8月2日(木)発売Player9月号のソフトウェア特集では“THIS IS MY PARTNER 〜ギタリストこだわりの1本を語る!〜”を掲載。トレードマークとも呼べるほど愛着のあるギターとの馴れ初め/上手な付き合い方/辿り着いたサウンドメイキングの極意などなど、長年連れ添ったパートナーについて、じっくりとお話を伺っています。これまでも登場アーティストの新作インタビューを、このPlayer ON-LINE内に随時掲載してきましたが(渡辺俊美:http://ymmplayer.seesaa.net/article/273580789.html、ワタルS/SISTER JET:http://ymmplayer.seesaa.net/article/277758869.html、長澤知之:http://ymmplayer.seesaa.net/article/277812970.html、百々和宏/MO’SOME TONEBENDER:http://ymmplayer.seesaa.net/article/280992923.html)、本誌発売直前となる今回は、特集内で実現したヤマジカズヒデ(dip)と百々和宏による対談のAnother Takeをドドンと掲載! 本誌ではPlayerならではの、ギターを中心としたマニアックなトークが繰り広げられている為、ここには比較的ライトな内容を。是非Player9月号の記事と併せてご覧ください。ヤマジさんのジャズマスター、百々さんのムスタングはもちろん、百々さんがムスタングを使用するきっかけになったヤマジさん所有のフェンダー・ブロンコも掲載しています!
モーサムの新作はやりたい放題だね
そこが凄く良いと思った(ヤマジ)
おふたりの最近の作品についても是非お話をしたいと思います。ヤマジさんがほぼ全曲ギターをプレイしている同名映画のサントラ盤『I'M FLASH!』について、何か百々さんから訊きたいことってありますか?
百々:これはあれですか、やっぱり画を見て曲を作るという?
ヤマジ:大半がそうだね。もう1回目を見ながらその場で作っちゃうこともあるし。メンバーとセッションで作ることも。
百々:インスピレーション…じゃなくて、えーと…。
ヤマジ:インプロビゼーション(笑)?
百々:そうそう(笑)。それを映像の尺も考えながらやるんですよね。俺には出来ないかなあ…。ドラムの人(中村達也)なんて、そんな繊細なことが出来るとは思えないんですけど(笑)。
ヤマジ:いや、もしかしたらドラムの人が一番、感が良かったかも知れない。メチャクチャ反応が良いよ、俺はそれに乗っかるだけって場面も多かったくらい。
伊達に役者業もやってないですね(笑)。
(ヤマジ)マネージャー:でもサントラなのにテンション上がり過ぎて雄叫び上げたりするのには参りましたけどね…。
一同:爆笑。
百々:邪魔だなあ、それ(笑)。でも俺去年の秋くらいだったっけなあ。タッつぁんの家に呑みに行って。お互い良い感じに酔っぱらってきたところで、タッつぁんがDVDを再生して。“これのサントラやるから観ろ!”って、予告編つうか断片? 泥酔状態だったので、内容は全然覚えてないんすけど。だからこのサントラの話は実はいち早く知ってはいたんですよ。そのときに主題歌「I'M FLASH」の歌詞も見て、作詞者(柴山俊之)のクレジットにテンションが上がったりして…。なんで俺がギタリストとして呼ばれなかったのかなって(笑)。
ヤマジ:来れば良かったのに。思えばちゃんとセッションしたことってないもんな。
百々:ライジング(RISING SUN ROCK FESTIVAL)のときも少しだけでしたもんね。それこそ“中村達也NIGHT”みたいな感じで、タッつぁんをホストにしたセッション大会でヤマジ先輩とタッつぁん、俺の3人で。元々やる予定じゃなかったんですけど。
ヤマジ:うん、直前で決まったんだよな。リハが百々と入れ替わりで、すれ違うときに“なんか一緒にやろうよ”って感じだった。
ヤマジさんはモーサムの新作『Strange Utopia Crazy Kitchen』を聴いていかがでしたか?
ヤマジ:うん、とにかくやりたい放題だよね。それが凄く良いと思った。
百々:フフフ(笑)。
ヤマジ:結構シンセも入れるようになったんだね。
百々:そうっすね。今イサムはドラムを辞めてギター&シンセサイザーにシフトしていて。
ヤマジ:元々ギター弾いてたんだよね。
百々:そうですね。モーサム以前はギタリストでしたから。
ヤマジ:ギター2本いるのは楽しそうだよね。それはたまに憧れるんだよな…。
百々:ギター2本の頃ってないんでしたっけ?
ヤマジ:dipで一時期はあるんだけど、すぐ3ピースに戻ったりして。昨日気が付いたんだけど、“なんで俺が聴いてきたバンドはギター2人の4人編成が多いのに、自分はずっと3ピースでやってんだろ?”って(笑)。
百々:それは我が儘だからじゃないですか、ヤマジさんが(笑)?
ヤマジ:ずっといてくれなくて良いから、ある曲のある部分だけは弾いて、そこが終わったらステージ袖にハケてくれるようなギタリストがいれば理想。
百々:嫌ですねー、それは(大笑)。
ヤマジさんは日本には
なかなかいないタイプのギタリスト(百々)
3ピースに対するこだわりはおふたりとも無いですよね。
百々:俺は結成当初からもう1人ギターがいれば良いのにと思ってましたからね。“自分のギター1本でまともなサウンドになるはずがない”って思ってましたし。でも、いざ他に誰か入れようってなって当初は色んなギタリストとスタジオに入ってもしっくり来ないんですよねえ。
百々さんはモーサム結成前からヴォーカル兼任のスタイルなんですか?
百々:そうです。最初はギタリストになりたくてギターを始めたんですけど、ロクに練習もせず…“これだと駄目だわ”と思ってヴォーカル兼任の道を選びました。
ヤマジさんは嫌々ヴォーカルを始めたクチですよね。
ヤマジ:うん、前任のヴォーカルが抜けて仕方なく歌い始めたというか…。だからニュアンスとして、百々は“ヴォーカル&ギター”で俺は“ギター&ヴォーカル”って感じだよね。
百々:ああ〜、凄い腑に落ちます。
ヤマジ:でも実際歌う人のギターって良いよね。なんか歌心がどうしても違うんだろうね、ギター専任の人よりも。
百々:確かに俺も好きな人多いですね。より歌との親和性も生まれるし。単純に歌いながら弾けることって限られるし、だからこそ歌に必要なプレイとフレーズしか鳴ってない感じが良いのかも知れない。
ヤマジさんも百々さんもギタリストとしてのサポートワークもありますよね。明確に意識/プレイ面で違います?
ヤマジ:俺は全然違う。ギターだけ弾けるのが楽しくて仕方がない。
百々:えぇ〜、良いなあ。俺は緊張しますねえ(笑)。“ヴォーカリストでもある”ってのを逃げ道にしている面もあるので、“いやいや、俺はヴォーカリストなんだから、これくらいでも許せ!”っていう。それがギタリストとしてのサポートだと通用しないんで怖いっすね。でも呼んでもらえるのはやっぱり有り難いですけど。そこそこ自由にさせてくれれば、自分のカラーが出せる自信はあるし。ただ“ああ弾いてくれ、こう弾いてくれ”だと萎縮しちゃうことの方が多いかな。
ヤマジさんはギタリストとしての百々さんってどう捉えています?
ヤマジ:どうだろう、ジョニー・サンダース?
百々:(爆笑)。そう言ってくれると増々練習しなくなりますね、俺。“これで良いのだ!”って。でも嬉しいです(笑)。
対して百々さんはヤマジさんをギタリストとして、どう捉えていますか?
百々:パンクからニューウェーヴ、90年代のグランジ、オルタナ、シューゲイザーまでギターの音が幅広いんですよね。こういう人って日本ではなかなかいないと思っていて。シンプルな3コードのR&Rをやっているのをリハで聴いていても…そういう曲を弾かせても隙が無いなって。今の評価でも過小評価過ぎると思ってるんですよ、ヤマジさんは。
ヤマジ:おっ、良いねえ(笑)。
百々:大体、ある年代でギタリストってタイプが分かれてしまうんですよ。ヤマジさんはその垣根が無いかな。どうしても特定の道、ジャンルを究極まで極めていくことが美徳とされているところもあるけど。その時々の音楽をキャッチして自分の中で吸収、昇華しているんですよね。とは言え、鮎川(誠)さんのギターはいつ聴いても鮎川誠でカッコ良いんすけどね(笑)。ジョニー・ラモーンも好きですし。
ヤマジ:そういうギタリストに憧れるところもあるけどね。
おふたりともソロ名義で作品を出している共通点もありますよね。
ヤマジ:俺はトランスレコードの北村さんって人が“オムニバスを作るから、2曲作ってくれない?”って話をくれて。で、その2曲の出来をかなり気に入ってくれたみたいで、“あと5、6曲作ったらアルバムとしてリリースしてやる”みたいな流れになったんだよね。個人的にもバンドで出来ないような曲が溜まって来たらソロに回していく感じだったかな。
あのソロアルバムではアコギも使用していましたが。
ヤマジ:あの頃はヤイリのアコギだったかな、今は持っていないんだけど。今回のトリビュート盤で「GARDEN」のセルフカバーを収録しているんだけど、あの曲ではギルドのアコギを使ってる。
百々さんもアコギはギルドですよね。
百々:そうですね。正直アコギのことは良く分かってないんですけど、マーティンだとエリック・クラプトン、ギブソンだとジョン・レノンやキース・リチャーズのイメージが強過ぎて。ギルドって俺の中ではそういう特定の対象がいないんですよね。だから使い易いのかも知れないです。
百々さんがソロ作『窓』を作るきっかけは?
百々:俺はヤマジさん以上にモーサムでは出来ない曲が生まれるケースが多くて…。
ヤマジ:そうなんだ?
百々:dipは無理矢理dipとして落とし込めそうじゃないですか。うちは3人が3人バラバラだから、“これはボツだな”っていうのが直感で分かる。そうすると悲しいかなデモ墓場へ(笑)。“この曲、誰も良いって言わなかったけど、自分の頭の中では最高の完成予想図まで出来てるのにな”って曲がここ10年で溜まってきて。
ヤマジ:メンバーから“NO”を突きつけられるんだ(笑)。
百々:そこまで大袈裟じゃないですけど、アルバムを作る上での曲出し会議で各々5曲くらい持って来て“あれ録ろう、これ録ろう”って決めていくんですけど…。
ヤマジ:“えっ、これ外しちゃうんだ!?”みたいな(笑)。
百々:そうそう(笑)。自分でも“でしょうね”って思う部分もあるんですけどね、やや内省的だったりすると。その頃のデモはアコギの弾き語りだったりするから、メンバーからすれば完成までの道筋が見えないんだろうし。そこで“こういう曲たちも、いつか形にして世に出したいな”とは思っていて。その丁度良いタイミングが去年で。モーサムのベスト盤も出たし、2011年は新作も作らんだろうなって思ってたから。
『窓』はヤマジさんに直接手渡しされたんですよね。
ヤマジ:そうそう、リハーサル・スタジオで(笑)。
百々:“なんか隣のスタジオから良い音してるなあ”と思ったらdipがリハーサルをしてたっていう(笑)。で、丁度CD持っていたので。
ヤマジ:一番気に入ったのは「Sad Vacation」かな。と言うかライブが観たいと思った。
百々:あっ、今後もやっていく予定なので是非是非。
モーサムと平行して続けてくれるんですね。
百々:そのつもりです。思いの外、評判が良かったので続けてみようかなと。あとね、そうでもしないと増々ギターを弾かなくなる気がして(笑)。…ヤマジさんって常にギター弾いてるイメージなんですけど。実際に楽屋とかでもそういう姿を良く見てるし。
ヤマジ:でも俺も家ではあまり弾かなくなったかな。
百々:俺は尻叩かれないと弾かないんですよ。半ば“練習しない方が売り”って開き直ってるところもあるんで(笑)。
ヤマジ:まあ上手くなり過ぎるのが良いとは思わないけど。
百々:そうなんですよね。でも最近やっとアコギの上手い鳴らし方が分かってきたところもあって。やっぱ優しく弾けば優しく鳴るもんだなって。右手の重要性が分かってきました。ピックも段々と薄いタイプになってきたし。それはソロをやらないと気付けなかったことだと思います。この前もフェンダーのショールームに行って、アンプを4、5台試奏させてもらったりて。ソロ用に機材を揃えようかなって…久しぶりにそういう欲が出てきましたね。
バンドでもソロでも積極的にカバーもされているところも共通点かと。
百々:『窓』収録の「悪女」(中島みゆき)や「雨音はショパン」なんかに関しては半分お遊びの感覚ですけどね(笑)。
それってヤマジさんがソロで「木枯らしに吹かれて」(小泉今日子)をインストでカバーしていたことに影響されてってことでも無いんですね。
ヤマジ:あったなあ、そんなの(笑)。
百々:影響されたってことにしておきます(笑)。でもまあ、単純に好きな曲をやってるだけですね。ベルベッツもやったし、ニール・ヤングもやったし。『STRUGGLE』でもソニック・ユースをやってるし。
ライブではフリクションもやっていますよね。
百々:もう昔からやってるから、そろそろRECKさんに“この曲の権利くれませんか?”って良いに行こうかなってくらいですね(笑)。
ヤマジさんもその時々で好き曲を?
ヤマジ:そうだね、友達と話していて良く出てくるバンドとか。最近だとiTunesの中に“いつかカバーしたい曲”みたいなプレイリストがあったり。
百々:へえ、見てみたい(笑)。
で、目下モーサムの最新カバーがdipのトリビュート盤『dip tribute 〜9faces〜』に収められている「TIME ACID NO CRAY AIR」なわけですが。これの選曲は百々さん主導で?
百々:そうですね。他にも色々と候補曲はあったんですけど、実際に演奏したのは「TIME ACID〜」だけです。プレイに関してはdipへの敬意を表して“先祖帰りアレンジ”にしようと(笑)。
ヤマジ:なってたよ、見事だった(笑)。
百々:そう、dipの皆さんに笑って貰えればなって。極端な話、“アルバムの最後の方におまけ的に入ってりゃ良いかな”と思ってたんですけど、蓋を開けてみれば1曲目だったという(笑)。あれには驚きましたね、直ぐさま遠藤さん(UK.プロジェクト 社長)に電話しましたからね。“これ1曲目にしちゃ駄目だよ! そんな曲じゃないから”って。
ヤマジ:……あれ1曲目に選んだの俺なんだけどね。
一同:(爆笑)。
百々:そ、そうなんすね。じゃあ有り難うございます(笑)。
このトリビュート盤への参加陣はヤマジさんのセレクトですか?
ヤマジ:UK.プロジェクトの人も考えてくれたけど、俺個人でも“dipのトリビュート作るなら誰に参加してもらいたいかな?”と考えていて。凄いことにUK.プロジェクトが出してくれたリストと重なってたけど。
百々:なんか統一感がありますよね。トリビュートって、どうアレンジするか凄く悩むことも多いんですけど今回に関してはすぐ完成まで見えましたね。シンプルに楽しくやろうって感じで。なんかそれが音に出たと思うし。
でも本当に参加アーティストが幅広いですよね。THE NOVEMBERSの小林(祐介/vo,g)さんはモーサムの影響でdipを聴き始めていたりもしますし。
百々:えっ、そうなんですか!? この前、大阪で初めて対バンして、彼は凄く良い子ですよね〜。“ヤマジさんとこの前話が出来た!”って嬉しそうに話してましたよ。“昔はそんなの考えられない人だったんだよ”って言っておきました。
ヤマジ:“良い時代に生まれたなあ”って(笑)?
Interview by KENTA TOGAWA
Photo by TOMUJI OHTANI
【LIVE INFOMATION】
dip tribute -9faces- RELEASE PARTY
2012年8月31日(金)@渋谷CLUB QUATTRO
OPEN/START 18:00 / 19:00
出演:dip、MO'SOME TONEBENDER、THE NOVEMBERS、池畑潤二×ヤマジカズヒデ、ハヤシ(POLYSICS)、フミ(POLYSICS)、hiro(te')、近藤智洋(GHEEE)、木下理樹(ART-SCHOOL/killing Boy)
DJ:小野島 大
MO’SOME TONEBENDER
Strange Utopia Crazy Kitchen
日本コロムビア 発売中
初回盤 CD+DVD COZP-703〜4 3,780円
通常盤 CD COCP-37458 2,940円
http://mosome.com/
V.A
dip tribute 〜9faces〜
代沢レコード/UK.プロジェクト CD
UKDZ-0126 発売中 2,625円
http://dip.under.jp/dip_official/
2012年7月25日