Damn! MOONRIDERS!!
Player2012年3月号 FROM THE BACKSTAGE ではムーンライダーズのライブ機材をレポートしています。ムーンライダーズというと、現存する日本最古参のロックバンドなんて言われ方もするわけですが、このたび2011年の活動をもって「進化するまで」無期限活動休止することを表明。クールな味方をすればバンドの活動休止なんてものはいくらでもあるわけですが、80年代後半に長い活動休止期間をとったときもこのバンドは別に活動休止宣言はしなかったし、もとより6人が各々独立したソロアーティストでもあり、プロデューサーなど裏方稼業でも大活躍な音楽家達。常に何かしらをやっている人達ではあるんですが、それだけにわざわざ活動休止などと言われるとファンには重たいものがあります。ミュージックマガジンが「さよならムーンライダーズ」で特集を組んでいましたけれど、実質的な意味合いとして解散と同等の受け取り方をしている人が多いですしね。でもそれも悲しいので、みんなさっさと進化できるといいですね。無論僕らリスナーも。
Playerでは近年鈴木慶一、白井良明のギターコレクション記事を企てたりと、ムーンライダーズを追いかけてきました。Playerも楽器誌では最古参のカテゴリーに入る雑誌ですので彼らとは長い付き合いです。ライダーズファンの中には、慶一さんが短編小説をPlayerに連載していたことを知っているひともいらっしゃることでしょう(笑)。『Ciao!』リリース時にインタビュー取材のオファーもしたのですが、今回インタビュー稼働がないということだったので、せめてライブ機材取材を!とお願いして叶ったのが12月17日 中野サンプラザホール公演というわけです。弦楽器隊の使用機材は大きくは変わっていなかったのですが、良明さんがJMI AMPLIFICATION 30/6 Comboを使用していたのが面白いところでした。客席を練り歩くように登場してステージに上がり、ラストも客席から帰っていったのも印象的なコンサートでしたね。常に裏の裏を読むようなサプライズを好むバンドではありますが、アンコールでオーディエンスをステージに上げてしまった場面もそうですが、演者と観客に差なんかないんだ、みんな同じなんだということをさりげなく謳っているような演出でもありました。この辺のテーマ性もいずれ語られるといいんだけれどな。機材紹介は4ページに渡り展開していますが、ここではフロント4人の機材レポの抜粋を掲載。
鈴木慶一 GIBSON SG Jr.
近年のライブで大活躍のSGは3プライのスモールピックガードやドッグイヤー・タイプP-90、トップハット・ノブといった仕様から63〜66年製と思われるんですが、慶一さん入手時にエボニーにリフィニッシュされており、その際にシリアルなどは消えてしまっているので詳細は不明。チューンオーマチックタイプとともにストップバーテイルピース仕様に変更、ペグもグローバー製に交換されています。
白井良明 GIBSON CUSTOM SHOP Histric Collection 1959 Les Paul
00年代に入るぐらいまではそれこそ楽曲ごとに多数のギターを持ち替えていた良明さん。それはそれでギター番長ファンにはたまらない魅力だったのですが、近年はsclapのライブなどもそうなんですが基本的にギブソン系で極力持ち替えずに勝負。00年代中頃まではレスポールSGの印象も強かったのですが、現在のメインギターはヒスコレの59リイシュー。亡き母が残してくれたお金で購入したもので、形見でもあり良明さんの並々ならぬ想い入れを感じる1本です。
武川雅寛 KARL HOFNER Strad Model
クジラさんのヴァイオリンはサウンドホールを覗いたところ、KARL HOFNER製ストラド・モデルでした。カールヘフナーはヴァイオリン・ベースでお馴染み、1887年に創業したドイツの老舗楽器メーカー。クジラさんは中学時代、ヴァイオリンを習っていたときに入手して以来、ずっと愛用しているようです。かぐや姫「神田川」の印象的なイントロを筆頭に、実は国内ポップミュージック/ロック史で最も有名なヴァイオリンのひとつと言えます。
鈴木博文 FENDER Jazz Bass
クジラさんのヴァイオリン同様、フーちゃんのジャズベースもまたムーンライダーズの歴史とともにあった1本です。近年ではライン6のヴァリアックス・ベースを使っている姿もあったりと新しい楽器にも興味はお持ちのようですが、博文さんといえばこのジャズベースを思い浮かべるひとがほとんどではないでしょうか。シリアル入り4点止めFプレート、1弦用だけ長いオクターヴ調整用ネジを擁したブリッジなどから73年製とわかります。指弾きのイメージも強いフーちゃんですが、サンプラ公演はほとんどピッキング・プレイでしたね。
という感じで、個人的にも感謝とせいっぱいのリスペクトの意味を込めて作った機材レポ記事となっております。ぜひPlayer読んでやってください。サンプラでは僕もアナログ盤も購入しましたが、最新アルバム『Ciao!』はムーンライダーズ史上、最も誰がどの曲を作っているのかが判別しづらい楽曲が入っています。そのくせあんまり今回は共作がなくて単独クレジットで、しかも全員がヴォーカルをとっているのも印象的でした。個人的には『Dire Moron TRIBUNE』に継ぐコンセプチュアルなムードが漂うアルバムって気がしました。なんか有終の美ってムーンライダーズらしくない気もするんですが、これがラストアルバムになるんだとしたら本当に美しいピリオドかも。とはいえ、また時間が経ったらしれっと演ってほしいんですが。活動休止のうちは最古参ロックバンド記録も更新され続けるわけですからね。豪華ゲスト陣と名盤『火の玉ボーイ』を再演した火の玉ボーイコンサートのライブアルバムもリリースされました。ライダーズ史上最も音質が良いライブアルバムだと思うのですが、コアなライダーズファンの方、満足度はいかがでしょう?
チャオ!
MOON RIDERS RecordS XPCA-1015 3,200円
火の玉ボーイコンサート
LIVE at MELPARQUE TOKYO HALL 2011.05.05
MOONRIDERS RecordS XPCA-1016-7 3,800円
Text by KAZUTAKA KITAMURA,Gear Photo by TAKAHIRO HOSOE
2012年2月19日