ex RYTHEMの新津由衣がソロプロジェクト Neat's をスタート! 渾身のファーストアルバム『Wonders』をリリースした。このアルバム、とにかく音が綺麗! とりわけギターのシングルコイルサウンドの繊細なサウンドと、弦のこすれるニュアンスまでも見事に拾いあげたかのような美しい音色には特に驚かされた。RYTHEM時代からソングライティングに定評がある新津由衣だが、Neat'sにおいては様々な音楽エッセンスを柔軟に取り入れたアレンジ面、またシンセやギターサウンドの音作りがより自由なアプローチで行なわれている。また歌詞においてもドキリとするような肉迫したフレーズもあり、彼女ならではのユニークな語彙も魅力。キャッチーなメロディを擁しながらもアップトゥデートなロックアレンジが施された数々はNeat'sのSoundcloudで試聴できる。
BBB / Neat's ビデオクリップ〜short version〜
『Wonders』には数々のPVも収録されたDVDも同梱されているのだが、いろんな楽器をプレイしている新津由衣の姿が観られるのも面白いところ。RYTHEM時代は鍵盤楽器のイメージが強かった新津由衣だが近年はギターもプレイしている。新津由衣自身が様々な楽器に興味を抱いているのとともに、周囲のスタッフも相当な楽器ファンではないかと想像できるのだ。この傑作『Wonders』を引っさげてのレコ発イベントが1月28日(土)下北沢GARDENにて開催されたのだが、その中ではバンドスタイルでのライブも披露。新津由衣はピアノ、オルガンなどの音色でCLAVIA Nord Electro2、ギターでEPIPHONE Casino EA-255(サブではアクアフィニッシュのDAN ELECTRO Model56もセッティングされていた)をプレイ。率いるバンドメンバーも豪華で、愛器SAGO Classic Style-JM Customを手に、新津由衣言うところの“森”のようなシューゲイザートーンを放っていた戸高賢史(ART-SCHOOL、Ropes)、相変わらずボトムの効いたベースプレイとコーラスを聴かせる林 束紗(SCARLET、THE GIRL、HINTO)、ウッディな暖かみのあるドラムサウンドを紡いでいたtachibana(te')がバックを支える。
まずはノードエレクトロ2のピアノ音色で「wonders」「ナイト・イン・サイダー」をプレイするが、新津由衣の表情にはちょっぴり緊張感を伴っている(後のMCで明かされるのだが、前日リハに向かうバス中で泣いていたというくらいだから、相当なプレッシャーがあったらしい)。しかし伸びやかな歌声は健在。事前にアルバムを聴いていた人の中にはバックトラックに同期を走らせるかと予想した方もいるかもしれないが、アルバムの世界観を踏襲しつつもややソリッドなバンドサウンドで魅せるアプローチである。全体的に戸高賢史のJMによるリフが肝となることが多いステージで、「スロウモーション・ファンタジーズ」(この曲超名曲!)で新津由衣はカジノでストロークプレイを奏でる。次の「首飾り」へのMC間を筆頭に、ギターのチューニングも自ら行なっていたのも印象的。「首飾り」エンディングの戸高賢史のギターソロも大きな観どころとなっていた。
「苦いコーヒーに溶けないでシュガーキューブ」ではノードでオルガンを奏でて、アルバムヴァージョンよりもレゲエビートが前面に出たバンドアレンジ。続いてはNeat'sバンドでアレンジしたという新曲も披露してみせる。逆回転のようなギターエフェクトの中、ローズピアノの音色が奏でられるちょっと浮遊感のあるバラードで、サビのファルセットのラインが胸に残る1曲だった。こういうシューゲイザートーンは戸高賢史の得意とする部分だろうが、指弾きによるワルツリフが放たれる「Command Z」においても、サビの展開劇ではやはり浮遊感あるスペーシーな空気が会場を包み込む。かと思えば、「ミス・クラウディの場合」ではドドンパリズムがオーディエンスの手拍子を呼び軽やかなムードへと一変。新津由衣は再びカジノで低音弦を刻み、サビでは林 束紗のコーラスも活躍していた。アルバム冒頭の印象的なギターリフが放たれる「BBB」も手拍子が起きて大盛り上がりである。彼女のカジノはドライブトーンでストロークを奏でていたと思う。シャッフル基調の「ロンリーズ」も今後のライブで重要な役割を果たしそうで、新津由衣はクラビアでオルガンサウンドを奏でていたが、エンディングではアグレッシヴな鍵盤さばきでも魅了。この辺り、これからライブの目玉になっていくのかも。本編最後は“今の自分にとって大事で支えとなる曲”という紹介で演奏された「0」。1カポでディレイトーンを紡ぎだす戸高賢史のプレイも目立っていた。そして何より新津由衣の柔らかで澄んだ歌声をじっくりと堪能。
やたら“シューゲイザー”と書いてしまったが、Neat'sのサウンドの節々には80年代後半〜90年代の英国ロックのエッセンスやオルタナフィーリングが感じられるのが実にツボで、それでいて70年代SSWの音の佇まいをも内包しているバランス感が本当に面白い。新津由衣がそれを何処まで意識的にやっているかはわからないけれど、ちょっぴり懐かしさを感じさせる未来感というか、その独特なサウンドスケイプは『Wonders』をヘッドフォンで聴くといつでも体験できる。本当にびっくりするくらい音が良い。なおこの夜のアンコールでは「曲がないのでもう一度同じ曲やろうと思います」と発言。新津由衣の「“森”お願いします」という呼び込みでまたも戸高賢史がシューゲイザートーンを巻き起こした「wonders」、♪シュワシュワ〜のサビがとにかくキャッチーな「ナイト・イン・サイダー」を再度プレイしてライブは終了。
たくさんのオーディエンスが詰めかけて盛況に終わったレコ発イベントだったが、3月からは初の全国ツアーが開催されることも発表された。まだまだ始まったばかりのNeat'sだけれど、2010年代の新たなポップミュージックの奇蹟を見せてくれそうな気配がたっぷりなので、ポップファンはまずはチェック! 自信持ってプッシュさせていただきます。
Neat's 1st tour 〜virgin show〜
2012年3月10日(土)17:30/18:00 大阪 心斎橋Pangea
清水音泉 066357-3666
2012年3月11日(日)17:00/17:30 名古屋 池下 CLUB UPSET
JAIL HOUSE 052-936-6041
2012年4月8日(日)17:00/18:00 下北沢 GARDEN
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
Neat’s『Wonders』
dada pop dada-1 3,000円
http://www.neatsyui.com/
※お詫びと訂正…2月2日発売Player3月号DISC REVIEW P.68のNeat’sの記事において、“RYTHEM”(正)の表記が“RHYTHM”(誤)となっておりました。この場をもって訂正させていただきます。
Text by KAZUTAKA KITAMURA
Live Photo by KAZUMICHI KOKEI
2012年2月7日