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空想委員会NEW EP『色恋沙汰の音沙汰』インタビュー

メロディアスでドラマティックなサウンドと、リアルな歌詞が魅力の空想委員会。最新EP『色恋沙汰の音沙汰』は、そんな彼ららしい独自の音楽性をさらに磨き込んだ魅力的な楽曲が並ぶ。『色恋沙汰の音沙汰』の「色恋狂詩曲」のMVは、恋愛シミュレーションゲームがプレイできる画期的な内容で、アップから約2週間で49万回再生を記録するなど、大きな話題となった。そんな新作の魅力について、空想委員会メンバーに話を訊いた…。

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より空想委員会の色を
色濃く出せた実感がある


 2016年は『大歌の改新』や様々なフェスに出演し、その勢いをさらに増した1年だったと思います。今年1年はどんな年になりましたか?

三浦:ライブの数が多く、人前で歌うことの経験を相当積んだ感触があります。どんな場所でも、どんな環境でも“空想委員会らしいライブ”ができる自信が付きました。それは、自分たちがやりたい事を貫き通すだけでなく、その場その場でステージにいる人間が考えて、臨機応変に立ち回れるようになりました。

 ニューEP『色恋沙汰の音沙汰』は、空想委員会らしい色彩豊かなサウンド、ちょっぴり切ない歌詞が味わい深い、魅力的な4曲が収録されています。完成させた手応えはいかがですか?

三浦:前作から、約8ヶ月振りのリリースということで、沢山のライブをやりながらもじっくりと作り込む事ができました。しかも、今作はメンバー3人、それぞれ作った曲が収録されたので、より空想委員会の色を色濃く出せた実感があります。今まで持っていた空想委員会の武器と、新たな武器を上手く融合できたなと。

 収録された新曲3曲は、独自の世界観を持ちながら、よりライブ感を強めたバンドサウンドにさらに磨きが掛かっているなと。曲作りを開始したのはいつですか? 今回、新曲は三浦さんの「色恋狂詩曲」、佐々木さんの「ロマンス・トランス」、岡田さんの「見返り美人」と、それぞれ1曲ずつ収録されていますが、なぜこの曲が選ばれたのでしょう?

三浦:ライブをしながら制作活動もしていたので、曲作りが始まったのがいつか明確にわからない感覚ですね。メンバー3人とも曲を作るので、それぞれのペースで曲作りを始め、その中から良いと思える曲を並べた結果、偶然にもそれぞれの曲が採用されたという感じです。やはり、メロディが良いかどうかが一番大事なので、そこはメンバーとスタッフで慎重に選びました。

 EPを通して空想委員会らしい個性で見事に統一されていますが、曲が完成してEPとして全体的なコンセプトとかは見えてきましたか? アレンジはどの様なイメージで?

三浦:EP全体としてのコンセプトは、全ての曲が出そろった後に決まりました。4曲とも恋愛がテーマの曲が並んだので、自ずとタイトルも決まりました。アレンジに関しては、特に統一性を持たせようとはせず、それぞれがやりたい事を自由にやったのですが、不思議と僕の声で歌が入ると空想委員会っぽくなるので、そこで帳尻が合いました。どんなサウンド・アレンジに挑戦しても、大丈夫だと言う自信が持てました。

 “恋”と“音”という表現において、常にオリジナリティがある空想委員会としては、この“色恋沙汰の音沙汰”というタイトルは非常に合点がいくものですが、なぜ今回このタイトルにしようと?

三浦:アマチュア時代とインディーズでやっていた時は、ほとんどの曲が恋愛の曲でした。それは、単純に私の興味がその一点にあり、恋愛で感じた事を曲にしたくて音楽を始めたんです。でも、去年の夏くらいから、歌にしたくなるような“心の動き”がなくなって、恋愛の曲を作れなくなったんです…でも今回、久しぶりに恋愛に関する歌詞を書きたいなと自然に思えたので“近頃、音沙汰がなかった私の色恋沙汰が集まったCDですよ”という意味で付けました。やはり、バンドなので音で色恋を表現したいという想いも籠っています。

 「色恋狂詩曲」は、ハイノートのボーカルに躍動感溢れるグルーヴのイントロから大胆にテンポチェンジからAメロが始まり、疾走感溢れるナンバーに仕上がっています。この曲はどんなイメージで完成させたのでしょうか?

三浦:元々、僕のアコースティック・ギター弾き語りのデモがあったのですが、それをギターの佐々木がアレンジしました。テンポチェンジに挑戦しようと決めていたらしく、一ヶ月くらいかかったそうです。歌詞は最後にのせましたが、テンポチェンジが感情で動く様子に似ていると感じたので、曲の中で気持ちが変わっていく、ああいった歌詞になりました。サウンドに引っ張られて歌詞ができましたね。

空想委員会_ライブ写真_20160922_02.jpg
これからも空想委員会らしく
一歩ずつ進んでいきたい!


 「色恋狂詩曲」のMVは、恋愛シミュレーション型の斬新なアイデアが織り込まれており非常にインパクトがありましたが、なぜこの様なMVを作ろうと? 約2週間で49万再生を記録しましたが、その反応を受けていかがですか?

三浦:このような形のMVを作ろうと考えたのはスタッフチームです。MVを見た人が面白がって何回も見てくれるようなMVにしたいという想いで考えてくれたそうです。再生回数の多さは過去のMVに比べてとても多く、それだけ沢山の方が、興味を持って見てくれているのだなと感じて嬉しいです。ゲームの要素もあるので、何回も見てくれている人もいるからこそ、この数字だと思います。せっかく沢山の方が知ってくれたので、この曲をライブでかっこ良く聞かせたいなと気合いが入ります。
 シンセの太いサウンドからダンサブルなビートが絡み合う「ロマンス・トランス」は、ライブでも非常に映えるナンバーだなと。『ダウトの行進』でも「ワーカーズアンセム」のようにダンサブルな曲がありましたが、この曲や「色恋狂詩曲」というEP前半は、ライブ感溢れるグルーヴが非常に強く描かれているなと。なぜ今回こういうアプローチになったのでしょう?

三浦:作曲した佐々木曰く、「ギターロックにEDM要素を取り入れたかった」そうです。空想委員会がインディーズ時代に出したCDに入っている「空想ディスコ」という曲があるのですが、それのパート2のようなイメージでライブを意識して作ったと言っていました。やはり、佐々木が作る曲はライブをイメージしているものが多いので、自ずとライブで客席のみんなが踊れるようなアプローチが増えるのだと思います。

 「見返り美人」は実に空想委員会らしい、疾走感溢れるビートと切ない歌詞が印象的なナンバーですが、この曲はどのようなイメージで完成したのでしょう? 

三浦:岡田曰く「曲を聴いて風景をイメージさせたい」ということでした。フルートの音が入っていて、今までの空想委員会とはまた違ったアプローチだと思います。アレンジやサウンドに関しては、岡田のイメージに沿って作っていきました。みずみずしさや爽やかさは、岡田が狙っていた「センチメンタルな気持ちにさせたい」というのが成功した証拠だと思います。

 「上書き保存ガール」は、アマチュア時代からの人気曲ですが、なぜ今回再アレンジ&レコーディングしようと?


三浦:バンド史上初めて“リクエスト・ワンマンライブ”をやったんです。事前に聴きたい曲を投票してもらって、その中の人気曲を演奏するライブだったのですが、「上書き保存ガール」は結構上位の方いて驚きました。アマチュア時代の曲ですし、YouTubeにMVがあるだけでCD自体は廃盤になっているにも関わらず、聴きたいという方が多いというのを受けて、このような形で収録する事になりました。

 通常盤には、人気曲「波動砲ガールフレンド」のアコースティック・バージョンが収録されていますね。

三浦:ボーナストラックで一曲入れようという案が出たので、どうせやるなら新しい事に挑戦しようということで、このような形になりました。私がインストア・イベントで弾き語りをよくやっていたので、最初は「弾き語り」という案もあったのですが、せっかく3人組のバンドなのでアコースティックのバンドの形にしました。元々、ギターの佐々木はこういうアプローチのアレンジをやってみたかったそうです。

 初回限定盤には、「色恋狂詩曲」のMVと、特典映像として『空想野外大音楽祭』のスペシャル・セレクション映像が収められています。本映像の見所を教えて下さい。

三浦:空想委員会史上最大キャパのライブですし、何よりも、やはり野外であるというところが一番の魅力で、ライブ当日は雨が降ったのですが、それすらも演出に見えるようなライブにできたと自負しています。その時の“ライブの熱”を感じて欲しいです。野音だからこそ、雨だからこそできたライブだと思います。

 「色恋狂詩曲」のように三浦さんのボーカルはよりエモーショナルさを増していますし、「ロマンス・トランス」のように歌詞に背中を押すポジティブなメッセージを感じます。ボーカルや歌詞でどういった気持ちを込めましたか? 使用したギターとアンプとエフェクターを教えて下さい。

三浦:曲作りを始めた頃から歌詞は一貫して実際に自分が体験した事を歌っています。そこは全く変わっていないですが、ポジティブなメッセージを歌うようになったのは、自分が置かれている環境が変わってきたからだと思います。ライブ会場に空想委員会を見に来る子たちの希望のような存在になりたいという想いがあるので、「現状」と「その先」を歌いたいモードなんだと思います。そういう状態なので、歌詞に引っ張られて、歌も変わってきているのかもしれません。より自分の気持ちに正直になれている証拠だと思います。使用したギターはギブソン・ソネックス180カスタム、アンプはフェンダー・ツイン・リバーブで、ライブと一緒ですね。ギターはピックアップとネックを交換しています。

 佐々木さんのギターは、「ロマンス・トランス」エッジの効いたリフや「見返り美人」のカラフルなアルペジオなど、よりその存在感を増しているなと。どんなイメージで今回の楽曲をプレイしましたか? 聴きどころがあれば教えて下さい。

佐々木:「ロマンス・トランス」は自分作曲なんですが、ライブ映えする曲が作りたかったのと、ライブで盛り上がる「空想ディスコ」という曲があるのですが、そのバージョン2的イメージで作りました。シンプルなコードと構成、ライブ映えさせる為に、踊り易いようにシンプルなEDM要素を入れました。「見返り美人」は、外部の音でフルートの音など入っているので、邪魔せずけど自分の色をしっかり出せるようにフレーズを考えました。この曲のギターの聴きどころはやはりギターソロですかね!(笑)両曲とも、ギターはメインで使っているフェンダー・テレキャスター・アメリカンデラックス、アンプはマーシャルJTM45、エフェクターはオーバーゾイドのオーバードライブ、ケンタウルス、DD-20、ライン6のMM4です。

 「色恋狂詩曲」や「見返り美人」のように、岡田さんのベースは凄く躍動感溢れとても心地良いです。特に8ビートのノリが本当に気持ちよくなったなと…。

岡田:僕のベースの聴きどころは、ずばり歌やギターとの絡みです! ベースは、ドラムとの絡みはもちろん大事ですが、僕の場合ギターや歌との絡みもかなり気にしています。自分のベースは今どこのパートを引き立てるべきか? もしくは、今は自分が主役に出るべきか?とか、1曲の中でその時、その時の自分の役目をかなり考えます。レコーディングに使用したのは、フェンダーのジャズベース、エデンのヘッドとキャビ、エフェクターは「見返り美人」はなしで、「色恋狂詩曲」はアンペグのSCR-DIとサンズアンプです。

 今年も、さらに大きな躍進を遂げること間違いなしの皆さんですが、最後にファンへのメ
ッセージをお願いします。


三浦:これまで、沢山のライブをしてこれたのは、会場に足を運んでくれる皆さんがいたからです。どんなライブでも空想委員会らしく、演奏できる自信が付きました。ありがとうございます。今年は、応援してくれる皆さんをもっと大きなところに連れて行けるように、頑張りたいと思います。空想委員会らしく、一歩ずつ進んでいきますので、一緒に歩んで欲しいです。よろしくお願いします!



Interview by TAKAHIRO HOSOE
Live photo by YUKI FUJIMORI



イロコイザタノオトサタ
キングレコード 発売中
空想委員会_色恋沙汰の音沙汰_初回限定盤_メインJ写_1600_1600.jpg
初回限定盤(CD+DVD) KICM-91739 1,800円(税抜)


空想委員会_色恋沙汰の音沙汰_通常盤_1600_1600.jpg

通常盤(CD) KICM-1740 1,200円(税抜)



『首謀者:空想委員会「大歌の改新」第3期』
1月20日(金)大阪BIG CAT
1月21日(土)名古屋Electric Lady Land
1月26日(木)赤坂BLITZ
[問] kusoiinkai.com/


ブルース新作を完成したストーンズ! KEITH RICHARDS SPECIAL

THE FRIENDSHIP of K.R. with E.C.

前作から11年振りになるザ・ローリング・ストーンズの新作『ブルー&ロンサム』が発売された。メンバー平均年齢71歳を超えて新たにレコーディングしたのは、60年代英国のギタリスト達に浸透し、まさにストーンズ〜キース・リチャーズのルーツである“ブルース”カバーだ。そのレコーディングには、やはりブルースとギターを通じてキースと交友を続けるエリック・クラプトンも参加。その交友を軸に、バンドのギタリストであり続けるキース・リチャーズ特集を掲載!

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■THE FRIENDSHIP of K.R. with E.C. Story
デビュー前からストーンズのメンバーと交流が始まったエリック・クラプトン。その後、現在まで続くキースとエリックの交友を辿る!

■1985 KEITH RICHARDS Interview
キース・リチャーズの伝説的武勇伝が広まった80年代。1985年に行なわれた単独アーカイブ・インタビューを掲載。キースの会話を丸ごと収録したインタビュー音声も特別付録CDに収録!

■BROWN SUGAR Lecture Talk
エリック・クラプトンが参加した「ブラウン・シュガー」のオルタネイトバージョンを、カバー再現した大槻啓之氏に訊く。カバートラックは特別付録CDに収録!

■K.R. TERECASTER“MICOWBER” Crose-up
1970年12月、キース27歳の誕生日にエリックから贈られたブラックガードのテレキャスター。ミカウバーを徹底追及してみた!

■特別付録CD収録コンテンツ
1.BROWN SUGAR Lecture Track
2.1985 KEITH RICHARDS Interview Audio


ブルースとエレキギター。現代ロック黎明期の1960年代後半ブリティッシュシーンからキース・リチャーズとエリック・クラプトンの交友は始まった。その軌跡を映像で辿ってみると・・・

ストーンズが企画したTVショー『ロックンロール・サーカス』は、1968年に収録されたものの長年お蔵入りになっていた(現在はオフィシャル映像が発売されている)。そこで結成されたスーパーバンドがダーティ・マックで、メンバーはジョン・レノン(vo,g)、キース・リチャーズ(b)、エリック・クラプトン(g)、ミッチ・ミッチェル(ds)の4人。そしてビートルズの「ヤー・ブルース」を演奏しているが、このときキースはベースを担当している。


こちらが80年代に制作されたチャック・ベリーのドキュメンタリー映画『ヘイル! ヘイル! ロックンロール』(87年)でのリハーサル風景。キース、エリックとチャック・ベリーのセッションの様子がわかる。


こちらは2013年にNYマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれた「クロスロード・ギター・フェスティバル」にサプライズ出演したキース・リチャーズ。エリックの定番曲でもある「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」で共演。


そして、こちらが今回レクチャーカバーして特別付録CDに収録した、エリック参加の「ブラウン・シュガー」。2015年に発売された『スティッキー・フィンガーズ〈デラックス・エディション〉』にオフィシャル収録されているが、ちなみに「ブラウン・シュガー」はシングル・モノバージョン、アルバム・ステレオバージョンでテイクが違い、このエリック参加バージョンを含めると少なくとも3バージョンがあることになる。バッキングがキース、ソロはミック・テイラー、エリックはスライドギターをプレイしている。



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ザ・ローリング・ストーンズ ブルー&ロンサム ユニバーサルミュージック 12月2日 UICY-15588 1CD 2,500円(税抜) UICY-78026 DX盤 7,000円(税抜)

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17.2月号(12/29発売)のカバーストーリーで掲載

『愛蔵版 THE COLLECTORS Gear Book』発売します!

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 祝デビュー30周年!を迎えて、3月1日に日本武道館でデビュー30周年公演を行なうTHE COLLECTORS
 デビュー以後、オリジナリティたっぷりのバンドサウンドでモッズシーンをリードしてきた彼らですが、常にアップデートされてきたそのバンドサウンドは彼らの卓越した演奏技術によるものなのは言わずもがなですが、同時に一貫してこだわり続けてきた楽器もまたその大きな要因でした。

 リーダーの加藤ひさしは国内屈指のTEISCOコレクターとして著名であり、メンバーの古市コータロー、山森JEFF正之含めて、FENDER、GIBSON、GRECO、MARSHALL、RICKENBACKER、VOX、XOTICなどを愛用しているユニークなバンドです。『愛蔵版 THE COLLECTORS Gear Book』は、日本を代表するモッズバンドである彼らの現在の楽器コレクションを網羅した内容になります。また、2016年より参加しているドラマー古沢cozi岳之が所有するヴィンテージLUDWIGビスタライトを筆頭とするドラムセットも紹介。掲載楽器数はギター、ベース、ドラム、鍵盤楽器、アンプなどざっと120カット以上。Playerならではの切り口による詳細な解説記事により、THE COLLECTORSが所有する貴重な楽器コレクションが明らかになります。数ある楽器誌の中でもPlayerにしか作れない一冊です。

 もちろん4人のエクスクルーシインタビュー、ソロインタビューも豊富に盛り込んだTHE COLLECTORS初のギアブックとなります。表紙などのメンバーの写真は写真家・大谷十夢治さんが新たに撮り下ろしました。さらには最新のライブ写真で構成しますが、掲載されるすべての写真がPlayer撮り下ろしです。
 レアな黎明期の国産エレキギターがお好きなギターファンなどにも注目してもらえる資料価値たっぷりの本となります。

※発売日は日本武道館公演に間に合わせるべく、2月28日(火)! 販路の予約受付について急いで進めているのですが、
年末時期ということもあり一部お店まで情報が行き渡っていない箇所もあります。予約期間は充分設けておりますので、その場合時間をみて楽器店、書店さんにお問い合わせいただければ幸いです。
 
 鋭意制作中ですのでどうぞご期待下さい。

[体裁]
タイトル : 音楽雑誌Player 別冊『愛蔵版 THE COLLECTORS Gear Book』
発刊 : 株式会社プレイヤー・コーポレーション
    〒160-0023 新宿区西新宿7-22-39 興亜ビル9F ☎03-3363-6955
体裁 : A4サイズ 132頁(カラー/モノクロ)
企画・編集・制作 :「Player」編集部
発売:(株)プレイヤー・コーポレーション(楽器店、HMVなど)
   (株)メディアパル(書店さんの場合はトーハン複合第二事業部MVPブランドグループが窓口となります)
発売日:2017年2月28日(火)
本体価格 :3,600円(+消費税)/3,888円(税込価格)
部数 : 限定3,000部(発売後、電子書籍販売を行なう可能性もあります)
販路 : 楽器店/書店/ローソンHMV/ディスクユニオン/Player On-Line
予約締切:2017年2月13日(月)
※予約締切後も在庫があればバックオーダーを受け付けます。

バンド体制になったいちむじんの山下俊輔が新作『StillMotion』を語る

 山下俊輔と宇高靖人によるギターデュオ、いちむじんが新メンバーを迎え6人編成のバンドとして、最新作『StillMotion』を完成させた! ギターデュオの緻密なアレンジから、様々な楽器が加わることで生み出されるドラマティックな曲展開まで、今回いちむじんが提示した音楽には“無限の可能性”を感じさせ、日本人としてどこか“懐かしさ”を感じるメロディが強く心を打つ。11月に宇高の脱退が発表されたが、今回の『StillMotion』を聴く限り、彼らの音楽はこれからも変わらず多くの人達を魅了し、癒してくれるだろう。いちむじんの“キーマン” 山下俊輔(g)に、新作の魅力とバンドの今後について話を訊いた…。

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日本人だからこそグローバルなバランス感がある

 インタビュー初登場ですので、ギターを始めたきっかけと、影響を受けたミュージシャンを教えてください。ギターを始めたのは高校生の頃だったとか?

 ギターを始めたきっかけは中学校の頃。バンド・ブームがあり、特にヴィジュアル系の全盛期でGLAY、LUNA SEA、L'Arc〜en〜Ciel、SHAZNA、その他のJポップなど、ジャンル関係なく沢山聴いていました。当時、洋楽はあまり聴いていなかったです。そんな中、エレクトリック・ギターを親父に欲しいと言うと、『不良になるきいかん!』と言われ、アコースティック・ギターを中2の時に買ってもらったんです。その時からコードは弾けていましたね。クラッシック・ギターは、たまたま行った高校にクラシック・ギター部があり、そこで運命の出会いがありました。僕の恩師、松居孝行先生です。ここから、人生が大きく変わりました。影響を受けたミュージシャンは松居孝行さん、佐藤紀雄さん、山下和仁さんですね。

 新作『StillMotion』の「ZIPANGU」のように山下さんは、クラシック音楽をバック・グラウンドとしたアレンジや曲や演奏の構成美に独自の個性を感じます。普段曲作りやアレンジはどのようなイメージを描き、形にしていくのでしょうか?

 大学に入り、どっぷりクラシック音楽にハマりました。クラッシックは“一生辿り着けない迷路”を少しずつ解いていっている感覚で、飽きがこないんです。答えのない人生と同じ感覚。「ZIPANGU」は、そんなクラシックの感覚をほんの一部分抜き取った曲です。曲のイメージは“海外から見る日本の風景と精神”です。それを、鼻歌で口ずさみメロディを書きました。2011年から毎年海外での公演をしており、世界の人々とのコミュニケーションの中で、日本のイメージを聞いて浮かんで来た色を和音にしました。日本人だからこそ、グローバルなバランス感のある柔軟なイメージだと思います。それがいちむじんかと。

 新たなメンバーを迎えた新作『StillMotion』は、アンサンブルがより色彩豊かになり、実に聴きごたえがありました。その中で、16年11月に宇高さんの脱退が発表され、多くのファンが驚いたと思うのですが、その経緯をお訊かせ下さい。

 昨年、宇高から「いちむじんを卒業したい」という相談を受けていました。自分は、ずっと2人でやってきたので、まさか終わりを迎えるとは思ってもみず…ただ、宇高から「もっと音楽を通して幅広い活動をしていきたい」と言われ、なるほどなと思いました。クラシック、ギターデュオ、ジャンル、色んなことの固定概念に縛られていたんだなと。ファンの皆様、応援して下さっている沢山の人達には、大変なご迷惑を御かけ致しました。申し訳ない気持ちで一杯です。お互い違う形ですが、前を向いて頑張りますので、これからも応援よろしく御願い致します。

 前作『恋むじん』では、ストリングスやサックスなどが加わっていました。それを踏まえると、本作でバンド形態になったのも非常に合点がいくのですが、なぜバンド形式にしようと?

 10年リリースの『TOMA』で、初めて他の楽器をアンサンブルに加えてCDを作りました。音楽監督は、今回と同じ住友紀人さんです。住友さんとは11年のお付き合いがありまして、その時から、「作曲をしたほうが良いよ。もっと自分達の色が出るから」とアドバイスをもらったんです。『TOMA』から、自分達で作曲を初め、この6年でイメージが膨らみ、今頭で鳴っている音はギターだけではなくなっています。3年前から、グラミー賞を取るためには“頭にある音を表現しないといけない”という思いになり、今年10周年を迎えるタイミングにバンドになりました。今年は色々重なっていますね(笑)。

 今回新加入した鳥越啓介(b)さん、永田ジョージさん(pi)、白須今さん(vi)、渡辺庸介さん(per)はどういった経緯で加入したのでしょうか? 山下さんは、この5人のメンバーの演奏面や音楽性、人間性にどのような魅力を感じるのでしょうか? また彼らは新作『StillMotion』にどのような変化をもたらしましたか?

 僕が接触した順番は白須、永田、鳥越、渡辺になります。皆共通に言った口説き文句は、「グラミー賞を取りましょう。」です。最初に浮かんだ楽器がヴァイオリン。メロディを華やかにし、そして癒しを加える…という事で“アドリブができ、うるさ過ぎないヴァイオリン、作曲ができ、イケメン”というキーワードで検索した結果、白須が全て当てはまり誘いました。実は、共通の知り合いが伊勢神宮で宮司さんをしており、11年前に一度会っているんです。僕は覚えていなかったのですが(笑)。白須の魅力は音程がとにかく良く、気持ち良い音を奏でること。そして、どのヴァイオリニストにもない、ファンタジーな曲を書けることです。今後、いちむじんの可能性をかなり広げてくれるんじゃないかと思います。永田は、白須からの紹介で音源を聴き、とても良い心地の良いピアノで癒され、ギターとのデュオでもバランスが良いと思い、会う約束をしました。会って話をした時“この人は人が良過ぎるから、こんな綺麗な音、他の楽器の邪魔をしないアンサンブル力があるんだ”と思いました。帰国子女という事もあり、英語は完璧! 超エリートサラリーマンを経てのピアニストという、異質なプロフィールにも惹かれています。鳥越は、もうミュージシャンの中で知らない人はいない程、有名なベーシスト。最近、周りからは「よく鳥越さんを捕まえられたね」と言われます(笑)。彼のベースとコントラバスを聴くと、ハイポジションを迷いなく弾き音程が完璧。ある時は、ギターのようにラスゲアードをして、スケールを弾きます。オールジャンル弾ける引き出し、アイデア。僕は“日本一のベーシスト”だと思っています。今は、毎回の本番が楽しみでしょうがないです。渡辺は、鳥越さんと一緒にドラムも叩けるパーカッションを探していてライブに2人で行き、その日にすぐに口説きました(笑)。スウェーデン仕込みのタンバリンの使い方、民族音楽をやっているリズムパターンの多さと、合いの手いれるセンス、抜群です! 京都出身という事もあり、トークも軽快でイジりやすいです(笑)。『StillMotion』を作るにあたって、新メンバーが入った事で、僕の頭の中にあった音以上の色合いが出たんです。それが個性的だけど、重なりあっている。今回は永田と渡辺のオリジナル曲はないですが、みんな共通で持つ日本音楽、ワールド・ミュージックという“芯”があるからこそ、時間のない中でも素晴らしいアルバムが出来たのだなと。

 12月11日には、この6人体制で最後のライブが行われました。チケットもソールドアウトという盛況ぶりでしたが、このライブに対するご自身の手ごたえや、お客さんの反応はいかがでしたか?

 今までのいちむじんにはないインパクトを皆様感じて頂けたようで、次回への期待感がかなり凄いです。自分としては、このバンドの中で、これからギタリストとして“クラシック・ギターで何ができるか?”ということ。そして、クラシック・ギターの魅力も追求していくのはもちろん、それ以外のギターにも挑戦していきたいと思っています。

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オンリーワンのジャンルいちむじんを創りたい

 『StillMotion』についてお訊かせ下さい。本作の楽曲はいつ頃に完成したものなのでしょうか? 

 13年から書いていた曲を集め形にしました。なので、この編成でなるべくしてなった音楽を作っていたんだなと改めて思いました。

 ユニゾンがスリリングな「LA DANZA DE LA PASION」、お2人のギターの美しい絡みが味わい深い「万華鏡」など、現体制の集大成となる楽曲が並んでいますね。アルバムを制作する際に見えてきたトータル的な世界観やイメージってありますか?

 まずは“日本らしさ”が入っていること。これは、これはからも変わらないと思います。今回もですが、やはりジャンルに捉われない“オンリーワンのいちむじん”を確立していきたいと思っています。そのためには、沢山の人に知ってもらう必要があると思っています。

 7曲で住友紀人さんが編曲を手掛けていますが、なぜ住友さんを起用しようと? 住友さん作曲/編曲の「I WISH I COULD」についてコメントを下さい。

 まずは、メンバー皆が信用できる人を音楽監督に立てたかったから。デビュー前から、いちむじんを見て、聴いて頂いている住友さんだからこそ、このアルバムを作るにあたり託しました。「I WISH I COULD」は、11年の終わりにいちむじんの為に書いて下さっていた曲です。今思えば、この為に書いていたのかと…予言者ですね(笑)。クラシック、ジャズ、スパニッシュの要素が入っている、いちむじんが最高に輝ける曲だと思います。

 なぜアルバム・タイトルをStillMotionにしたのでしょうか?

 今年の春頃、友達と飲んでいて「変わらずに変わる」という言葉が自分の口から出てきて“これは使えるなと!”。それを永田に英語にしてもらいました。

 「ZIPANGU」は、山下さん独自の楽曲の構成美が冴えるナンバーだなと。この楽曲はどんなイメージで完成させたのでしょう?

 “海外からみる日本”。冒頭は三味線、琴がトゥッティーでなっていて、AとBメロは“大陸を横断しているイメージ”です。中間部は、“妖艶な女性が桜満開の中で舞っているイメージ”。最後は“全てが混じり合い、世界がひとつになっている感覚”です。東京オリンピックで使ってもらえる曲をイメージしました。

 「LA DANZA DE LA PASION」は、テクニカルな3声のユニゾン、渡辺さんの切れ味鋭い打楽器など、いちむじんの新たな側面を描き出したナンバーだなと。

 ギターにとっては運指が難しく、簡単には弾けない曲ですね。これからライブをしていくうちに、どんどんテンポも上がり、よりスリリングになっていくと思います。ずっと弾き続ける中で、この曲はライブでどんどん進化していく曲です。

 「万華鏡」は、いちむじんらしいギターのコンビネーションと、1:53から広がりのあるアンサンブルなど、デュオからバンド編成に変化する情景が味わい深いナンバーです。音数を抑えたアレンジというのは、決して簡単ではないですが、どう言ったイメージでこの楽曲を完成させたのですか?

 来年の京都で行われる『世界万華鏡大会』のテーマ曲として書きました。やはり、京都でやるという事で“日本らしい色”を全体に入れました。中間部のパートは、住友さんと鳥越さんのアイデアで、万華鏡の中に入っていっているような感覚で作ってもらいました。お2人のお陰で、より万華鏡らしいイメージになりました。

 鳥越さん作曲の「三春」は、現体制のいちむじんというバンドの可能性を定時した印象的なナンバーだなと。

 この曲を聴いた時、鳥越さんを絶対入れたいと思いました。いちむじんにも、このような曲で「紫陽花」「ひだまり」「かけら」があり、同じ感覚があるなと。因みに、白須の曲にも「おかげさん」という同じ雰囲気の曲があり、次回に入れたいと思っています。

 ラテン・ジャズの影響を感じる「リンゴ追分」、マイナーな世界観が切ない「あなたの港」が収録されていますが、なぜ日本の情緒溢れる楽曲をカバーしようと? アレンジで心掛けたことは?

 いちむじんというグループが、世界で活躍するためにやはり“日本人らしさ”は必須なんです。それをどう調理できるか? 「リンゴ追分」は、早く海外で弾きたいですね。ビックリすると思います。「あなたの港」は、今年紅白に出場される演歌歌手、市川由紀乃さんのために書いた曲。ギター・アレンジもいけると思い入れました。とある人に、演歌と伝えず聞いてもらったら「アンダルシアの曲ですか」と聞かれましたね(笑)。

 本作で山下さんが使用したギターは?

 高知のギター製作者、川田一高さんの“いちむじんスペシャル”です。高音の伸びと、低音と重低音の響きが大好きです。

 「万華鏡」の1:56以降で展開されるアンビエントな音の広がり、「I WISH I COULD」のアコースティックの繊細なサウンドなど、アンサンブルの音色にも非常に拘りがあるなと。レコーディングで拘った部分は?

 いつも思っていますが、日々イメージはギターの音以上に頭の中にあるものを浸透させているんです。そして、音楽監督の住友さんとエンジニアの中村さんのアイデアも入って、いちむじんになって出来た最高の音楽ですね。

 インストゥルメンタル・バンドとしてさらに進化を続けるいちむじんですが、今後バンドにとってどんな位置付けになる作品になるのでしょうか? そして、いちむじんというバンドが今目指すゴールとは?

 このアルバムをきっかけに、音楽好きの方に聞いて頂けるチャンスが増えたと思っています。今までは、クラシック・ギターのファン、クラシック・ファンを中心に届いていたと思うので…拘りを持たずに日々チャレンジし、オンリーワンのジャンルいちむじんを創りたいですね。目標はグラミー賞。その後、世界を周って、沢山の人にいちむじんの音楽を通して、自分達の価値観を共有出来たら幸せだと思っています。

 17年3月からStillMotionのツアーがスタートします。最後に、ツアーに対するコメントをお願いします。

 5人になって初めてのツアーになりますが、今は楽しみでしかないです。毎日違うアレンジと空気感、そして未来目標を叶えていく、いちむじんをぜひ見て聞いて頂けましたら幸いです。何の用意もいらないです。ぜひ飛び込んで来てください!

Interview by TAKAHIRO HOSOE


ジャケ.jpg
イチムジン
スティールモーション
キングレコード CD KICS-3440
発売中 3,000円(税抜)




いちむじん「StillMotion」ツアー
3月7日@BLUES ALLEY JAPAN
3月17日@名古屋BLUE NOTE
3月18日@NHK文化センター京都教室
3月20日@大阪ROYAL HORSE
[問] https://www.ichimujin.com


SHOKA OKUBO BLUES PROJECT 初の母校凱旋ライブ!!



力強いボーカルとエモーショナルなギターが魅力の実力派女性ギタリスト、大久保初夏。12月6日(火)、彼女が自身のバンドSHOKA OKUBO BLUES PROJECTで、母校である昭和音楽大学で初の凱旋ライブを行う。SHOKA OKUBO BLUES PROJECTは、大久保、其原誠元(ds)、芹田珠奈(b)のトリオ・バンドで、圧倒されるパワフルな歌声、迫力あるドラムとベース。3人の音が重なり生まれる独特なグルーヴが持ち味。今回は、昭和音楽大学講師であり実力派ギタリストの末原康志がゲスト参加し、ブルース、ロック、ルーツミュージック・ファンはもちろん、多くの音楽ファンが楽しめる白熱のライブになること間違いなし!

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[日時]2016年12月6日(火)19:00開演(18:30開場)
[場所]昭和音楽大学北校舎5F第一スタジオ・リリエ
[出演]SHOKA OKUBO BLUES PROJECT 大久保初夏(vo&g)、其原誠元(ds)、芹田珠奈(B)
<ゲスト>末原康志(g)

[問]http://www.tosei-showa-music.ac.jp/event/20161206-00000282.html

ERIC CLAPTON J.J.ケイルをゲストに迎えたライブアルバム発売

Live in San Diego with Special Guest J.J.cale Review

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Photo by PAUL PARKS

2007年にサンディエゴで、J.J.ケイルをスペシャル・ゲストに迎えて行なわれた『ライヴ・イン・サンディエゴ with スペシャル・ゲスト J.J.ケイル』が発売。「アフター・ミッドナイト」に端を発して2013年に他界したJ.J.ケイルとの交流と、ドイル・ブラムホールU、デレク・トラックスとの3ギターが堪能出来るアルバムだ。

こちらがそのライブ映像。エリック、ケイル、ドイル、デレクの4人で演奏しているのは「エニウェイ・ザ・ウィンド・ブロウズ」。


こちらはJ.J.ケイル作曲、1970年の1stソロに収録されたクラプトンのソロ初シングル「アフター・ミッドナイト」。



『ライヴ・イン・サンディエゴ with スペシャル・ゲスト J.J.ケイル』は、そのタイトルが示すとおり、米国西海岸最南端の大都市でJ.J.ケイルを特別ゲストに迎えて行なわれたコンサートを、曲順などそのままの形で記録したものだ。収録はドイル・ブラムホールU、デレク・トラックスとのトリプルギター編成で話題を集めたワールドツアー終盤の2007年3月15日。このときクラプトンは61歳。細かくいえば、あと半月で62歳。ケイルは68歳だった。

『ライヴ・イン・サンディエゴ』の最大のポイントは、その2人が並んでギターを弾き、歌ったライブを堪能できるということだ。しかもそれだけではなく、エリック/ドイル/デレクのトリプルギター編成で臨んだ2006〜07年ワールドツアーの終盤、バンドがもっともいい状態にあったときのライブを収めたものでもある。

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ライヴ・イン・サン・ディエゴ with スペシャル・ゲスト・J.J.ケイル ワーナーミュージック・ジャパン  発売中 WPCR-17526〜27 2CD 2,900円(税抜)

2017年1月号(12/2発売)に記事掲載

ストロークスのギタリスト、ニック・ヴァレンシが新バンド、CRXを始動!

相変わらず作品を出せばその素晴らしさでロックファンを吹っ飛ばし、ライブをやればスタジアムを燃え上がらせるザ・ストロークス。だが、ここ数年間はバンドとしての大きな動きがなく、メンバーそれぞれのソロ活動が目立っている。そんな中、今までソロ活動を頑なに拒んでいたギタリストのニック・ヴァレンシがついに新バンド、CRXを結成。ソロプロジェクトに乗り出した。
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Photo by MAGDALENA WOSINSKA

L to R:Ralph Alexander(ds), Darian Zahedi(g), Nick Valensi(g), Jon Safley(b), Richie James Follin(key)

そのデビュー作『ニュー・スキン』が実にいい。ギターについては改めて述べるまでもないが、あまり歌がいいので「どこでボーカリストを見つけてきたんだろう」と思ってしまったほど。曲もストロークスを思わせるものもあれば、彼の少年時代のアイドル、ガンズ・アンド・ローゼズを思わせるものも、ガラリ変わって往年のパワーポップ的なものもあって実にバラエティ豊か。ソングライターとしての実力にも侮れないものがある。そしてプロデュースがクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムときたら、悪いもののわけがない。音楽友だち──リッチー・ジェイムス・フォーリン(key)、ジョン・セイフリー(b)、ダリアン・ザヘディ(g)、ラルフ・アレキサンダー(ds)──を集めたCRXですでに全米をツアー中。ストロークスのシーンへの復帰はすぐにはなさそうなので、CRXの来日への期待がいやが上にも高まってしまう。

こちらがリードトラック「ウェイズ・トゥ・フェイク・イット」のPV。ストロークスを彷彿させるキャッチーな仕上がり。


そしてアルバムの根幹を成すロック全開の「ブロークン・ボーンズ」。聞き応え十分!


「最近のロックミュージックやギター指向の音楽の情況を見ると、あまりに何も起こっていないし、多くのものが粗悪な出来だと思う。だから、僕はこの死にかけた芸術形態を少しでも生き長らえらせたことを誇りに思っているって言ってもいいんじゃないかな(笑)。ギタリストとして、ロックバンドとしてね。だって、もうロックなんて全然存在してないみたいじゃないか。生き残っているロックファンはきっと気に入ってくれるはずだよ」

「ステージに上がって人々の前でライブ演奏するっていうのが、僕が新しいプロジェクトをスタートさせたかった主な理由だからすごくハッピーだ。ついにここに至って、みんなのためにプレイしているなんてね。僕たちはすごくいいバンドだと思うし、一緒にすごく楽しんでいる。バンに乗ってアメリカ中をツアーするなんて、まるで1999年に戻ったみたいだ。今はほんとに楽しい。とにかくずっとやりたかったことだから、最高の気分さ。日本にも行きたいね」

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シー・アール・エックス ニュー・スキン ソニーミュージック SICP-5077 1CD 11月2日 2,200円(税抜)

2017年1月号にニック・ヴァレンシのインタビュー掲載

The 25th YAMAHA JAZZ FESTIVAL REPORT

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 浜松市が推進する「音楽のまちづくり」事業として1992年にスタートしたハママツ・ジャズ・ウィークが今年25周年を迎えた。同時に、その一イベントであるヤマハジャズフェスティバルも25回目を数え、記念すべき節目にふさわしい豪華な出演陣が揃った。

 今回は3部構成で、沖仁 con 渡辺香津美、寺井尚子クインテットとゲストのウィリアムス浩子、ニューヨークのビッグバンドであるヴァンガード・ジャズ・オーケストラが出演。ここではパート1に登場したギターデュオのコンサートを中心にレポートしよう。

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沖仁

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渡辺香津美

 フラメンコとジャズという異色の組み合わせだが、両者に共通するのはジャンルを超えた柔軟な姿勢と言えるだろう。両者は2011年から共演の機会を重ねて、昨年は2枚組のライブアルバムをリリースしている。まずは牧歌的ながらも展開の多い沖のオリジナル曲からスタート。続くスーパー・ギター・トリオの「地中海の舞踏〜広い河」では、情熱的なナンバーにふさわしい、速いパッセージによる圧巻のギタープレイを展開。その息の呑むような演奏に大きな喝采が送られた。一転して叙情を湛えたイギリス民謡の「スカボロー・フェア」では、渡辺による空気感のあるトーンでのプレイが冴える。後半はクラシックの名曲「ボレロ」で始まり、沖はエレガット、渡辺は曲中にアコースティックギターからPRSに持ち替え、両者とも立奏へとスタイルを変える。続く渡辺のオリジナル曲では、エレクトリック・ギターとも対等に渡り合うガットギターの音圧や迫力に改めて圧倒された。最後のチック・コリアの「スペイン」では、息の合ったユニゾン、渡辺による王道のジャズギター・ソロ、ボディタップを交えたダイナミズムのある沖のバッキングが会場を盛り上げ、会場の拍手と共にエンディングへとなだれ込んだ。狂熱と呼ぶにふさわしい濃密なギタープレイを堪能できた1時間だった。

 続くパート2は、初のセルフプロデュース・アルバムのレコーディング・メンバーを率いての寺井尚子クインテットのステージ。
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 寺井のヴァイオリンと昨年からクインテットに参加した佐山雅弘のピアノをはじめ、実力派の金子健(b)と松岡“matzz”高廣(per)、小学生の頃にハママツ・ジャズ・ウィークへの出演経験のある荒山諒(dr)、そしてジャズ・シーン注目のシンガーであるウィリアムス浩子をゲストに迎えて、華麗かつ情熱的なステージで魅了した。

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 最後にパート3に出演したのは、今年結成50周年を迎えたビッグバンドで、ニューヨークの名門ジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で毎週月曜に出演しているヴァンガード・ジャズ・オーケストラ。サド・ジョーンズ/メル・ルイス・オーケストラより続く50年の歴史にふさわしい、総勢16名による貫禄と迫力ある演奏を繰り広げた。同オーケストラは前日に公開ビッグバンド・クリニックも行なっている。

 個性豊かなミュージシャンにより、多彩なジャズの魅力を堪能できた、25年目の節目にふさわしいフェスティバルだった。

(写真提供:ヤマハ株式会社)

11月2日(水)発売のPlayer12月号は[Alexandros]の表紙巻頭特集!

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Player12月号では11月9日(水)に通算6枚目のオリジナル・アルバム『EXIST!』をリリースする[Alexandros]の表紙巻頭特集を展開! メンバー全員に行なったソロインタビューとアルバム・レコーディングでも使用された機材を含む愛器たちを全16ページで徹底レポート。楽曲制作、レコーディング・エピソード、プレイアプローチ、サウンドメイクのこだわり、切り開かれた新境地などなど、各々の視点から語る傑作完成までの過程に迫ります。表紙はもちろん、見開きで大きく掲載する集合ショットやそれぞれのソロショットも圧巻のカッコ良さに仕上がりました! 

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読者プレゼントとして直筆サイン入りチェキを2名様に。初めてPlayerを手にする方も、じっくりと特集をご堪能の上、記事の感想を一言添えていただき、「Player」プレゼント/レターズ受付を参照の上、是非ともご応募を!

DESERT TRIP レポート掲載!

The Empire Polo Club on October 7-9 in Indio, California

世界のベテラン・アーティストが一同に会したフェスティバル、デザート・トリップをレポート! 2016年10月7、8、9日、カリフォルニア州インディオ、エンパイア・ポロ・クラブで毎夜10万人の観客を動員した、ロック史上最もエポックメイキングなフェスティバル「デザート・トリップ」が開催。ボブ・ディランとザ・ローリング・ストーンズ。ニール・ヤングとポール・マッカートニー。そしてザ・フーとロジャー・ウォーターズ。伝説の今を生きるビッグアーティストが野外大ステージで感動の一言に尽きるパフォーマンスを次々に披露、夢のようだった。8つに分かれたセクション(12ブロック)で観客は歌い、叫び、涙しながら年齢を忘れさせるロックなグルーヴに酔いしれた。ロサンゼルスから250キロの砂漠で、10代から80代に近い幅広い層の人々が手を取り合いながら堪能したデザート・トリップ・レポートを16.12月号に掲載!

■10/7 1st BOB DYLAN
初日のトップを飾ったのがボブ・ディラン。近年、来日公演も行なっているが、残念ながらギターは持たずピアノやスタンドボーカルというスタイルはこの日も同様だった。映像は『追憶のハイウェイ61』(65年)収録の「廃墟の街」で、チャーリー・セクストンも健在。


■10/7 2nd THE ROLLING STONES
続いて登場したのがザ・ローリング・ストーンズ。言わずもがな現役感たっぷりだが、この日の特別メニューとしてザ・ビートルズの「カム・トゥゲザー」を演奏。しかしてバンドアレンジはストーンズのまま、というのがらしくてイイ!


■10/8 1st NEIL YOUNG
今やマイペースで勢力的に活動しているニール・ヤング。アコースティックギターやピアノの弾き語りも魅力だが、この日は『ザ・モンサント・イヤーズ』(15年)で共演したバンド、プロミス・オブ・ザ・リアルも交えて「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を演奏。


■10/8 2nd PAUL McCARTNEY
近年のワールドツアーと同様の体勢でイベントに参加したポール・マッカートニー。中盤ではニール・ヤングが参加して「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を共演。


で、ライブの定番でもある007の主題歌「リブ・アンド・レット・ダイ」。ポールのライブは特効が凄すぎ!


■10/9 1st THE WHO
3日目の最初はザ・フー。こちらも近年コンスタントに活動しており、永遠のブリティッシュロックの魅力を放っている。70年代の代表曲のひとつ、『フーズ・ネクスト』(71年)収録の「ババ・オライリー」でアゲアゲ!


■10/9 2nd ROGER WATERS
そして最終日のトリがロジャー・ウォーターズ。ピンク・フロイド各時代の楽曲を演奏したが、やっぱりなのが『アニマルズ』(77年)収録の「ピッグス(三種類のタイプ)」。今回“ピッグ”に比喩されてしまったのはドナルド・トランプ…



2016年12月号(11/2発売)にレポート掲載

NoisyCell 2ndミニアルバム『Colors』ロング・インタビュー

 NoisyCellの2ndミニアルバム『Colors』が、10月19日にバップからリリースされた!
 今年8月、Kiara(b)とTatsuya(ds)を迎え新体制となった彼らの新作は、核となるラウドロックのエモーショナルさを持ちながら、より多くのリスナーにアピールできる、キャッチーでスケール感の大きい楽曲が並ぶ。プロデュースは、前作『Sources』と同じくPay money To my pain(以下P.T.P)のPABLO。バンドのキーマンであるRyo(g)とRyosuke(vo&g)と共に、曲作りの段階から密にアイデアを練り上げ、より一層曲の奥行きと世界観が深みを増している。ダイナミックな展開が印象に残る「Will」、ハードコアで攻撃的な要素を押し出した「Mirror」など、どの曲も非常に聴きどころが多いが、やはりハイライトはリード曲「Lilly」だろう。初の試みとなる日本詞を導入した「Lilly」は、ラウドでドラマティックな展開がありながら、Jロックの“王道”とも言える日本詞の強いメロディがあり、今後彼らの代表曲の1曲になるのは間違いない。新作についてRyoとRyosukeが語ってくれた!

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伝わりやすさ、わかりやすさ、キャッチーさを磨き込んだアルバム

 今年8月からKiaraさんとTatsuyaさんが加わり新体制となりました。彼らは、バンドにどんな要素を持ち込んでいますか?
Ryo:関係が以前よりもフラットになったというか、全員が全員に意見しやすい環境になったので。バンドを少しでも良くするためにアイデアを沢山くれるし、ライブやリハの時も一体感が増しています。ドラムのTatsuyaはストイックで体育会系なとこがあるので、一番年下なのを物ともせず食らいついてきます。俺とRyosukeは本当にシャイで内向的だったので(笑)、その辺もリードしてもらっていますね。ベースのKiaraはキャラクターがとにかく底抜けに明るいので、場の空気を和ませてくれます。そんなキャラだけど、周りへの気配りはしっかり出来る。初めてバンド体制になったことで、より一層一つの目標に向かって全員が動いている実感が湧き、モチベーションが上がっていますね。
 『Colors』は、NoisyCellらしいエモーショナルでキャッチーな要素をさらに磨き込んだ内容だなと。曲作りを開始したのはいつ頃?
Ryo:曲作りは、前作『Sources』のツアー・ファイナルが終わってから少しずつ始めました。なので、昨年の12月からです。以前から作っていたデモも少しありつつ、全体ミーティングでテーマの話し合いをして、それを踏まえて作っていった曲が大半です。
 サウンドとしては、生のバンドサウンドの力強さがより加わった印象を受けます。NoisyCellは以前から非常に音楽性が幅広いバンドでしたが、今回はカラフルでありながらグッと要素を絞り込んでいるなと。
Ryo:全体ミーティングの時にテーマを決めたんですが、その時のキーワードが”伝わりやすさ、わかりやすさ、キャッチーさ”といったようなものでした。前作『Sources』ではラウド方面に向かって突き進んだのですが、今作はそうでなく、邦ロックを聴いているような層に対しても間口を広げ、前作、前々作と掘り下げてもらいたい想いもあります。そういう意味で、スクリームを全面に出したモダンなラウド、みたいな楽曲は作らずにNoisyCellのらしさを出していこうと考え、Ryosukeの歌声を活かした楽曲になるよう、メロディが今まで以上にキャッチーになるように意識しました。楽曲の進行や各パートの重ね方もライブ感のある進行になるよう意識しました。 
 今回も前作と同じくプロデューサーにPABLOさんが参加しています。PABLOさんは曲やアレンジ、演奏、アルバムのコンセプトなどどんな役割を果たしましたか?
Ryo:今回は今まで以上にPABLOさんと一体となって作り上げたという印象があります。テーマを掲げた際、じゃあ一体どういうものを作っていけばテーマに沿っているのか?と探り探りな部分もあったのですが、そうやって迷っている時に「そのテーマを満たせるデモはこれのサビのメロ。」などと、具体的に教えて下さったし、その結果方向性を固めていく事が出来ました。前作では、レコーディングでギターを重ねる本数がすごく多く、様々なギターのフレーズを鳴らして、その音数で音の壁を作るようなイメージでアレンジをしていったのですが、PABLOさんから「ギター2本でも足りるようなアレンジをして、シンプルにしてやってみて!」というアドバイスがあり、足し算的にアレンジするのではなく引き算的にアレンジするよう心がけるようになりました。そうしていくことにより、本当に楽曲が欲しがっているフレーズが見えてくるようになったし、単純に各パートが引き立つようになったのが印象的でした。
Ryosuke:PABLOさんとのやり取りで一番印象的だったのは、日本詞を作っている時でしたね。初めての日本詞という事でメンバーはもちろん、PABLOさんもしっかり納得させるものに仕上げる事が目標でした。初めに着手したのがLilyだったんですが、最初出来上がったものを見せた時に「これじゃ泣けない。もっと俺を泣かせてよ」って言われて…それから5回くらい書き直して、ようやく「良いね!」と言って貰えました。書きながら一番意識していたのは、「詞の意味が一発で聴いた人に入ってくる事が大事なんだ」という、PABLOさんからのアドバイスでした。一聴して言葉の意味がスッと入ってくるような言葉選びだったり流れだったり。僕の中で、日本語詞にトライする上で指標となる、大切なアドバイスのひとつになっています。
 メロディ・センスや大胆な展開など、非常に曲のクオリティが高いですが、曲作りに関しては苦労しましたか?
Ryo:アレンジ面では、PABLOさんが“バンドメンバーの一人”といっても過言でないくらい一緒になって作り上げたので、PABLOさんのアイデア面やセンスに救われている部分も大きいです。曲作りは、最初はテーマの具体的な方向性を掴めず苦労しましたが、それがわかってからは楽しみながら作れました。曲構成で一番悩んだのはLilyで、ドラマティックなリード曲に作り上げるために、PABLOさんと10回くらい作り直したと思います。
 前回、歌詞はRyosukeさんRyoさん共同で書いていましたが、今回はRyosukeさんが手がけていますね。注目すべきは歌詞に日本詞が入っていること。よりRyosukeさん独自のメッセージ性が磨きこまれているなと。
Ryosuke:元々邦楽を聴いてきた人間だし、NoisyCellを始めた頃から日本語で歌いたいって気持ちはずっとありました。日本語の歌を歌っているアーティストを見て、やっぱり良いと思うんですよ。音に乗っかる言葉、その意味がライブで一回聴いただけで伝わってくる…伝える事が出来るっていう。ライブハウスで、ラジオの前で、パソコンやスマホの液晶越しで、僕らの音楽を聴いてもらえるチャンスは沢山あれど、何度も聴いて貰えるチャンスは最初の一回きり。だから、もっと彼らの心を掴みたい! 『Colors』のテーマを話し合って、分かりやすさとキャッチーさにフォーカスしようとなった時、NoisyCellが日本語を歌うなら今しかないと思いました。
 レコーディングを開始したのはいつ?
Ryo:レコーディングを開始したのは4月中旬です。時間が無い中でのレコーディングだったので、そこから短期間で一気に仕上げました。ちなみに、新メンバーはプリプロやレコーディング中に探していて、まだ出会えていなかったので、今作はサポートの方々にドラム、ベースをお願いし、新メンバーは次作から参加となっています。レコーディングは、ドラム・サポートにPABLOさんの紹介でスタジオ・ミュージシャンの城戸紘志さん、ベースサ・ポートにAtsushiさん(Ender,ex GUN DOG)を迎え、作業を進めました。拘った点は、やはり歌やギターの本数を大幅に減らしたところ。各パートがそれにより引き立ち、全ての楽器が何を演奏しているのかより聴こえるようになった。ボーカルに至っては、録り終えたコーラスをミックス段階でだいぶ減らした部分もあります。曲によっては、8割くらい減らしました。ミックス段階でも、テーマに沿って前作以上にきらびやかなサウンドを目指したので、打ち込み系の音の広がり方も以前より壮大になったと思います。
Ryosuke:今回のレコーディングでは、歌のニュアンス、ブレスの位置、強弱、ハモリなど、今まで何となく歌っていた細かい部分を事前に詰めて挑みました。特にブレスの位置は前よりも意識しました。そうすると、段々“歌も呼吸するのと一緒で吸って吐いての繰り返しなんだ”と思えてきて…吸う位置が決まると、自ずと吐く位置と吐き方が決まってくる。どれだけ吐くのかで、どれだけ吸えば良いかもわかる。そういう呼吸のリズムをドラムのリズムに合わせていくと、歌い方のリズムというか、そういうのが計算式みたいに導き出されていくんです。全曲通して呼吸のリズム感を大切に歌いました。

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自分達が持つグレーなカラーから少しだけはみ出すことができた

 タイトルのColorsにはどういう意味が?
Ryosuke:切掛けは、Ryoと2人で「俺達の曲は色めいていない」という話を、これまでずっとしていた事でした。どの曲もグレースケールの中にいて、黒の濃淡で表現できるような気がずっとしていた。理由は、その時はまだ明確ではありませんでしたが、今になって思えば、その曲達は2人だけで作った世界観だったからだと思います。別の人間の存在が介入し得なかったから…でも今の僕らは、今日までライブを重ねてきたし、気が付くと他のメンバーの顔もしっかり見られるようになった。そういう外側からのエネルギーみたいなものを取り入れるようになり、「Lily」のような曲も生まれてきて、今回はグレースケールの枠を少しだけはみ出せた気がした。楽曲としてもバンドとしても新しい一歩を、という意味も込め、このタイトルに決めました。
 「Lily」は、新たな幕開けを飾るにふさわしいスケール感の大きなナンバーだなと。従来のらしさを残しながら、“君と居たあの日と夢で踊る〜”のBメロからの開けた世界観が秀逸ですが、この曲はどのようにして誕生したのでしょうか?
Ryo:最も今作のテーマに沿って作る事を意識した曲です。制作ミーティング時、PABLOさんに「リード曲としてNoisyCellのいいとこ取りをして、一聴でNoisyCellがどんなバンドか伝わるような曲が欲しい」と言われて、その条件を満たすべく、自分の考えるNoisyCellの良いところを考えながらも、テーマに沿うようにわかりやすさや、伝わりやすさも意識して作りました。他の楽曲が出来ていく中で徐々にテーマに対するアプローチが明確になってきて、そんな中でテーマを満たすサビが生まれました。このBメロが頭の中に浮かんで来てデモを作った時は“正直やりすぎかな?”とも思いました。邦ロック的なアプローチ過ぎるかなとも思ったけど、今作を作るにあたってNoisyCellも殻を破る時でもあると考えていたし、メンバーやPABLOさんの反応が良かったので、そこからどんどん形が出来上がりました。メロディやBメロにあるようなBUMP OF CHICKENやASIAN KUNG-FU GENERATIONみたいな邦ロック的要素、演奏や音作りにはP.T.Pやフーバスタンク、ニッケルバックなどのラウド的な要素をどっしり構え、それらをミックスすることでNoisyCellらしい楽曲に繋がったなと。
Ryosuke:この歌詞は今年の初め頃に書き始めたもの。その頃は、大切な人の死が重なった時期でした。バンドとしてもメンバーが脱退したし、僕個人としての喪失感を強く感じていた時期でした。そういう感情が、Lilyの持つ切なさみたいなものにリンクして、自然と別れを歌った曲になりました。Lily=百合は葬儀の時に手向けの花に手渡されたもので、その時期に何度も目にしていた花でした。百合ってすごく綺麗だけど、近くでよく見るとグロテスクで怖いんですよ。そういう部分が凄く人間っぽいなって思ったし、別れを直視したがらない自分とも重なりました。
 エレクトロニカなイントロからダイナミックに展開する「Will」は、Ryoさんの色彩豊かなギターとRyosukeさんのエモーショナルな歌が強く響きます。
Ryo:この曲は、もともとデビュー前にボカロ曲として発表しようと作成した曲で、シンセがリードを取るような今以上にキラキラしている曲でした。デモ聴きの際、この曲も今作のテーマに沿っていると考えて、アレンジして世にだそうという事になったので、シンセがリードを取った部分をギターに変更して、バンドサウンドをもっと押し出すアレンジに変えました。それでもシンセが特徴的なアクセントになっているので、アルバムとしても良いバランスの曲になったと思います。ボカロ曲として出そうとしていた事もあり、日本詞が乗ることを前提にメロディを作っていたので、最初こそ英語で仮歌を取ってもらったけど、最終的に日本詞の方が馴染み良く、Ryosukeも「Lily」の次に書いた日本詞だったので、「Lily」よりもスムーズに作詞出来たようです。
 ドラムのスリリングなコンビネーションから始まる「Mirror」は、ハードコアな部分がありながらも非常にキャッチーだなと。
Ryo:「Mirror」は、前作『Sources』以降で最初に出来たデモで、当時はその制作やツアーのストレスを一気に発散するために、好き放題やってやろうと作った曲でした。なので、僕のルーツであるHawaiian6やNorthern19などのメロコア要素に、スラッシュビートやAメロのコーラスワークに詰め込んだり、冒頭のイントロ導入部をハードコアバンドのいかにもモッシュがこれから起こりそうな感じの構成にしたりと、自分のやりたい放題やっています。サビのメロディもNoisyCellらしくないような明るいやつにしてやろうと、思い切ってキャッチーなフレーズを入れました。ワンコーラスのデモが完成した段階では“NoisyCellではやらないだろうな〜”と思っていたくらいの曲ですね(笑)。デモ聴きの時、PABLOさんから「次のテーマに沿うキャッチーなメロディはこの曲だよ!」という意見を頂き、そこで初めてテーマに対する方向性がはっきりしたので、ある意味今作で一番キーとなった曲だと思います。
 オルガンのバッキングが印象的な「Black Smoke」は、このバンドらしい疾走感を宿した曲だなと。
Ryo:元々は、サビのメロも掛け合いで「オイ!オイ!」という声が入っていて、ツインペダルをドコドコ踏んだ、重たいラウド目の曲だったんですが、ノリを重視してグルーヴを押し出していくようアレンジした結果、ファンキーな曲になりました。それを後押しするように、最初は一部だけにアクセントとして入っていたオルガンを全面にフィーチャーし、今作の攻め曲に仕上げています。こちらの曲はオルガン・プレイヤーで、PABLOさんの知り合いでもあり、堂珍さんのサポートもしている堀向彦輝さんを迎え、元々デモで入れていたオルガンの打ち込みを、よりダイナミックにアレンジして弾いてもらいました。曲全体のビート感は、R&Bやファンクなどを意識して作り、そこにラウドなフレーズを混ぜ込んでごちゃ混ぜした感を出しています。最後のラウドなヘドバンパートも、そういう遊び心から来ていて、身近なバンドが誰もやってない曲に作り上げられたと思います。
 NoisyCellらしいテイストを感じるのが「do {Parade;}」だなと。このインダストリアルでモノクロなオープニングから、光が射す感じはやはり“独自なもの”だと思います。この曲はどのように生まれたのでしょう?
Ryo:最後に出来た曲で、アルバムのスパイスとして作り上げた曲でもあります。テーマに沿ってアルバムを作っていった中で、NoisyCellのインスト曲や前作のバラード「Last Theater」など、重い楽曲は一旦作らず楽曲制作をしていきました。テーマに沿う曲がミニアルバムに十分到達したということで、逆にテーマを一切取っ払った重苦しい曲も作ろうという流れです。楽曲自体は、様々な古い機械のサンプリング音をレイヤーしてスチームパンクなイメージを作り、Aメロはデモではメロディがあったけど、Ryosukeのアイデアで無しにしました。その結果、サビが始まった時に初めて歌声がガツッと入り込んでくるようになりました。“荒廃した大地に乾いた風が吹いている”イメージで作ったので、前作のインスト曲「Insomnia」からの「Last Theater」の流れで感じる印象に近いと思います。それが1曲にまとまって、更に無機質になった感じです。ライブでもアクセントとして映える曲になりそうです。
Ryosuke:デモを聴いた時も、まさに荒廃した大地に乾いた風が吹いていました。色んな事を連想させられる、実は物凄いエネルギーを持っている曲です。歌詞は結果的に2行しかありませんが、その2行になるまでに、今回の楽曲の中で一番長い歌詞を書いた曲でもあります。暗い荒野を沢山の人々がひとつの方向に向かって歩いていて。最初はみんな大きな荷物を背負っているけど、歩いていく内にその重さに耐えられなくなって、少しずつ捨てていってしまう…ひとつ捨てていく度に体が機械になっていって、最後のひとつを捨てきったときに人間ではなくなってしまう…というようなストーリーをイメージして書きました。生きる為にやがて希望を捨ててしまう。希望の逆という意味で、前作「Birth」の歌詞が逆再生で入っています。タイトルの記号は、プログラミング言語で「〜し続けろ」という命令で、do{parade;}は行進し続けろという意味の造語です。
 ギターのアルペジオと優しいボーカルが絡む「Halo of the Moment」は、ラストを飾るにふさわしいナンバーですね。グルーヴもとても心地良いです。
Ryo:「Mirror」に次いで2曲めに出来た曲です。テーマの条件を満たし、かつ前回までの「Innocence」や「Last Theater」といったバラードを超えるべく制作した曲でもあります。バラードを作るにあたり、今まで作った曲と被らない事も考えていて、とにかく色々条件を自分に突きつけた状態でバラードのイメージをしていったのですが、一番に大サビの明るいメロが浮かんできた時“今NoisyCellのバラードはこういう明るい曲だ!”と確信した。そこから、更にアレンジを進め、メインの大サビを最後の最後に繰り返して終わらせるという、壮大な一曲に仕上げました。今回、初となるストリングスのアレンジも取り入れたんですが、これは今まで避けてきたことでもあったんです。バンドアレンジにあたりストリングスを入れると、バンドが変に壮大になり過ぎる気がしたし、身の丈にあっていないし違和感につながることを危惧していたんです。でも、今作までバンドとして経験を積んできた結果、ストリングスが相応しい曲に作り上げる事が出来たと思います。
Ryosuke:歌もかなり試行錯誤しました。サビまでの盛り上がりに合わせて歌を作っていき、特にドラムが入ってくるまでの部分は、歌のグルーヴ感が重要になってくる。だから、ディテールはかなり詰めてレコーディングに挑みました。最初にこの曲のデモを聴いた時、1本の映画を観終わった後のような感動があった。同時に滅亡する世界を見つめる2人の後姿が浮かんで来たんです。そういう光景を客観的に見て、語りのような歌詞にしたいと思い書き上げました。

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P.T.Pはルーツと言えるくらいに根底で多大な影響を受けている

 お2人とPABLOさんを結ぶ共通項の中にP.T.Pがあります。個人的な印象ですが、「Lilly」のドラマティックなイントロとコーラスはPTPの「Sweetest vengeance」、「Halo of the Moment」のギターとボーカルが絡むAメロと中盤の盛り上がりはPTPの「Home」を連想させます。これらの曲にそういった要素が宿っているなと。
Ryo:ドラマティックというワードは結構好きで、そういう意味でもP.T.Pは“ルーツ”と言えるくらい根底の方で多大な影響を受けています。「Lily」で言えば、イントロでいきなりドラムをドコドコ叩く思い切りの良さだったり、同じくイントロでいきなりシンガロングを入れてしまったり…そういう事を思い切ってやってもカッコよければ良いと思えるようになったのも、PABLOさんの持つ編曲センスやアイデア・センスから発想を得ているからだと思います。例としてですが「Sweetest vengeance」も、リード曲の話になった時に話にあがっていました。「美味しいとこを集めた曲はPTPでいうと『Sweetest vengeance』だよ」って。様々なビートが混在する曲という点でも「Lily」と共通点があるような気がします。”「Halo of the Moment」が「Home」を連想させるのは意識していなかったのでなるほどと思ったけど、多分自分のバラードに対するアプローチの仕方が、PABLOさん譲りだからかもしれません。ラウドとバラードのバランスは仲間のバンドは苦労している印象ですが、僕らはそういう面ではバラードに対するアプローチを色んな方向で出来ています。それもPABLOさんやP.T.Pのバラード楽曲が持つ表現の豊かさをルーツとして発想を得ているからだと思います。
 今回のレコーディングで使ったギター、アンプ、エフェクターについて教えて下さい。
Ryo:ギターはメインのバッキングやリードはPRSのSC245です。レコーディング後に購入したオレンジ色のシングルカットモデルで2004年製です。それと、PABLOさん所有の同じモデルの青を2本を使いました。オレンジ色のPRSのサウンドがミドル寄りのふくよかなサウンドなのに対し、青いPRSはエッジの立ったサウンドなので、それらを場面ごとに使い分けて録りました。クリーンやクランチは、パートによってPABLOさん所有の73年製ストラトキャスターも使いました。「Black Smoke」のカッティングギターも全編そのストラトです。 アンプは、リアンプと宅録でのアンプシミュレーターサウンドを使い分けていて、バッキングではほぼマーシャルJVM410Hのコミューン・モディファイモデルを使用しました。その他、オールドのマーシャルもクリーン、クランチサウンドで使用しましたね。リアンプはフラクタルAxe-Fx llをかけ録りして、別チャンネルに録った素の音をリアンプしました。その際、フラクタルを通った音もリードギターやソロのサウンドにマッチしていればそのまま使用しました。その他、デモ作りの段階でライン6 POD X3で作った特徴的な音など、リアンプでは作り込めないサウンドはそのままPODの音で演奏し直したりもしました。コンパクト・エフェクターはPTS808や、PABLOさんがウィードと共同開発したストーナーズFXをブースターとして使用し、WMDのガイガーカウンターという、デジタルな歪を生み出す変態エフェクターも「do{Parade;}」などで使用しました。ディレイやリバーブは、ほぼDAWのプラグインです。
 お2人が思うアルバムの聴きどころとは?
Ryo:聴きどころは全曲随所に盛り込んでいますが、特に「Mirror」は演奏者としても、聴く人にとっても常に聴きどころしかないような詰め込んだ曲になっていますね。冒頭のギターのハモり、イントロのリードギターのせわしなさもそうだし、ギターソロもライトハンド奏法でとにかく熱い演奏をしてギターも聴きどころ満載です。コーラスも掛け合いが随所にあり、Aメロのパンク的な最小限のコーラスワークもNoisyCellでは初めてのアプローチなので、全てのパートでライブで演奏した時に会場全員で盛り上がれる曲だなと。「Lily」のシンガロングや「Black Smoke」最後のヘビーなパートもライブでみんなで盛り上がれるような作りにしてあるので、アルバムのアクセントとして、またライブを想像してワクワクしながら聴いてほしいです!
Ryosuke:ボーカルとしては“歌の呼吸感”を感じてほしい。前作よりもその点で良い歌が歌えたなあと実感して胃ます。あとは「Lily」のコーラスパート。いつか、武道館でお客さん全員の声で埋め尽くすのが夢です。その日に備えて予習しておいてほしいですね。
 本作はNoisyCellにとって今後どんな位置付けのアルバムになるのでしょうか?
Ryo:テーマに沿って作った結果、NoisyCellの作品で一番キャッチーなアルバムになったなと。邦ロックの層にもアプローチできるし、でもラウドな要素は捨てきらずに、今までのファンにも満足できるミニアルバムを目指しました。それに加えて、今まで以上にライブを想定して作った事もあり、これからのライブでの主戦力となる楽曲ばかり。第2弾となる次作では、今回以上に挑戦や振り切った部分を盛り込みつつ、従来のNoisyCellの良さを活かした作品を作れればと思っています。その時には新メンバー2人のカラーも加わり、より鮮やかなNoisyCellの楽曲が生まれると確信しています。
Ryosuke:NoisyCell新章の序章となるアルバムになったと思います。今年はメンバー・チェンジもあり、バンドとして激動の一年だったけど、このアルバムでNoisyCellとしてのしっかり進化した姿を提示できなければ、待ってくれている人も納得できないだろうと思っていた…今回の『Colors』はそういうアルバムに出来たと自負しています。今回は、新メンバー2人が音源に参加していないので、その点で未だ完全ではないとも思っていて…なので序章なんです。今回は2部作ですから、次にリリースするのがColorsの“完結編”になります。新メンバーの色も加えた、最高のオチを作りたいと思っているので、『Colors』を聴きながら楽しみに待っていて下さい!

Interview by TAKAHIRO HOSOE

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ノイジーセル
カラーズ
バップ CD VPCC-81878
10月19日発売 1,667円


2nd Mini Album “Colors” Release Party One-man Live
11月5日(土) 渋谷GARRET [問]http://www.noisycell.com