毎月話題のライブ、コンサートにおけるアーティストの最新ライブ機材をレポートしている「FROM THE BACKSTAGE」のコーナー。9月2日発売Player10月号では絶好調のUNCHAINの機材レポをお届けしております。今年は早々に「丸の内サディスティック」(椎名林檎)、「Automatic」(宇多田ヒカル)、「SUPER GIRL」(岡村靖幸)、「This Christmas」(ダニー・ハザウェイ)、「BEST OF LOVE」(ジ・エモーションズ)を独自に昇華したカヴァーアルバム『Love & Groove Delivery』でポップファンのド肝を抜いたUNCHAIN。
UNCHAIN「丸の内サディスティック」
UNCHAIN「Automatic」
UNCHAIN「SUPER GIRL」
UNCHAIN「MR.TAXI」
そして最新作『ORANGE』では十八番のファンキーなギターロックは勿論、ソウル、R&B、ジャズ、カントリー、ヒップホップ、レゲエなどが凝縮したオリジナルナンバーで勝負。特に『ORANGE』は谷川正憲(vo,g)、佐藤将文(g,vo)、谷浩彰(b,vo)のソングライティング、そして佐藤、谷のリードヴォーカルもフィーチャーすることで、個のユニークな音楽家の集合体バンドとしてさらなる可能性を提示。個人的にUNCHAINってゆくゆくはムーンライダーズ、シュガーベイブ、センチメンタルシティロマンス、ユニコーンみたいなバンドになるのかなぁ、という印象を抱きました。
UNCHAIN「Smile Again」
UNCHAIN 6th Album 『Orange』 trailerを聴いて完成度に驚け!
黒人音楽のエッセンスを加味した、テクニカルなギターロックという武器は不変なのですが、自身のレーベル“STYLE_MISSILE records”を立ち上げた『SUNDOGS』(2011年)以後は、日本語詞スタイルによるポップスオリエンテッドなアプローチを追求してきており、特に前作『Eat The Moon』は極めて高音質かつ完成度の高いポップアルバムでした。以前より定評のある演奏力は言わずもがな、巧みなアレンジセンスにハーモニーアレンジ、そして谷川正憲の日本人離れした歌唱力にうっとりした人は少なくないはず。『Eat The Moon』は音楽のアミューズメントパーク的なコンセプトアルバムだったのですが、最新作『ORANGE』は一転してそういったトータリティを声高にはしておらず、実にすっきりとした印象でとにかく良質な楽曲をパッケージした勝負作となっています。特に今作はソリッドに聴かせつつも綿密な音作りがされており、豊かなハーモニーはUNCHAIN史上最高クラスではないでしょうか。駄作無しの恐るべきアルバムになっております。
UNCHAIN「Take Your Mark」
UNCHAIN/迷宮パスワード
『ORANGE』ツアーの東京公演は当然ながらソールドアウト。あんなパンパンに人が入ったO-Westは久しぶりに観た気がします。楽曲により村原康介(key)が加わり『ORANGE』『Love & Groove Delivery』の楽曲を披露したほか、盟友・竹内サティフォ(g/ex.竹内電気)が登場してツインギター、あるいは谷川含むトリプルギターでホットなセッションも繰り広げられる一幕も。大盛況だったO-West公演を支えたUNCHAINの愛器とともに、さらにいくつか機材撮影を追加して単なるライブ機材レポというより、UNCHAINの楽器変遷をまとめた実に重厚な内容になりました。前々から良い音しているなぁとは思っていましたが、特に谷川・佐藤のメインギターは相当モディファイがされております。この辺のこだわりは外見だけではまったくわからないわけでやはりUNCHAIN恐るべし。機材関係のマニアックなお話はPlayer10月号でお楽しみ下さい(笑)。
谷浩彰がいち早く愛用中のESP Ergo Pick!
ところで今回の取材でとりわけ興味深かったのが、谷浩彰が使用しているピックでした。彼の比較的ブリッジ寄りでピッキングするベースサウンドが、UNCHAINならではのシャープなサウンドの大きな要因になっていると思ったのですが、“あれ? そういえば以前は指弾きも結構していたよな…アップライトベースを弾くこともあるし…”とまず思ったのです。事実今回のツアーでは指弾きの割合が減り、9割方ピッキングプレイとなったそうなのですが、その理由がESPカスタムラボのエルゴピックという特殊形状のピックにありました(こちらのESPさんのブログでも説明されています)。現在はまだ試作段階というエルゴピックを率先して試している谷ですが、彼はエルゴピックに大きな手応えと可能性を感じていると断言しております。写真の下側を三味線の撥を持っているような感覚で握り、対する2つの角でピッキングするのですが、3本指でがっちり持つこともできるのでより強弱が付けやすくなり、プレイの安定性も増したそう。「より弦に当たる面積を大きくなることで豊かなローを産み出すし、同時にエッジの効いたピッキングもできる」とは谷談。
吉田昇吾がプレイしていたSAKAE Snare
そしてもうひとつ。よく喋るUNCHAINのメンバーの中ではやや寡黙な印象もあるスーパードラマー吉田昇吾。歯切れが良くタイトなドラミングで、オンステージの高揚感を高めていくアグレッシブなプレイには思わず目が奪われます。2010年代に入ってから彼は北米メイプルシェルが採用されたサカエのドラムセット、ジ・オールマイティーを愛用中。スネアは金属シェルのものが好みなのだそうですが、なんと写真のアルミシェルのスネアもサカエ製でした。サカエ・ドラムというと木胴シェルにこだわるメーカーという印象が強かったもので、最初彼からサカエ製と聞いたときは耳を疑ったのですが、このアルミシェルのスネアもまだ未発売の状態のようです。先述の谷のエルゴ・ピック同様、彼らがいち早くプレイを繰り返していくことで製品化の道が開けていくわけですね。
なおUNCHAINからはサイン入りTシャツと缶バッジをセットで2名様分いただきました! ぜひ記事の感想や「もっとUNCHAINを載せろー」とか書いていただき、こちらの応募要項を参考の上メールにてお送りください。
アンチェイン
オレンジ
STYLE-MISSILE CD+DVD
YZSM-20011 6月5日 3,000円
アンチェイン
ラヴ&グルーヴ・デリヴァリー
STYLE-MISSILE CD
YZSM-20008 2月6日 2,300円
2013年8月29日