L to R:佐藤幸司(ds,per)、斎藤健介(g,key)
常に先駆的な感性とアイディアで日本のアンダーグラウンド・シーンをリードしてきたNINE DAYS WONDER(ナイン・デイズ・ワンダー)。海外ツアーも積極的に行なうなど、後続のバンドに与えた影響は計り知れない。バンド結成10周年を迎えたナイン・デイズ・ワンダーだが、近年は斎藤健介(g,key)のソロプロジェクトに推移しており、その名前を“9dw”と改めて昨年久々のアナログ・シングルもリリースしている。そしてこのたび満を持してのニュー・アルバム『Self-Titled』をcatuneよりリリースした。ナイン・デイズ・ワンダーにとって5年半ぶりとなるこの3rdアルバム、全曲が斎藤健介と佐藤幸司(ds,per/NXS)とのタッグを核にして録られている。完全なるインストゥルメンタル作品であり、クリーントーンのギター・サウンド及びヴィンテージ・シンセの透明感あふれる音世界が実に心地良い。そして何よりの聴きどころは人力グルーヴにこだわっている点で、ストイックなまでに必要不可避な音だけで勝負したサウンド。個人的には70年代クロスオーヴァー系の音楽に通じる魅力があると思う。とはいえ、レイドバック感は皆無であり、そこにあるのはヒップホップ、ブレイクビーツなどを通過したがゆえの現在進行形アプローチなのだ。まさに今現在の発想でしか構築することはできないエレクトロ・フュージョン! 老若男女問わず楽しめる音に仕上がっているのでぜひ御一聴いただきたい。
モバイル・サイト「PlayerギターLOVE」内のミュージシャンズ・ピックアップのコーナーでは、9dwからのメッセージとともに、斎藤健介によるギター・プレイ・シーンもアップ。『Self-Titled』のトップナンバー「stone and fruits」を披露してくれているのでそちらもチェックしてほしい。 ここでは動画撮影の際に行なったインタビューの模様をお届けしよ う。斎藤健介、佐藤幸司の御両人がたっぷり語ってくれた。
あえてプレイヤーとしての発想ではなくて
楽器をプレイしないビートメーカーの感覚で作る
『9dw(Self-Titled)』は久々のアルバムですが、この5年半振りの間にいろいろとあったようですね。
斎藤:前作(『with euphoria』)を出したのが2002年の秋くらいで、当時はリリースしたらすぐツアーに出る感じで、ヨーロッパを含めてツアーで回っていましたね。1年間ほどのツアーを終えた後にメンバーの脱退などがあったんです。その後で54-71とスプリット・シングルをリリースしたりもしたんですが、とにかくメンバーの脱退や交代にウンザリしたので(笑)、“とりあえず1人でやろう”って思ったんです。それが2007年の春頃でしたね。
『with euphoria』から踏襲されているテイストも一部分では感じつつも、『9dw(Self-Titled)』は大変化ですよね(笑)。
斎藤:ただ前のアルバムのツアー時に今回のアルバムのアイディアはできあがっていたんです。まだ形に残せるようなクォリティにはなっていなかったけど、徐々にライブでプレイするようにはなっていました。
完全なインスト・アルバムになった理由は?
斎藤:インスト・アルバムにしようと意識していたわけではなかったんだけど。ヴォーカルに関しても“インストだから歌わない”っていうよりは、自分の声も素材として考えるようになってしまって。今回のアルバムにヴォーカルを入れる必要性を感じなかったんです。作れば作るほど要らなくなっていって(笑)。
でもこの変化に従来のファンは驚きますよね(笑)?
斎藤:それを言ったら1stなんかはもっと違う違う内容だったからね(笑)。
アルバム出すごとに音楽性を変えないと気が済まない?
斎藤:いや、そういうわけじゃないんですけどね。あくまでもアイディア主体というか。あと参加しているメンバーはアルバムごとに違っているけど、その都度メンバーの長所や個性を入 れて作り上げるのがバンドだと思っていたので、その辺が凄く作用しているんでしょうね。ただ以前出した作品をなぞってその延長線上でやろうっていう意識はしたことないですけど。わりとそこは自分でもびっくりするところではあるけど(笑)、それも僕なんですよね。
佐藤さんは今回の9dwの変化をどのように見ていたんですか?
佐藤:健ちゃんとは14〜5年前にもバンドを組んでいる仲ですし、ナイン・デイズ・ワンダーを始める前から知っていますからね。当時聴いていた音楽も知っているしそんなに変わったとは感じられないんですよ。ニューウェーブやポストロック的なことをやっていた時期だったり、ハードコアな1stとかを聴くと出ている音そのものは変わっていってはいるけど、その中身に関しては変わっていないから、僕としては驚かなかったというのが正直なところでしたね。
へぇ〜。今回のおおもとの音素材などを聴いたとき、どんな印象を抱きましたか?
佐藤:「stones and fruits」を聴いたときは、逆に凄く嬉しかったんですよね。余計なものを削ぎ落としたというか、そのままを出してきているように感じたんです。リズムでもベースラインでも素直に健ちゃんの音が出ていたのが嬉しかったというのと、そこが“全然変わってないな”って思ったというか。とは言え驚いた部分もあって、それは7インチシングルで先行リリースされた「balancer」「black coffee」を聴いたとき。凄く新鮮で興味深かったし、それは僕の知らない一面だったから。
凄く人力のリズム・アプローチにこだわっていたり、例えば極力シンバルや手数を抑えたりとか、ドラミングが非常に印象的だったんです! リズム・アレンジは佐藤さんなんですか?
佐藤:半々って言うのが多分正しいのかな? 例えば今シンバルの話が出ましたけどいくつか理由として言えるのは、まずもらった素材のアレンジをそのまま僕が再現したことがひとつ。 あとは叩き忘れたみたいな(笑)。
えっ!?
斎藤&佐藤:(爆笑)。
ドラム録りのときにシンバル類はセットしていたんですよね?
佐藤:もちろんしていますよ。
いくらなんでも忘れたってことはないでしょう(笑)。意識しないとこういうアプローチにはならないですよね?
斎藤:(笑)。どの曲にも打ち込みで作ったリズムトラックは存在しているんです。でもやはり“生で叩こう”ということになったんですよね。リズムがかなりかっちりとしたトラックに対して“いかにマシンのように叩けるか?”ってことで、レコー ディングではリズムに凄い集中していたんです。だから「忘れた」って言われると“意外とそうなのかな?”って(笑)。
佐藤:僕自身、手数が少ないタイプのドラマーではないんですよ。反面、“どうにか何も叩かずに成立しないものか?”っていうのもドラムを始めた頃から自分の中にあったんです。今回絶好の機会だったし、チャレンジしてみたんですけど。でもこうして仕上がると、実際に成立していると思うんですよ。例えばフィルとかシンバルとかを入れたときに、“何故今叩いたんだろ う?”って疑問に思ったことが常々あって。条件反射的に小節の区切りで叩くとか、何か展開を付けるときにフィルインするとかありますよね? 意味のあるなしっていうのではなくて、そういうプレイを何となくやってしまってる無責任さが自分の中で疑問だったんです。“叩く、叩かない”って手癖はあんまり関係なくて、必要な音を必要なときに出すことを凄く意識しましたね。あとは“聴く側にイメージしてもらえるようなドラムだったらいいな”っていう。“シンバルが入っている気がする”とか“フィル・インが入ってる気がする”っていう捕らえ方をしてもらえたらと。
ストイックな作業だったんですね。
佐藤:いや、ストイックだとは思わなかった。凄く楽しかったですからね。
部分的に録ってエディットするやり方もありますが、基本的にドラム録りはフルコーラスで録っているんですか?
斎藤:基本的にはフルで録っていますね。それをエディットしたものも一部分ありますけど。
機材リストを見ると、ネギドラムにタマにラディッグ…といろんなメーカーのドラムを使用したようですね。
佐藤:そう言うと凄いスケールだけど(笑)、実際スネアを使ったのは1つだけだし、キックも正確に言うと4つ…。
なかなかキック4つは使い分けないですよ(笑)!
斎藤:(笑)。まる1年作業をしていた中で、だいたい3ヶ月に1度レコーディングしていたんですよ。最初の頃はプレイヤー とエンジニアの呼吸を合わせるための作業を込みで録り直しもあったりして、その都度必要な機材も変わってたんです。だから1回のセッションの中でいくつも機材を持ち込んだわけではなくて…。
曲に合っているセットを探していった?
佐藤:そうですね。最初に持っていったのはヴィンテージのラディックだったんですけど、キックのサイズが22インチでそのときの曲のイメージには合わなかったんです。それでスタジオ に常設してあったタマの20インチが良かったから使いました。でもレコーディングしていくにつれて、どうしても自分のドラムセットが使いたくなってしまって(笑)。ここ数年ネギドラムが欲しくてずっと探していたんだけどなかなか出逢いがなかったんですよ。ところがレコーディングが迫った時期にビーチ材の珍しい3点セットを見つけて、前日に購入してスタジオに運び入れたという(笑)。
これは運命ですね(笑)。ドラム・サウンドはどの曲も印象的で、サンプリングの元ネタに使いたくなるような仕上がりです。
佐藤:あ、それは結構意識してたんです。そういう風に聴いてもらえるような良い音だったり、グルーヴで録りたかった。
斎藤:キーワードとして、曲のベーシックがブレイクビーツっていうのはありますね。普通にプレイヤーとしてのアイディアだったら、リズムを繋げるためにタムを回したりベーシストならチョッパーを入れるところを、DJヤトラックメーカー的な発想で表現しているという。実際に楽器をプレイしないビートメーカーだったら感覚だけでトラックを作るわけですけど、僕らはプレイヤーだからリズムがどういう風に鳴るかがわかっている。わかっているけど、意図的にビートメーカー的に素材として捕らえようという。僕ら2人ともストリート・カルチャーの影響っていう共通項があるからなんでしょうけど、フュージョンを追求してアカデミックな方向に向かうっていうのは違うんですね。
佐藤:例えばリズムをプログラミングしていじくる作業は凄く参考になるところがあって。打ち込みって硬いリズムにならないようにベロシティを変えたり工夫するじゃないですか? マ シンのように叩くんだけど演奏しているフィーリングを持ったリズム・トラックというか。だから自分を機材に例えて演奏している感じですね。ビートメーカーのプレイヤー的ではないアプローチがショックだったし、でもそういうアプローチを自分の演奏に採り入れられようと試行錯誤したんです。
70年代のクロスオーヴァー系のテイストも魅力ですよね。
斎藤:もちろんジャズやフージョンを聴いて育ったからっていうのもありますけど、温故知新としてただスキル先行で演奏するだけではなくて、あくまで捕らえ方としてはさっき言ったような感覚ですね。結果からいえばそれが今やるべき形だとも思う。
楽器に関してもサンプル音源でなんとかしようというのではなく、なるべくヴィンテージ機材というか、実物の楽器を鳴らそうとする姿勢も伺えます。
斎藤:もちろんソフト・シンセっていう選択もあるんですけど、出来る限りハードで作っていますね。あと林田涼太(engineer,syn)さんがアナログ・シンセの博士みたいなひとで(笑)、彼の影響も結構大きいですね。シンセでもギター・アンプでもやっぱりヴィンテージ楽器のテイストを汲んでいるものが 好きなんですよ。
「balancer」などでシンセ・ベースの音のカッコ良さを再確認しました。
斎藤:うん、そこは必要以上にこだわりました。やっぱり曲作る人間としてベース・ラインだったりシンセ・パートを考えるのは楽しいんです。中でもシンセ・ベースは本当に聴いて欲し かったし、一番楽しく作業できたトラックですね。
基本的に斎藤さんの頭の中で鳴っている音楽を具体化するような作業だったんですか?
斎藤:“自分のイメージに近くなる”って確信したのはレコーディングの終わりの4〜5ヶ月くらいかな。ただその頃にはみんなが“こういう音になるだろう”っていうイメージがつくようになっていて、ほとんど話さなくてもコミュニケーションがとれるようになっていたんです。そこからどんどん詰めていきましたね。結果的に3ヶ月おきにレコーディングしていったのが良かったんだと思います。最初の頃は1からやり直しが多かったんですよ。BPMが微妙に速い気がして…。
佐藤:「BPMをもう1下げよう」とか(笑)。
一同:(爆笑)。
佐藤:ただ途中からはスタジオでのメイン作業はドラム録りだったので、本当に僕は時間をかけてやりたいようにやらせてもらえたのでありがたかったですね。ただそれに応えるだけの作業を3ヶ月でしていかなければならなかったんですけど。例えば同じフレーズを叩くにしても、イメージしているものが違うと同じフレーズでも変わりますから、“どんなイメージで叩くか?”っていうのを決めなければいけない。で、それが駄目だったら「お願いだから3ヶ月後にもう1度やらせてくれ」って(笑)。本当にそういう感じだったんですけど、それを受け入れてくれたので。
僕、「tony」のリズム・アンサンブルに衝撃を受けたんです。
斎藤:トニー・ウィリアムスが凄く好きで。
あ、そのトニーだったんだ(笑)!
一同:(爆笑)。
斎藤:彼のプレイでそれっぽいのがあって、それよりもBPM は全然速いんですけど(笑)。打ち込んでみたら最高に格好良くて“リズムだけでこれはイケる!”って思った(笑)。
佐藤:最初は1小節も叩けなかったんですよ(笑)。
斎藤:手足完全にバラバラだから(笑)。あのリズムからコード進行とかどんどん付けていったんですけど、肝がドラムなのは確かでしたよね。
「begin to sing for appetite」のシェイカーもフルコーラスちゃんと振っているんですよね?
斎藤:そこに気づいてもらえるとは(笑)。
佐藤:しかもクリックは聴いていないんです。フェンダー・ローズのトレモロの揺れに合わせて振ったんですよ(笑)。
レコーディングで使ったギターはHISTORY GH-SV Limited Editionだけ?
斎藤:そうですね。
あまり歪ませずに、なおかつハーフトーンで…っていうのを意識していたようですね。
斎藤:ギター以外のトラックがちゃんと役割を果たしていれば、ギター・プレイもそれと対等なくらいのバランスが良かったんです。アンプはほとんどマッチレス DC-30なんですけど、「migrant」に関してはフェンダー・ツインリヴァーブです。エフェクターはホットケーキを使いましたね。
Interview by KAZUTAKA KITAMURA
Thanks to CATUNE
9dw『Self Titled』
CATUNE catune-30 4月30日リリース 2,500円
9dw『Self Titled-EP』
CATUNE catune-29 4月30日リリース 1,050円
LIVE SCHEDULE
7月26日 金沢SOCIAL(石川)
8月2日 横浜FAD(神奈川)
8月17日 CROWBAR(徳島)
8月24日 代官山UNIT(東京)
9月25日渋谷O-NEST(東京)

