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田中義人 こだわりのギター/アンプコレクション

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Photo by TOMUJI OHTANI

 00年代シーンに衝撃をもたらしたMONDO GROSSO『MG4』の参加で脚光を浴びたほか、、以後もbird、ケツメイシ、スガシカオ、葉加瀬太郎、最近ではレミオロメン、藤巻亮太のソロなど数えきれないほどのライブサポート、アレンジ、楽曲提供やプロデュースなど多岐に渡る活躍を見せている田中義人。各方面から引っ張りだこのギタリストである彼は、その傍らでソロアルバムをじっくりと作りこんできた。なんと12年かけて編み続けてきたというから尋常ではない想い入れを感じさせる音に仕上がっているのだが、YOSHITO TANAKA名義の初のソロ作品『THE 12-YEAR EXPERIMENT』として完成。

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YOSHITO TANAKA『THE 12-YEAR EXPERIMENT』
タワーレコード TRJC-1013 2月13日 2,000円


 80年代のクロスオーバー、ファンク、ロック系の名盤ジャケットのムードを彷彿させるジャケット/アートワークもまた強いこだわりが伝わってくるわけだが、音の方もブルース、ソウル、ゴスペル、ヒップホップ、テクノ、ブラジル音楽などの造詣の深さ、そして並々ならぬ音楽愛に満ちあふれている。しかし面白いのはそうした多彩な要素を単純に切り貼りするっていうのではなくて、ちゃんと独自のものとして融合、昇華させている点。田中義人ならではというノリを感じさせるグルーヴィなトラック、そして勿論エモーショナルなギタープレイもたっぷり聴かせてくれる。マニアックに聴きこんでいっても聴き飽きないディープさも纏っているのだが、単純に2013年産ポップアルバムとして楽しめる取っ付きやすさも擁しているのも彼ならでは。そしてそれこそ『THE 12-YEAR EXPERIMENT』で田中義人がこだわった点でもある。


YOSHITO TANAKA「Love Enough」Guest Vo. 阿部芙蓉美

 これまで様々なアーティストサポートを手掛けてきた彼だけあり、ゲストミュージシャンも華やかだ。ソウルフルな喉を震わせるTaprikk Sweezeeなどの海外勢を始め、阿部芙蓉美、スガシカオ、ミトカツユキなどゲストヴォーカリストに迎えているほか、塩谷哲や森俊之らの鍵盤楽器をフィーチャーしてみたりと、緻密に作り込まれた全12曲が楽しめる。リスペクトするジミ・ヘンドリックスが乗り移ったかのような芳醇なバルブトーンが響いたかと思えば、ファンキーなカッティングリフが舞ったり、歌心たっぷりにメロディが奏でられたりと、ギタープレイは実にカラフルだ。

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FENDER Stratocaster Customized by T-BONE GUITARS
Photo by TOMUJI OHTANI


 『THE 12-YEAR EXPERIMENT』の楽器クレジットにおいて、“Customized Burgundy Mist metallic Strato”と表記されているのが、田中義人のメインギターの1本である本器。リバースヘッドストック仕様なのが印象的だが、低音弦側と高音減側の弦長バランスが逆になることで、テンション感に微細な変化が起きるというのが本器の肝。田中義人曰く、ハイのタイトな鳴りがお気に入りという。ところで彼のギター周りはT-BONE GUITARSの田中舘滋氏が手掛けているが、田中舘氏は以前ICEの宮内和之のギター周りも担っていた経緯がある。ゆえに田中義人の機材類には以前宮内和之が使用していたものがあったり、もとは宮内和之が試奏用に取寄せたストラトを、田中義人が気に入ってそのまま購入したものがあったりと、本誌インタビューでは書ききれていないもののそうした接点があったりもする。田中義人、宮内和之の対談予定もあったそうだが、実現には至らず宮内和之は急逝している。こうしたエピソードを知ると、黒人音楽の多大なるリスペクトと、そのノリを独自のものにしようと育んできたグルーヴィなギタースタイルなど、共通項がたくさん見えてくるから本当に不思議だ。実は同タイミングで宮内和之の死を乗り越えて制作された、新生ICEのライブDVD『ICE fes VOL.0 KM JAM 2012 at SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE APRIL 8.2002』もリリースされていたりして、何か不思議な縁というものを感じずにはいられない。田中義人という音楽家にも感銘を受けたが、どこか宮内和之アニキが出逢わせてくれたような気もするし、いずれにしろなんとも印象に残る取材となった。田中義人こだわりのギターの数々、アンプコレクション、そして札幌時代のエピソードからモンド・グロッソ『MG4』のこと、勿論『THE 12-YEAR EXPERIMENT』のエピソードもたっぷり語っていただいている。諸々込みで10,000字を超える見応えのある7ページになったと思うので御一読いただけたら嬉しい。

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 なお読者プレゼントとして田中義人のシグネチャー・ピックを、御本人の直筆サイン入りでいただいたので、ぜひ記事の感動などを一言添えていただき、こちらを参照のうえでメールにてご応募いただきたい。

2013年3月29日