用意していましたけど、結果的にはソウルトゥール・カスタマイズ・ギター1本で弾き通しました。アンプはマーシャルJCM2000 DSLの方ですね。ペダルに関してはメインがアイバニーズのTS-9、あとはボスのノイズ・サプレッサーだったり、Gラヴのワウ、マクソンのフランジャー、ライン6のディレイくらいですね。
Anjiさんのギターサウンドは本当に生々しくリアルですよね。ご自身の”サウンド・メイキングに対する拘り”とは?
歪み過ぎているのは苦手なんです。芯を残さないと、心に届かないと思うから。ギターのボリュームを下げればクランチになるから、TS-9をオフにした状態でボリュームを下げればクリーンにまでなるセッティングをしています。マーシャル自体で作る歪みは、クランチ程度に留めているんですよね。それが自分の中で理想ですね。若い子は歪ませないと不安だったり、しっかり弦をヒットさせないと音が鳴ってくれない恐怖があると思うけど、それで歪み過多にするのは勿体無いですよね。イングヴェイ・マルムスティーンやマイケル・シェンカーの音が、なぜあそこまで“人の心を捉えるのか?”と言えば、“芯の音を潰していないから”なんですよ。僕もそこに気付いてから、極力不純物を取り除いたサウンドを聴かせたいと思うようになって。だから、マルチエフェクターも好きじゃなくて、やっぱり使わないエフェクトの回路も通ることになるから。アンプとギターの間には、必要最低限のものしか挟みたくない。音痩せもしないですし、自分の出したい音がダイレクトに出せる。更に、摩天楼オペラはキーボーディストがいるので、ギターに多彩な音色やエフェクティヴなアプローチは求められないんですね。そういう彩りは、彩雨が担ってくれるので。僕は芯の通ったギターを奏でていれば成立するって環境です。
ピッキングのニュアンスも絶妙ですよね。
ありがとうございます! 昔からなんですけど“譜面だけではニュアンスを現せないプレイヤー”になりたいと思っていて、コピーしたギターキッズ達が“Anjiとまったく同じフレーズを弾いているのに、全然鳴き方が違うな?”って首を傾げてもらいたいって思いますね(笑)。
Interview by TAKAHIRO HOSOE
摩天楼オペラ
『グロリア・ツアー-グランド・フィナーレ-ライブ・フィルム・イン・ゼップ・トーキョー』
[初回限定版]
DVD2枚組(本編&特典ディスク)
KIBM-90397 5,250円
[通常版]
DVD1枚(本編ディスク)
KIBM-397 3,675円