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2006年にコロムビアミュージックエンタテインメントより「シェフ/Message」でメジャ・デビューを果たした工藤慎太郎。「シェフ」が第39回日本有線大賞新人賞を受賞したことも記憶に新しい。今年9月には待望のファースト・アルバム『愛でいこうぜ!』がリリースされて、初のワンマン・ライヴ・ツアー「工藤慎太郎 Concert Tour 2007 愛でいこうぜ!」が全国8ケ所で展開された。大盛況の中迎えたツアーファイナルは12月5日(水)のSHIBUYA AX。またこの日はバック・バンドを従えてのちょっとゴージャスなライヴであった。
冒頭で披露したのは2ndシングルにもなった「声をなくしても」。まずはサビをアカペラで力強く歌い上げて、1コーラス目はピアノのバッキングだけで歌い、2コーラス目からバンドが入ってくるという構成。続いて「Squall」では軽快なストローク・プレイで歌い上げるなど、バラードからアップテンポ・ナンバーまでバラエティに富んだレパートリーを持っているのが彼の魅力。そしてそのひとつひとつがとてもメロディアスで歌心にあふれており、また何処か懐かしさが感じられるのが興味深いところ。
工藤慎太郎が使用していたのはテイラーのエレアコで、場面場面で指弾きとピック弾きを弾きわける繊細さが印象的。またカポを多用しており、「Film」での大サビでの転調ではカポ位置を瞬時に1フレット分ずらしたりと、ストリート・ライヴで培ってきたゆえのテクニックが随所で観られた。アルペジオ・プレイでメロディを紡いだり、「願い」ではギター・ソロを聴かせたりと、ギターの腕前もかなりのものである。
最初のMCコーナーでは「Jポップ界のプリンス、工藤慎太郎です」という彼らしいユーモアたっぷりの元気な発言も記憶に残ったが、凄くよく喋るひとなのでMCコーナーもライヴの観どころのひとつ。「シェフ」の演奏前ではまさにこの曲が生まれたエピソードを語ったり、ユニクロのCM曲としてもオンエアされている「君を想う」を歌う前には、“ヤンキー先生”の愛称でお馴染みの参議院議員・小澤一生氏がゲスト出演してふたりでトークを繰り広げたり、本編最後の「Message」では幼少の頃の母親との思い出話…楽曲ひとつひとつに豊富なエピソードが秘められているのも、工藤慎太郎のピュアなソングライティングゆえだと思う。
中盤では「桜予報」「Rhapsody In Summer」という2曲の新曲も披露された。「桜予報」は工藤慎太郎ならではのストレートなフォーク・ロック路線だったが、「Rhapsody In Summer」はちょっと大人っぽいボッサ・テイストで新境地を感じさせるもの。さらに未発表曲として十代の頃に作った「もうすぐ20才のDreaming Boy」もプレイ。先述の「シェフ」などとともに、ゲストのストリング・デュオ“クラスタシア”との共演で聴かせてくれた。
また、サプライズ・ゲストとして熊木杏里が登場する一幕も。先日の熊木杏里のライヴでは逆に工藤慎太郎がゲスト出演したのが話題になっていたが、「絶対にあとで怒られる(苦笑)」と言いながらもちょっぴり強引に彼女を呼び込んで、熊木杏里の「朝日の誓い」を工藤慎太郎がアコギでバッキングする本当にスペシャルな共演劇が実現した。実は二人の出逢いを遡るとかなり前になるようで、今年同じタイミングでユニクロのCMにお互いの曲が起用されたというのは縁があるというのか、いずれにしろちょっとびっくりな出来事。きっとお互いに感慨深い気持ちがあったのだと思う。意気もぴったりのようなので、またこのふたりでライヴとかやって欲しいところ。
この日は3rdシングル「願い/君を想う」の発売日であり、ライヴのラストで歌われたのも「願い」であった。エレキ・ピアノだけをバックにしっとりとプレイされたが、工藤慎太郎のエモーショナルで伸びやかな歌声の醍醐味がたっぷり味わえた次第である。この日のAXはスタンディング仕様でゆったり観られるライヴだったがお客さんは満杯。老若男女問わず幅広い年齢層のファンが熱い眼差しを送っていたのも印象的だった点。若きシンガーソングライターが産み出している、世代を越えたスタンダード・ナンバーは確実に多くの音楽リスナーに浸透しつつあるようだ。

