MARTIN MOTNIK×QUAGERO IMAZAWA×LARS LEHMANN
去る2007年12月9日、ドイツのジュッセルドルフ市近郊の街フィールゼンで、ベース・プレイヤーを主役にした『European BassDay 2007』というフェスティバルが行われた。今回はこのフェスの5回目にあたり、昨年に続いて日本からはBassninjaこと今沢カゲロウが招待され、そのソロ・パフォーマンスは観客の目を釘付けにした。『European BassDay』についての詳しいレポートは2月2日発売の『プレイヤー』誌3月号に譲り、ここでは本誌に収録しきれなかったベーシスト3人によるラウンドテーブルを紹介しよう。参加者は今沢カゲロウの他、マシンガンのようなスラッピングを得意とするいっぽう、『Bass Professor』というドイツのベース専門誌に寄稿もしているラーズ・レーマンに、タッピングやコード弾きなど、様々なテクニックを駆使してハード・ロックからマイケル・ヘッジズ風のソロまでこなすマーティン・モトニックという、2名のユニークなドイツ人ベーシストである。
■まずは、ご自身以外のお2人の演奏をご覧になった感想から伺いましょうか?
○ラーズ:カゲロウについては、『Bass Professor』のレビューにも書いたんだけど、クレイジーで先進的なスタイルと観ていて楽しいステージに感心したよ。マーティンはカゲロウほどクレイジーじゃないけど(笑)、時々目を引くようなことをやって、今までとは違う可能性を目指しているのが素晴らしいと思う。
○マーティン:カゲロウは、とにかくフレットレス・ベースのプレイヤーとして素晴らしいと思う。使いこなすのが難しいローランドのシンセサイザー・システムやディレイのループを駆使して、素晴らしいテクニックとテクノロジーを見事に組み合わせているのが印象的だったね。ラーズについては、僕は彼のことを“ミスター・サム”って呼んでいるんだ(笑)。マシンガンみたいなスラッピングは驚異的だからね。僕はスラッピングがあまり得意じゃないから、彼の演奏を観ると圧倒されるよ。
○ラーズ:ありがとう。でも、僕は基本的にサイドマンで、バンドの一員として演奏するのが好きなんだ。ジェイムズ・ブラウンのバンドやプリンスのニュー・パワー・ジェネレーションの元メンバーと2年間ツアーをしたこともあるけれど、そういう素晴らしい人たちと演奏するのは、何よりも楽しいからね。
カゲロウ:ラーズはヴィクター・ウッテンのイディオムなんかも採り入れているようだけど、それを独自のスタイルに昇華させているところが素晴らしいと思う。さっきも目の前で弾いてもらったけど、マーティンが言う通り、マシンガンみたいに凄まじいスラッピングだね。親指のアップ/ダウンは僕も時々使うけど、ラーズのようにはいかないな(笑)。マーティンの方は、まるでギター・プレイヤーみたいにメロディックなピック弾きが印象的だった。それにハーモニクス奏法やディレイを組み合わせて、フィーリングはロックだけど、より美しい世界を創り出しているね。
■影響を受けたアーティストについてもお話いただけますか。
○ラーズ:ロックから入った僕にとって、最初のヒーローはビリー・シーンだったけど、新生マハヴィシュヌに参加したジョナス・ヘルボーグにも影響を受けたし、僕がベースを習った先生が“ドイツのパストリアス”と呼ばれていたこともあって、ジャコも研究したんだ。その後ヴィクター・ウッテンを知って、アップ/ダウンのスラッピング・スタイルを勉強したけど、さっき話したファンクの人たちとの共演がきっかけで、ラリー・グラハムやルイス・ジョンソンなどの原点に近いファンクの人たちを研究した。あと、ジェフ・バーリンには、彼が設立したフロリダの音楽学校で直接師事したよ。
○マーティン:僕もラーズと同じく、最初はビリー・シーンが大好きで、デヴィッド・リー・ロスの『イート・エム・アンド・スマイル』と『スカイスクレイパー』の演奏は徹底的にコピーしたし、スティーヴ・ヴァイやグレッグ・ビソネットにも憧れたね。グレッグには2005年に僕のCD『ベース・インヴェイダー』に参加してもらったんだ。で、ロスの後はミスター・ビッグのアルバムを全部コピーして、ビリー本人とも何度か会う機会があったんだ。ベースの指板に自分でスキャロップ加工を施したのもこの頃だった(笑)。あと、ジョン・エントウィッスルのメロディアスなベース・ラインにも影響を受けたし、ラッシュのゲディ・リーも大好きだよ。
○カゲロウ:そういえば、ラッシュの曲をカヴァーしていたよね。
○マーティン:そう、「YYZ」をね。それから、カゲロウも言ったように、僕はポール・ギルバートやスティーヴ・ヴァイといったギタリストの奏法をベースに応用してもいる。もちろん、ベーシストでは他のスタイルの人にも目を向けていて、ジャコも研究したし、グレッグの弟のマット・ビソネットもよく聴いている。マットのソリッドなプレイは、セッションでベースを弾く時の良い手本になるんだ。
○カゲロウ:僕は情熱のこもった速弾きをするという意味で、ジョン・マクラフリンやジョン・コルトレーンを手本にしているんだ。ベース・プレイヤーではジェフ・バーリン、特に『ブラッフォード・テープス』の演奏は隅から隅までコピーして、15歳の時には彼のソロは全部口ずさめるようになっていたよ。
○ラーズ:そりゃすごいや(笑)。
○カゲロウ:あと、作曲家ではスティーヴィー・ワンダーが大好きだし、10代の頃にはキング・クリムゾンやEL&Pが大好きで、クリムゾンの曲を全パート譜面に起こしたりもしたよ。
■皆さん歳が近いこともあって、受けた影響にも共通点が多いですね。ところで、これを機会にドイツのベース事情についても伺いたいのですが。
○ラーズ:ウーン、どこでも同じだろうけれど、ベースで飯を食うのはけっこう大変で、仕事は何でもやらなきゃならない。僕は今でも時々、結婚式やパーティーでも演奏しているからね。誰かが引っぱり上げてくれるのを待っていても仕方がないから、あらゆる機会を捉えて積極的に自分の居場所を作り出し、良き音楽仲間を見つける努力をすることが肝腎なんだ。
○マーティン:僕もパーティーで演奏することはあるし、ベーシスト仲間の中にはベースを教えたり楽器店で働いたりと、音楽関連の別な仕事もしている人がいるよ。セッション活動としては、僕は自宅でレコーディングできる環境を整備して、インターネットでデータをやりとりしながら遠く離れた所の人たちと一緒に作品を作ることもある。僕のCDもそうやって作ったんだ。とにかく、いろいろ工夫しながら活動を継続することが肝腎だよ。
○カゲロウ:僕は年間250回ぐらいのペースでライヴをやっているから、何よりも健康に気を付けているよ。
○ラーズ:心身の自己管理はほんと、大事だよね。僕もなるべく毎日筋トレや瞑想をするようにしているよ。
○マーティン:ところで、ドイツの音楽シーンと言えば、ドイツで成功してから日本で成功しているロック・バンドがけっこう多いのは面白いよね。アクシスとかボンファイアーとか、フェア・ウォーニングとか…。
○カゲロウ:ああ、そうだね。
○ラーズ:何か通じるものがあるのかもね。
■きれいにまとまったところで(笑)、そろそろお時間のようです。今回はお忙しいところ、貴重なお時間を割いていただいてありがとうございました。
Text & Photo by AKIRA SAKAMOTO

